S:62 光を見る
――。
目を開いても、暗闇が続く空間で。
少年は――目を覚ました。
目を覚まして、一番に刺激された五感は、聴覚だった。
聞こえてきたのは子供のすすり泣く声、何かにおびえたように震えた声、喘ぐ声、大声で喚く声。
そしてそれを一蹴する、ひと際大きく低い怒声。
「うるせえぞ!」
その声に思わず少年も身をすくめる。
「――あ……」
久しぶりに出た声は何を訴えるわけでもなく、意味のない音だ。
周りを見てみるが、そこにはおおよそ何もないように見える。
否、暗いのだ。
暗すぎて、目前に広がる異様な光景を把握できないでいる。
そう思うと、今目の前に広がっている光景に思考が持っていかれる。
聞こえただけの声の持ち主の、むごたらしいシルエットがそこにあるかのように想像できてしまう。
その想像に乗っかるように嗅覚が正常に作動してきた。
鼻に伝うアンモニア臭や腐敗臭が、少年の頭をさらに混乱させる。正常な判断を鈍らせる。
「あ……あ……」
震えるからだが止まらない。ただ一つ幸運だったのが、声が出なかったこと。普通とは違うその一点が、少年を生存させる唯一の手段となりえた。
なぜそんなことが言えるのか。それは、少年の耳に届いた音と、肌に触れた生暖かい液体のせいだ。
少年は聞いた。それは鋭く、台所で聞いた音に近い。食肉を包丁で切るような音。日常で聞いている音だからこそ――少年の息は荒くなる。
今の状況で発せられる音は――それしかないじゃないか。
想像に追い打ちするように、地面に金属が当たる音が聞こえる。
音が鳴るたびに、子供の声が少なくなっていく。そしてその音はだんだんと近くに聞こえてきて。
「お前で最後だ……」
それを聞いた瞬間――少年は光を見た。
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