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S:44 同情

「おほん」


「――」


「ごほん」


「――」


 ――いつまで、このやり取りを続けるのだろうか。

 あの後、十分ぐらいして、スロスはようやく落ち着きを取り戻したが、英雄であろうものが一生徒である空の前でギャン泣きしたのだ。そりゃあ、咳払いの千回もしたくなる。

 ――しかし、スロスののどが壊れそうだ。本当に苦しそうな音がしてきた。


「ところで――先生の弟って、どんな人だったんですか?」


 無理やり話題を変えて、リハビリがてらスロスに話させることにした。もとより、これが気になってスロスの元へ来たというのに、ずいぶん遠回りして知った感がある。


「そうだな。――ソラスは、君にそっくりだ。見た目も、中身も」


 今のところだけどな、といたずらっぽく笑うスロス。

 不覚にもドキッとしてしまう。

 あれなんだよなぁ……普通にかわいいんだよなぁ……。


「確かソラスは、魔物戦争、でしたっけ? で、魔物側についたとか」


「そうだな。当時は何故だ何故だと聞くばかりだったが――その意味もようやく分かったかもしれん。ソラスはきっと――『共存』したかったのだろう」


 共存、か。

 確かにそういうことなら、魔物側についたのも合点がいく話だ。

 要は、魔物側とのつながりを以て、何かをきっかけにそのつながりをより太くしたかった。その道を誤り、戦争に発展してしまった、といったところだろう。なんとも報われない。

 と、空が思ったところで何も変わらない。


「共存……――どの世でも変わらないな」


 かつての空がそうだったように、きっとソラスも違う形で、積み上げたものが崩れたのだろう。空には、痛みが分かるから、少し同情してしまう。

 ――しかも関係者には肉親が混じっているのだ。空が体験したものよりももっと壮絶だっただろう。


「ユーシャ……」


 スロスもそれ以上先は言わなかった。心情を察してくれたのか、それともただの感嘆なのかは、わからない。


「暗い話もここまでにしようかっ! 体を動かそう、ユーシャ!」


 そういったスロスは足早に剣を取りに行く。


「俺も――」


「ユーシャは待っていてくれ、私が取ってくるさ」


「でも、先生に取りに行かせるなんて――」


「頼む――任せてくれないかな……?」


 ――勢いがなくなっていく様は見ていて、聞いていて察するものがあった。

 教師として、もしくは一個人として、こんな顔は他人に見せられないと、そういうことだろう。

 なら空も、同情するほかない。


「いってらっしゃい」


「――」


 空は頷くスロスの背中を眺めながら、次の事柄である剣術に思いをはせていた。

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