S:20 雨の晴れる日
祝(?)二十話目!
「結局、そこから覆ることもなく、それぞれが別の道へと進んでいった。――並列少年が聞いた話だ。直列少年はさらに力を持った少年に支配されたらしい。ざまあみろだが、並列少年はそんなこと微塵も思わなかった。むしろ直列少年がその地位に落ちたことで怒りすら感じていた。何故かって? 無責任にその地位に落ちたからだ。痛めつけるだけ痛めつけて、それなのに、仕返しの一つもできず……!」
下を向き、更に拳を固める。
嫌な音を立てる。
「――この辺でいいか……? 俺、疲れちまった」
「あ、ありがとう……」
地を見ていた自身の顔を上げ、目の前の彼女へ向き直る。
彼女は何故か――泣きそうな顔をしていた。
「おい……そんな顔すんな。俺が悪いみたいに――」
「ご、ごめん……辛かっただろうね、その子……なんか、今度は嘘には思えなかったから、胸が痛くなった」
そう言って彼女はうるんでいた目を少し拭って、こちらに笑いかけた。
「話してくれてありがと。――横つなぎの関係か……考えたこともなかったけど、そうする方法もあるのか」
「そうだ。弱みなんて握るだけ無駄だ。――例えば」
空はそう言い、彼女との距離を詰め、彼女のネクタイを乱雑につかむ。
「明日、お前の素性を同じ組の奴らに話してもいいんだぜ……?」
「――? それが何になるっての?」
――本当に分かっていないらしい。
「最後まで聞いてくれた恩もあるしな、教えてやるよ。――まず一つ。あのクラスの奴らは見る限りだが、お前が二重人格なのを知らない。いや、語弊があるな。『皆が、お前がそういう性格』ということを知らないと思う。あくまで皆が自分だけに向けられた人格だと思っているだろう。俺が俺だけにその性格を向けているって感じだ」
だが現実は違う。
掴んだネクタイは離さないまま続ける。
「だがそれが皆に知れ渡れば……?」
「で、でもッ! もう知ってるかもしれないじゃない!?」
「だとしたら、それを火種に、燃える。弱みを握られてない俺がな」
「!?」
「弱みを握られていない。そしてお前は今この状況こそが『弱み』なわけだ」
「ッ!」
顔がこわばるのがとてもよくわかる。
「脅しはこれぐらいにしておこう――どうだ。自分がその立場に立ったらそう感じるんだ」
自分の立場なんて簡単に揺らぐ。だったら簡単に落ちないようにしておいた方がいいに決まっている。
ようやくネクタイを離し、そのまま振り返る。
「お前がどうするかは知らないが――期待してるぜ」
嘘のない言葉。彼女がどんな顔をしているかは分からない。
――後ろから声がする。
「あなたが期待した女の名前! レイン! 覚えておきなさい!」
「期待してるぜ――レイン」
聞こえていたかどうかは分からない。だが、空の心には、不思議な感覚が残っていた。
それは、女の子の名前を初めてしっかり呼んだからか、――それとも過去の自分を、遠くても受け入れられたからか。誰も知る由はなかった。




