S:14 朝食
朝が来た。そのことを、この全身の筋肉痛が教えてくれる。
結局あの後、睡眠時間を削ってまで、あの剣を動かした。動いたのはほんの数センチだったが。結果として二人は、筋肉痛というものを得た。つまり、筋肉。そう考えたら、いい方だと思いたい。
さて、思えば朝から学園、というのは何気に初めてだ。故に、何をどうすればいいか分からない。だから、セイルに先頭を任せて、空とセイルは、学園スケジュール初めの朝食のミッションをクリアすべく、大食堂へ向かう。
食堂に着くと、大きな扉が二つ開かれて、二人とその他大勢の周りにいる生徒を迎えている。
それを見て、空は自分のイレギュラーさに目を見張る。皆、セイルも同じように『白い翼』を背中から見せている。空のは、対照的な黒色で、しかも、片方にしか生えていないのだ。自分がイレギュラーとしか思えないだろう。
「大丈夫? ソ――ユーシャ?」
「覚えてくれてたのな……」
空たちが話すと、周りの視線が一層鋭くなる。それは、好奇の目なのか、侮辱の目なのか、それとも、他の気持ちで空を見ているのか、それにプラスされて、セイルのこともあるだろう、空の精神は、ヒビが入りそうになる。いつも通りだが、それでいいのか……?
どうやら食堂はバイキングのような仕組みのようで、空も初めはその仕組みに困惑したが、先日のことを思うと、なるほどと思わざるを得ない。
魔法で創れば、で済んでしまうから。
空とセイルは適当に自分の好きなものを適量とって、二席開いているところを探して、そこに座る。
見たことのあるような、ないような庶民的な料理が、給食のように、少しだけ綺麗に並んでいるトレイを見下ろす。トレイは金属でできているのか、それ単体でも重い。
「どうしたのユーシャ?」
「いや……流石にまだ慣れないなってな……」
少し重い、なんてうかつに言えないのがもどかしい。あっちとの比較対象があっても、こちらのものとの比較対象がないからだ。もし言って、内容がかすってしまったものならば、セイルに不信感を与えてしまう。――まだ全て話せていないのだ。セイルの中での空は、『優等生(?)』なのだろうから。まさか異世界、なんて言葉が通じるともそもそも思っていない。
空は目の前のスープに銀の匙を伸ばして、口へと運ぶ。初めての朝食は終始不思議な味がした。