S:21 秘密
「うーん……」
案外分かるものかと思っていたら、やはり空の知らない言語を理解するのは難しいと感じている空だが、今の悩みはまた別にある。いや、あまり大きな違いはないかもしれないが、やはり空には内容が理解できないもの、それもそのままの意味で。
「わっかんねぇ」
「どうしたの、ソラ?」
隣から首を突っ込んできたセイルを見ずにそのままセイルに話しかける。
「いや、おかしいって思われるかもしれんが、読めない……」
「そう? 僕が教えてあげるよ?」
「いや――まあいいや。それじゃあさ、ここってなんて書いてある?」
「えっと……『1+1=』だね」
「だよなぁ……」
――どうやらこの世界の数学はレベルが低いようだ。
いや、もしかしたら自身の年齢がそれ相応なのかもしれないと思って、一応質問してみる。
「そういやセイルって何歳なの?」
「何歳……? 何歳って、20歳?」
「にじゅう!?」
それでこれなのかと、空は驚く。
今の日本が、いや、もしも全世界がそれで通していたら、戦争なんてなかったかもしれない。
驚きと呆れを感じながら小学一年生で習う、いわゆる『算数』の初歩的問題を解く。もちろんその問題の答えは『2』になるわけだが。
「え、ソラ――早くない?」
「え?」
何が。おかしなことをしてしまったか。
セイルからの思っていなかったセリフに空は手を止めてしまう。
「何が?」
「問題を解くのが」
――え。マジか。
空は瞬時に理解した。この種族の勉学のレベルが。
それと同時に、この種族の頭のレベルを。
そして、あちらの世界ではありえなかった、様々な可能性を。
今の、齢20歳にしてはセイルやレイン――関わってきた人、いや、天使たちは計算能力ではあちらには劣っているものの、あちらの基準で言うならば、小学一年生が小難しい言葉を使って、何より自立していることになる。
それは、天使たちがまだまだ卵だということ、加えて、あちらでは体験しえなかったものをたくさんしてきている――はずだということ。
勉学のレベルは低いが、それだって『無駄な要素を省いている』と見ることだってできるのだから。
いったい誰がそんな教育方針にしたのか、とても気になるが、今はどうでもいいだろう。おいおい歴史の授業で習うだろうから。
そのためにも、文字を早く習得しないといけない。そう思い、空は目の前の問題に集中する。
「――――」
無言で解いていく。セイルはこの状況を、異常だと思うのだろうか。
「ソラ――どうしてそんなに早いの……?」
「な、何でだろうなー」
「もしかして――得意教科?」
「あ、ああ! そうなんだよ」
「――分かった。ソラ――」
「まだなんかあんの――」
「君の名前と、関係あったり、する?」




