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S:48 二度目は逃げない


「本当に君は何も見ていないんだね?」


「はい」


 空は今、スロスに引き留められ、いくつかの質問を受けている。


「もしかしたら――ユーシャ。君は、いや……」


「どうしたんですか?」


 思考を巡らせているスロスが何を考えているのか、空は分からなかった。


「学園の書庫にあったはずだ。確か――」


「あの、先生?」


「ユーシャ」


「はい」


 一通り思考の旅を終えたスロスが、ユーシャをまっすぐ見据える。


「君のそれは――『型なし』と言われるものだろう」


「――は?」


 ――型なし。

 流派の普及されていない、または特定の人物しか使えないような流派。その技には一貫性はあれど、どれもが、『神の御業』といわれるほどの威力を持つ。

 そして、すべての流派は型なしから派生したものだとも伝えられている。

 その型なし、歴代に未だ片手で数えられるほどしかいないといわれる、どの鉱石よりも、どの文献よりも珍しい、もはや国宝級の人材。


「それが『型なし』だ」


「つまりは、統一されていない、個人にしか使えない流派、ってことですか?」


「そうだ。――そして、私の弟も、そうだった」


「――」


 どこまで共通点があるのだろうか。ソラスは。


「私がその目でその技を見ることはかなわなかったが、一人で一つの軍隊を退けるほどだったそうだ」


 そんな力が、今、この体にあるなんて信じられない。


「まあ、信じられないと思っても仕方ない。――私もそうだったが、流派の才能を開花するには、『試練』と呼ばれるものがあるんだ。試練は日常のあらゆる場面に転がっている、乗り越えなければならない、克服しなければならないこと。だが」


 そこで言葉を途切れさせ、スロスは。


「君なら成し遂げられる」


 空を優しく、優しく。


「私が愛した者に、一番近い男だから」


 包み込んだ。

 そしてスロスはそのまま続ける。


「試練はつらいだろう。逃げ出したくなるだろう。でも信じている」


 言葉を受け空は決意する。

 きっとこの言葉がなければくじけていたのだろう、前の世界のように逃げ出していただろう。だからこそ、強く生まれた今なら誓える。


「――絶対成し遂げます」


 絶対に逃げないと。

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