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私のプロローグ

 


 私は、電車に揺られ、大学に向かっていた。

 朝の通勤時間と被るので、とても混んでいる。

 まだ慣れられなくて、降りる頃にはヘトヘトだ。

 いつか、これが私の当たり前になるのだろう。

 鞄の中で、スマホが震える。

 確認すると、大学の友達からだった。

 そう、早速、友達ができたのだ。

 昔の私からは、想像もできなかった。

 私も、少しづつだけど、変わり始めた。

 まだ親友とは呼べないかもしれないが、時間は沢山ある。

 これからだ。


 手早く返信を済ませると、降りる一つ手前の駅についたところだった。

 人がいっぱい降りて、またいっぱい乗ってきた。

 その中に、私は髪の長い人を見つけ、自然と、目で追ってしまった。


 ハッとした私は、小さく(かぶり)を振ると、窓の外を眺める。

 景色が、どんどん後ろに流されていく……。




 駅から出ると、日差しが降り注ぐ。

 梅雨が明け、すっかり季節は夏。

 空は晴れ、雲ひとつない……は、言い過ぎだけど。

 私は立ち止まり、カラリとした夏の空気を、めいいっぱい吸い込んだ。

 こんな所で立ってると、何してんだ、みたいな目で見られるが、気にしない。

 ……でも、あんまり長くいると、本当に邪魔だし――学校にも遅れてしまうから――、私は歩きだす。

 今日は、どんな楽しいことが私を待っているだろうか。


 歩いていると、私より頭一個分低いくらいの女の子を見かけた。

 中学生くらいだろうか。友達らしき人と、楽しそうに喋っている。

 思わず、姿を追う。


 ハッとした私は、小さく(かぶり)を振ると、再び歩きだした。




 この通り、私は全然吹っ切れてない。

 未練タラタラだ。

 彼女に似た人を見つけると、目が追いかけてしまう。

 本当に、どうしようもないと、自分でも思う。

 目を閉じれば、彼女の姿がありありと浮かび上がるし、彼女の匂いもしてくるし、彼女の声も聞こえてくる。彼女の仕草も、忘れたことがない。


 でも、きっとこれでいい。

 これで、よかった。

 私は彼女を忘れない。

 彼女は、私の親友で、私の好きな人。

 私を、変えてくれた人。

 この事実は、変わらないし、変えたくない。




「なつ〜」

 大学に着くと、私を呼ぶ声が聞こえた。

 友達が、私に手を振っている。

 なつ、とは、この友達が付けてくれたあだ名だ。

 まだ聞きなれない。

 私は、手を振り返した。




 ふと、空を見上げると、遠くのほうに、大きな入道雲が見えた。

 なんだか、その形が、彼女に見えてきて……。

 私は、吹き出してしまった。

 いくらなんでも、それはない。

 雲が人に見えるって……。

 今日は一段と、彼女のことを、思い出す。

 突然笑いだした私を、友達は、不思議そうに見ていた。




 私は、また恋をするだろう。

 けれど、いつまでたっても、彼女は、私の特別だ。

 彼女だけが、特別だ。


 もちろん、それも、変わっていくだろう。

 でも、今はそう思う。

 そう、思ってる。




 友達と喋っていると、スマホが震えた。

 私は、メッセージに、返信をする。

「ニヤついてるけど……どうかしたの?」

 友達に、心配されてしまう。

「ううん……大丈夫」

「……そう……でさーあの教授がさー……」




 友達と喋りながら、思う。


 いつか、話せる日がくるかな。

 笑って、話せるかな……。


 その長い髪をキラキラと揺らす……。

 私の好きだった、君のことを。















 ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

 初めての連載、完結ということで、ああすればよかった、このほうがよかったと、思う所がいっぱいあります。

 まだまだですね。精進します。頑張ります。

 でも、何はともあれ、とてもいい経験になりました。これも、読者の皆さんのお陰です。

 ありがとうございます。

 

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