S:17 決意
なんという黒い学業を営んできたんだこの世界のもんたちは。
まるで独裁者を増やしたいと言っているようなものじゃないか。いや、もしかしたら、そういうことなのかもしれない。
あちらの世界の異常は、こちらの世界には関係ないのだから、何でも輸入できるというわけか、もともとこちらの世界側がそんなことを考えてしまったからか。
「それともあなたは習わなかったの? だとしたらおかしな話ね。この国でその言葉を知らないものは一人としていないはずよ、町の幼子でさえ知っている言葉なのに」
「なんだその地獄絵図」
「で? 知ってんの?」
ここで知らない、と言ってしまうことは楽だが、後が見え見えになっているので、簡単に知らないと言えない。
「か、仮に知っていたとしても、俺はその先を知っている」
「その先……」
しみこませるようにそう言った彼女は。
「教えなさいよ、その……先ってのを」
「いいのか? 後悔しても責任は負えない」
何故ならこの世界にその概念がないから、後悔していないから、その歴史がないから、今に至っている。
そして、その結論を知ったとして、彼女にそれが受け入れられるのだろうか。
「ええ……後悔――しないわ」
その目を見て、分かった。そしてその先も、あらかた予想できた。
彼女は――きっと受け入れられる、この話を受け入れて、応用できる力がある。
どの立場で言っているのかと思われるかもしれないが、見たら分かる。目に宿った光を見れば、誰だって分かる。その真っすぐさ、言葉、態度とは裏腹の純粋さ。
「分かった……じゃあ、また後で話すよ」
そうして空は、その場を去った。
彼女は未だ、空がいた場所を見つめていた。