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S:64 差し出された希望


 男の剣はきらめいて、周りがみるみる明るくなっていく。


「少年、よく見ておけ! ――少年もいつか、誰かを助けられるように!」


 言葉を強めると、きらめきも一層強くなる。


 少年は言われた通り、その様をしっかりと記憶に刻み込む。いつもより目を見開いて。

 男の剣がまっすぐターゲットをとらえて、刹那。


 男が誘拐犯の背後に移動していた。


 それは、常人には目に見えない速さで、何をしたのか分からなかった。

 だが、少年はその分からない部分さえもしっかり見て、自分の中で自分なりの答えを出す。どれだけ現実味がなくとも――そもそも少年には常識も現実味も知らないのだから。

 貫かれた巨漢がその場に倒れ込んだ後、男はこちらによってきて、少年の頭をなでた。


「ちゃんと見てくれたか?」


 その問いに少年は頷く。


「そうか。ありがとな。さっきのはな、『シューティングホープ』っていうんだ」


「……ゅ、うぷ……?」


 少年は繰り返そうとするが、そののどからはしっかりとした声は出ない。

 その様子を見た男は少し瞳を曇らせて、しかしその曇りはすぐに晴れて。


「よし少年。俺との約束だ」


 少年は持ち上げられる。先ほどまで上から見られていたのが、同じ目線に立つ。少年は不思議と嫌な気分はしなかった。これまでの大人たちとは違う、限りなく自分に近い感覚がする。


「今、少年がどんな立場に置かれてるのか、俺は分からない。でも――俺がお前も――ここで亡くなった皆も助けてやるからよ、絶対くたばるんじゃねえぞ! 生きてまた会える日まで! 今日見た希望の光を忘れるなよ」


 その男の目は、悲しくも強い、希望に満ちた光をともして、少年に訴えかける。


「今は言葉の意味が分からなくていい。――少年を見てると、不思議とまた会えそうな、そんな気がするんだ」


 男が本当にそう思っているのだとすぐに分かった。その目を見てしまえば。

 その時少年は――男の瞳の中ではるか未来を見た気がした。


 この騒ぎは、地元の少年少女大量虐殺事件として、天使類史上最悪の事件として皆に広まっていった。そして事件の通称は、どこからともなく現れた――のちに『英雄』と称される金髪の男の技名と、その事件への哀悼を込めて――『希望事件』と称されるようになった。

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