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S:18 本当の話

「待たせたな」


「実際待ってたのはあんただけどね」


 授業も無事終わり、放課後になって、空と女の子は、昼休みと同じ場所で対峙している。

 どうやら実技は明日あるらしく、よかったのやらよくなかったのやら複雑な気持ちだ。

 だが、そんな半端な気持ちでこれからの話をしてはいけないことを空は知っているので、無理やりにでも気持ちを変える。クラスの『ユーシャ』ではない、自分の世界をねたみ、憎んだ『空』へと。

 これから話す内容もあちらの世界に準じた話だ。なら、あちらの気持ちにした方がいいに決まっている。日常的に憎んだあの世界への鬱憤も込めて、空は彼女に向き直る。

 空自身、どんな顔をしていたかは分からない。とても恐ろしかったかもしれないし、とても笑っていたかもしれない。

 今から話すのは、戦争の話でもなく、実体験でもなく、ただの空の偏見だけで創られた物語。


「まず、細かいことは聞くな。答え方に困る」


「わ、分かったわ」


「おいおい返事に覇気がないぞ? 強気なお前はどこに言ったんだ?」


「あんた本当に――『ユーシャ』……?」


 空の様子が変わったことを察してなのか、彼女がそう聞いてくる。だが、空は答えない。


「言ったぞ、聞くなって。黙って聞いてりゃいいんだよ」


 そして空は語る。




 ――一通り話し終わった後。

 彼女は一言言った。


「ほんとに、そんなことあるの……?」


「あ?」


「い、いや、何か……終わった後にこんなこと言うのあんまりよくないんだろうけど。現実感がないっていうか――それってほんとの話……?」


 ――この女は、まったく。

 純粋が故か、何故この話が嘘だと分かったのだろうか。


「もしかして、私のことを心配してんの……?」


「だったら何だ」


 本当のことはあまり知らないし、知っていたならブラックすぎるとも思うだろう。それを知ったところで、彼女の心が方向を変えるかも分からないし、変えたとしても、彼女一人でどうにかできる問題じゃない、そうしてもやもやされても困るからだ。空にだって罪悪感の一つや二つある。


「心配なんていらない。もしももやもやしたって、勝手にあんたの話を聞いた私の責任なんだから。あんたが罪悪感感じる方が私にとっては気味悪いんだけど」


「――ずいぶんと挑戦的じゃないか」


「女は愛嬌、だなんて思ってないんだからっ」


 ――ここまで言われたら、こちらもそれ相応の対応をせねばならないな。


「いいだろう――してやんよ。本当の話を」

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