S:45 剣の流派
どうしてこう、タイミングがいいのだろう。
「どうしたのユーシャ? こんなところで一人呆けて」
「あー……」
タイミングがいいね、ほんとに。
「レインこそ、どうしてここにいるんだ?」
「あのねぇ……質問を質問で返さないでくれる?」
質問を返さないでいたら、正論を返された。――空の考え方に影響されてきたのか、それとも感覚がさえてきたのか、はたまたどちらでもないのか。どちらでもなさそうだ。
しかし、先ほど質問をした空だが、その答えは聞くまでもなく、その姿が答えを示していた。
腰に携えられた木剣。それだけでおおよそ何をしにここに来たのかは分かる。
そしておそらく、レインは自分が思う以上の収穫をするだろうということも。
「もう少し待ってろ」
「はぁ? 何で――」
疑問に思うだろう。今の場では空が確実に言葉足らずであるからだ。
「待たせたな――ぁ?」
タイミングの良いときにスロスが戻ってきて、レインへの説明の手間が省けた。レインにとってはうれしいことこの上ない事象だろう。
「あっ……っと、君は、レインじゃないか。自主練かい? 素晴らしい心がけじゃないか」
「そうですそうですそうなんです! おほめに預かり光栄です!」
――何だろうなぁ。少し悲しくなる光景だ。スロスはスロスでレインの勢いに押され負けて薄ら笑いを浮かべている。
「そうだな……レインもいるとは知らなかった。――そうだな、あれにしようかな」
「ちょ……あれって何ですか……?」
「あれはあれだ。――当初の予定よりもっと楽しいものだ」
「?」
「ちょっと! 何二人で楽しそうに話してんのよ!」
レインの理不尽な怒りを受けながら、レインに袖を引っ張られ、顔を寄せられる。空の目の前にはかわいらしい顔と、そしていい匂いが流れてきた。――心臓に悪いです。
「何話してたのよ?」
胸倉を軽く握られて、さらに顔を寄せてくる。赤みがかった髪が匂いをさらに運ぶ。空は質問に答えずに、本当に顔面偏差値高いな、という全く関係のないことを考えていた。
「なんか言いなさいよー……」
だんだんとジト目になっていくレインを一度見つめて、次は奥を見つめてやった。これで何とかなるだろう。
「――! アンタ……!」
視線の意味に気づいたレインが恨み言を小さく漏らす。聞こえているのは空だけだろう。
「何をしているんだ君たちは……」
スロスは空とレインのやり取りを見て呆れている。
「で、先生。何するんすか?」
イレギュラーによってずれにずれた話題を空が強引に引き戻す。
「そうだったな。――今日の、そうだな……特別授業は」
場を盛り上げるために、この場をそう評したスロスが言葉を続けた。
「君たちに『剣の流派』を流し込む」
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