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S:25 特別

「七勢派……? 魔物戦争……? プレム学園……?」


「七勢派と魔物戦争はまだしも、自分の入った学園の名前ぐらい覚えておいたらどうだ……?」


 あまりの無知さに二人から呆れられる始末だ。


「まあ、君にも何かしらの用事があるのだろう。――そういえば、君の名前はなんていうんだ?」


「へ? 俺?」


「今この場で私が名前を知らない人物は君しかいないだろう」


「そういやそうか。俺の名前はー……ユーシャだ」


「何の間だったんだ……?」


 まるで自分の名前を知らないのかとでも言いたげだが、まさかその通りとは思ないだろう。


「まあまあ、そんなことどうでもいいじゃあないですか~。――それよりセイル、今目の前に英雄がいるんだ、――――」


「それは――どうだろうなぁ……」


 一つの提案をしてみるが、どうやら予想と違った。セイルなら喜んで実行してくれることだと思ったのだが。


「すんませーん、俺た――」


「僕達に稽古をつけてください!!」


 ――言えるんかい。


「――! な、何だ。まあ、いいけど……」


 どうして言われてこんなにうねうねしているんだこの人は。


「どうしたんですか……?」


「いやなんだ――今までそんなことを言われたことがなかったのでな。私としたことが少々照れてしまった」


 その裏付けとして、確かに顔が少し赤くなっている。

 ――英雄というのは、稽古をつけてくれと言われないのだろうか。てっきり、たくさんの人たちから、そういった類の話をされるものかと思っていたのだが。中々不思議なものである。畏れ多いのだろうか。


「で、何を教えてほしい? 今日の授業の内容は教えられないがな」


「それじゃあ――剣の型を教えてください」


「――。ほぉ。じゃあ一つ教えてやろう。剣の型、いわゆる『流派』と呼ばれるものは、この世界に幾つも存在するものだというのはもちろん知っているな?」


 ――知らないけど、知ってたことにしておこう。


「「はい」」


「それは知ってるんだな……」


「待遇がひどい……」


 知ってても知っていないくても、どっちみちこの待遇だったのだろう。なんてひどい。


「まあいいか――そのものたちを研究しているとな、一つのことに気付いたのだ。今から二つの技を見せてあげよう。その後に質問を投げかけるから、準備しておくように」


 そう言いながら、空達と距離をとり、腰に携えた剣を引き抜く。

 音を立てて剣を抜き、構えるさまは、その英雄と言われた確かな風格が存在していた。


「ソラ――僕たちは今、とても特別なんだ……」


 空の名前を素で呼んでしまうほど、セイルにとっては奇跡的で、その目の前の戦士が素晴らしいという証明になっている。


「では――行くぞッ!」


 剣が下から軌跡を描く。

 剣先はかろうじて見えた。きっと相手がいたなら、きっとこの一撃で倒れてしまうのだろう。

 剣はしまわれ、二人とも魅入ってしまっていた。


「――さて、次の技だ」


 そうとだけ言って、また抜刀をして、構える。


「ちゃんと違いを探せよ!」


「「――! はい!」」


 ほとんど反射のような返事をした二人はやはり、その剣から目が離せないでいた。

 木剣が木剣でなく見える。本当の剣のように見える。

 今度もまた、下からの切り上げ――のように見えるのだが、違和感を感じる。

 少しだけ、ほんの少しだけ、形が違う……?

 そしてこれまたあっという間に終わってしまった。


「どうだ、違いが分かったか?」


 考えさせる暇さえ与えずに質問を投げかけてくる。


「セイル……分かる?」


 セイルに問いかけると、首をかしげて眉をひそめる。

 その様子を見てだろう、ヒントを与えてくれた。


「二人とも、形が違うのは分かっただろう? ――どこが違った?」


「どこがって――あ! そうだ、切り上げ方が違った!」


「そうだな」


 セイルは楽しそうだが、空は真剣に考察していた。

 切り上げる角度が違う、それはもちろん『用途が違う』と言うことになる。

 一回目の技、切り上げる角度はそれほど高くなく、体の傾きに沿って剣が流れていっていた。それに比べて二回目の技は切り上げる角度が高く、そして一回目の技と大きく違う部分、体の横を通すように剣は流れていった。

 ――これがもし対人戦で、剣が攻撃手段だけでないというのなら、答えは導き出せた。あとはそれが正しいかどうか。


「俺、分かった……」


「ユーシャ、ほんと!?」


「言ってみろ」


「――一つ目の技、それはたぶんだけど、攻撃系。剣の切り上げる角度、そしてなにより対人だとして、あの剣の軌道は真っ当だった。――そして二つ目の技、それは防御系。対人、相手に向かう剣の軌道にしてはやや近接すぎる気がする。そして、体の横を通していることから、相手が特定の技を――例えるならば切り下げる技を打ち込んできた時の防御手段としての技――?」


「――すごいじゃないか。期待できそうだ」


 何に、というのを聞くのは野暮だと思う――それに、大方実習講義で、だろう。


「さて、時間はまだまだあるぞ。――どうしようか」


「そうですね――」


 そうして剣技を一足先に習って、少しばかりの優越感に浸りながら、時間は過ぎていった。

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