私の過去と君への想い
私には昔から、およそ友達と呼べる人が少なかった。
もちろん、皆無だった訳じゃない。
喋る人は、それなりにいた。
ただ、仲がいいか、と訊かれると、うん、とは言いにくい。
学校ではよく話したけど、放課後や休日に、一緒に街へ出かける、なんてことはなかった。
思えば、小学生の頃から、私はクラスで浮いていた。
勉強はできても、人付き合いは、昔から苦手だったから。
他人よりも高い背。
鋭い目つき。
嘘をつくのがヘタで、思ったことを、正直に言ってしまいがち。
それらが相まって、高圧的にとられてしまう。
……だから、どちらかというと、怖がられていたのかも。
中学生になっても、あまり変わらず。
あっという間に時が過ぎ、受験の季節がやってきた。
私には、勉強しか取り柄が無かった。だから、国立を受けた。
テストは、我ながら出来たほうだと思うけど……受験は、落ちてしまった。
もしかしたら、面接で落されたのかも?
まぁ、今となっては、知りようもない。
結局、滑り止めで受けた、偏差値そこそこの高校に入学した。
私には、夢がない。
だから、適当に進学して、適当に就職出来たらいいなぁ、ぐらいにしか、将来を考えていなかった。
実際に高校を卒業する時期になると、私は、なんて馬鹿なことを考えていたのか、と、当時の自分を殴りたくなる。
そうは思っていても、いきなり、やりたいことが見つかる訳もなく……。
私はとりあえず、大学で、そのあたりから探すことにした。
それがいいって……。
みーちゃん。
みーちゃんが、背中を押してくれたから。
みーちゃんにとっては、なんでもない会話だったかもしれない。
よくある会話の中の、何気ない言葉だったかも、しれない。
でも、私は、みーちゃんの言葉に、確かに救われた。
一年。
たった一年間だったけど、私達は、とても仲良くなれた。
短くも、長かった一年…………。
みーちゃんに出会って、私は変わった。世界が変わった。
みーちゃんは、こんな私を……私の全てを、受け入れてくれた。
みーちゃんには、なんでも話せた。どんな些細なことでも。
そうして、みーちゃんは笑ってくれた。
私が語り終えた時、もう、日は傾き始めていた。
「……そう。そんな風に思ってくれてたんだ……嬉しい」
「だから、みーちゃん。私は、みーちゃんのお陰で、大学で頑張ろうって、思えたんだよ」
「ううん、わたしこそ。さっきも言ったけど、わたしが、夢を追いたいって思えたのは、なっちゃんのお陰だから……」
みーちゃんが、優しく微笑む。
「話してくれてありがと、なっちゃん」
「――みーちゃん、あのね…………」
本当はまだ、話してないことがあるの……。
私は、その先を口にすることができずにいた……。
初めて、心から人を好きになったし、初めて人と、心から仲良くなれた。
人と過ごす時間が、愛しいと思った。忘れたくないと思った。
……なにより、壊したくないと。
みーちゃんは、私の初めての親友だ。
それと同時に、私の初めての想い人だ。
私の中の感情は、大きく膨れ上がってく。
二つの愛情が、ぶつかりあう。
相変わらず黙っている私を、みーちゃんも、黙って待っていてくれた。
「…………」
「…………」
私は、たまらなくなって、視線を落とした。
春は気づかなかったが、桜の木の下に、シロツメクサが敷き詰められていた。
私は屈んで、四葉のクローバーを探し始めた。
みーちゃんも、私が何をしてるか分かったのか、一緒にガサガサやり始めた。
すぐに見つけることができた私は、それを根元から摘み取り、立ち上がった。
クローバーを握りしめる。
どうか、私に幸運を……。
私は、数回深呼吸を繰り返した。
みーちゃんも立ち上がり、そんな私を不思議そうに見ていた。
「――みーちゃん、聴いてほしいことがあるの……」