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S:5 ヒーロー

短え!!!!

 ――え?

 勇者とは。

 空は困惑する。仕方ないことだろうが。

 異世界転移して、そして、転生して……。

 その時点で、訳が分からない。

 しかも勇者って。

 なぜそんなに大それた設定になっているのだろうかと。空は、困惑した。


「勇者?」


「え?」


「え?」


 ――――――――。


「「え?」」


 二人の謎のやり取りが、続く。


「え、っと……人違いではないんですか……?」


 自然と敬語になってしまう。

 だってしようがないだろう!? 目の前に天使がいたらさあ、お前!? タメ語で話せるかアア!?

 無理だろう? まず、空は引きこもりなのだから。

 久しぶりに人の顔を見た奴が『天使』だったらどうするよ!? 比喩表現でも何でもない、本当に、しっかりと翼の生えた天使だったら!

 え? イルマ? ああ、小さい子は基本大丈夫だから。


「はあ……またですか……?」


「はい?」


「また記憶をなくしてしまったのですか?」


 ――――。

 何やってんだよ勇者ってやつはァァ!!


「ささ、勇者。早く帰りますよ」


「ちょっ、待ってくれよ!」


「え?」


 そんな満面の笑みで見られても……。


「俺、お前知らねえんだけど……」


「え……?」


 泣きそうな顔をするな! 良心が傷つく!

 ――とりあえず、現状把握のために。


「ここどこ?」


 現在地点の確認をした。




 事情聴取、と言ったら聞こえは悪いが、いくつか分かったことがあった。

 まずここは、空の予測通り、スカイジャンジーなるところらしい。

 予測通り、とはいったものの、手も出ないのが現状で。


「で……あれはなんなん……?」


 呆れから来た関西弁を発しながら空は。

 ――噴水らしきものの近くで、いわゆる『ヒーロー気取り』がいた。


「もう大丈夫だ! 弱い者いじめをするやつは許さない!」


 誰かがそんなことを言って――空の耳に届いた。


「……」


 顔をしかめる。


「え? 勇者……――」


 空が、正義のヒーローとやらに近付いていく。

 そして――拳を振りかざす。

 鈍い音がして、ヒーローは倒れる。


「な、何するんだ! 俺は今、正義を全う――」


「うるせえんだよ……」


 冷たい声と――冷ややかな眼で、ヒーローを見る空。


「弱い者いじめ? 今てめえがしてんじゃねえか。自分より弱い奴をお前が今いじめている」


「はあ!? ――そんなこと言ったらあんただって――」


「俺は弱い者いじめなんかしていない。お前は俺より強いはずだ。俺は――ヒーロー気取りがむかつくっつってんだよ……」


 小さく、強く、空なりの正論を叩きつける。


「てめえの価値観で――人、傷つけてんのに、いい加減気付けよ……」


「――――ッ!」


「確かにこいつは悪いことをしたかもしれん。だからって――弱い者いじめする必要はないんじゃないか……? 武力が、暴力がすべてだと思うな」


 相手の使った言葉を使い、その顔に笑いを乗せる。


「まず、正義の味方って――誰の味方なんだよ? 教えてくれよ」


「――――ッ! 覚えとけよ!」


 そう言って、ヒーローもどきは逃げていった。


「あれじゃあまるで――」


 ヒーローよりかは悪役だ……。

 そう零して、待っていた天使の前に戻った。

 そう言えば、名前も聞いていなかったので、その内名前でも聞こうか。今聞こうとは思わないけれど。

 今はただ、その場を後にするヒーローもどきの背中を眺めていた。

 そしてそれが、空の中の異世界の『正義』の標準となった。


「マジで――くそだな」


 偽善しかないと、空は吐き捨てた。

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