S:100 ターニングポイント
祝!100話!!
チャイムが鳴りやむまで、しっかりとリアクションを待つ。
なり終わって、ちょうど二秒。
「ん、どういうこと?」
本当に分かっていない状態だ。無理はない。空自身も分からない、今の状況が。
「そのまま。俺の身体こそこの世界のものだけど――俺の魂には、この世界の血は流れていない」
「じゃあ、どういうこと? その言動も、行動も――全部違う世界で積み上げた理念ってこと?」
「そうだ。――俺の名前はユーシャじゃないし、俺は天使類でもない。元はただの人間だし、アモスにあげた手鏡も、俺の世界にはありふれたものだった。だから、アモスにあげたんだよ」
乙女のアイテムだから、と昨日の自分が言った言葉が頭をよぎった。
乙女のアイテムなのだ、こちらの世界ではそうではなくても。人生の大半をこことは違う世界で過ごしてきた空からすると、どうあがこうともそういう認識はぬぐえない。
ゆえに、この世界において自分ほどイレギュラーな存在はいないのだ。
そう思った矢先、このような少女に出会うのだから、神様は粋なことをしてくれる。
「じゃあ、教えてよ」
その後に続く言葉は、自分で考えろってことだろうか。
「――じゃあ、話を聞いてくれるか?」
「うん」
――そういえば、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
空が目覚めたベッドに腰を掛けながら思う。
何が原因で、空はアモスとの仲をよくしようと思ったのか。冷静に考えてみれば、特にこれといった思いは出てこない。
深く考えたい事柄ではあるが、今ではなかろう。
「俺の本当の名前は、空って言うんだ。俺はユーシャじゃない。うそをついていたんだよ」
「――。へえ」
その目には軽蔑が映るものだと思っていたが、関心、好奇心が目に浮かんでいたのが見て取れた。
「私はユーシャの方が好きだけどね」
「え」
おうおう、嘘だろ。
「――ダサくないか、ユーシャって」
「私昨日も言ったもん! ユーシャって名前いいねって」
「ええ……」
あれってお世辞じゃなかったのか。と思ったけれど、これほど世界に対して皮肉っているのだからお世辞も何もないかという結論に至った。
「分かったよ。もともと、この名前を知る人はこの世界にはいなかったんだから。好きな方で呼んでくれよ」
「じゃあ、ユーシャ。もっと話そうよ」
笑顔でそう言うアモスの髪が夕に当たって綺麗に透明になる。それに、少しだけ見とれていたのは、未来永劫、空さえも知らないかもしれないことになるのだった。
これからも頑張っていくのでよろしくお願いします!!