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S:50 藍の瞳

「ごほっ、ごほっ」


 部屋に何かが突撃してきた瞬間、後ろに飛んで正解だった。

 さっきまで窓があった壁は、空の暗がりと町の明かりを半分半分に移していて、その景色の真ん中に――仰々しいほどに大きく広げられた黒と白の翼と、周りに漂っている魔法陣が印象的な赤髪の男が微笑を浮かべて立っていた。

鋭い目つきで、今にも襲い掛かろうとしているみたいだ。


「お前は、誰だ……」


 恐る恐る立ち尽くす男に話しかけると、その男は鋭い目つきを変えないまま、口を三日月のようにゆがめて言った。


「――今年の新入生、面白いじゃあねえか……魂の質がちげえ――お前、どこの出身だ?」


 三白眼がこちらを見据えたまま、質問の答えを待っている。


「――失礼かもしれないが、僕は記憶をどこかに置いてきたみたいで、その質問に答えられません」


 こちらが素性を明かせぬ旨と、敵意がないことを態度と体勢で示した。

 空の言葉を聞いて、男は眉間にしわを寄せ、途端に右目が回転しだし、止まった頃にはその目は――


 ――深い深い、藍の色をしていた。

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