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S:28 どきどきわくわく

 場が騒然とする。それもそのはず、馬鹿にしていた意見がまさか正解だったからだ。

 そこら中からぽつぽつと舌打ちが聞こえる。スロスはもちろん、分かっているのだろう。

 ――だがそれが心地いい。

 一言だけ言えるなら――ざまぁ。


「お前たち――どういうことだ?」


 スロスが目を閉じそれだけを言う。それだけで場が静まった。

 お説教は続く。


「お前たちの今しているそれは、私の意見に対して、私の受け取り方に対して不満があるということか?」


 空気が鋭くなる。――が、空には関係ない。どちらかというとスロス側のポジションだし、ダメージは一切ない。

 ため息一つつき、スロスは突然話し出す。


「私だって、この意見を初めて聞いた時、おかしいと、歪んでいると思ったさ。君たちと同じように。決して君たちがおかしいわけではない。――だが、同時に的を射ている、とも思った。――皆に聞こう。君たちは英雄を知っているだろう。ではその英雄が剣を握った理由は?」


 スロスが一つの問いを生徒に提示する。

 空以外の皆が下を向いて考える。


「――気付いたか? その理由の中に、『誰かのため』以外の理由を持っていた英雄は誰だ? 心当たりのある者は手をあげよ」


 催促された質問に対して、手を挙げた者は、誰もいなかった。


「どうだ? 出来すぎていると思わないか? ――私はそう思った、が、自分自身で気付くことができなかった。誰かのためが戦士の生きる理由というのなら、もしかすると、と考えるのが普通だ。だったら何だ? ――先程の発言のように極端なものではないが、少しは他のためだけでなく自分のためにも力を行使しているだろう、実際私はそうだった。力を自分のために使っている。いや。だれしも使うものなんだ。他を守るには、まず自分から守らなければならないのだから」


 少し説教にも聞こえる話を聞いて、皆の中の考え方が変わったのか、それとも認識が変わったのか、空に対する視線の意味が変わったように思えた。

 ――もしかしたら、スロスは空を除け者にさせないためにこのような話をしたのかもしれないと内心感謝する。


「よし――暗い話もこれまでだ。剣を持つ理由が何にしろ、ここまで来る糧となったのは確かだろう。お待ちかねだ。――武器を持て」


 スロスの後ろにはいつのまにかたくさんの武器が並べられていた。

 大小の剣、弓や手裏剣のようなものまでそれはもうたくさん。並べられていたといえばあまりに乱雑に扱われているが―― 訂正しようか――不規則にばらまかれていた。


「好きなものを手に取って並べ。こちらが収集するまで手にとっていいぞ」


 そう言われたので空も、もちろんクラスのみんなも数々の武器の方へ向かっていく。

 近づくにつれて、緊張とわくわくが心に侵食してくる。それに浸りながら、目の前に刺さっている剣を手に取る。

 刀身は光に当たり、空にとって特別なものにも見える。セイルとのシェアルームに置いたままのあのとてつもなく重い剣も異質な、特別な存在感を放っているが、普通というのも案外悪いものではない。――とりあえず、今の体で、昔の精神状態では、だ。

 目の前の剣の柄を手に取り、そのまま引き抜く。ジャリインという音と反して剣はとても軽く抜けてしまった。これが今の体の力なのだろう。


「――」


 ――どうやら、ほかの武器よりもこれがよさそうだ。この武器は主人公が使ってなんぼの剣な気がする。と思ってしまったらひかれてしまうかもと空は思ってしまったが、心の中なら許されるだろうと妥協した。


「これにするか……」


 誰にも聞こえないぐらいの声で呟いて、剣をもってその場を後にした。

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