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君の過去と私への想い

 


 わたしは昔から、比較的友達が多いほうだったと思う。

 多いと言っても、あくまで、わたしが思ってるだけかもしれない。

 私が友達だと思っても、相手はそうじゃなかったかも。

 わたしは、小学生の頃から、周りに溶け込むのだけは、上手かった。

 本当にそれだけ。

 人付き合いは上手かったけど、勉強はからっきし。

 みんなに合わせて、ヘラヘラと笑っていた。

 他人(ひと)よりも低い背。

 柔らかな瞳。

 そんな見た目をしていると、それだけで上手くいってしまった。




 中学生になっても、あまり変わらず。

 みんなに混じってワイワイやってたら、あっという間に三年生になった。

 わたしはいままで、自分の意思で、何かをやったことが、あった?

 ふと、そんなことを考えたわたしは、わたしの学力より上の高校を、受験してみることにした。

 本当に、気まぐれだった。

 それから、わたしは受験勉強に打ち込んだ。


 落ちるだろうな、と思っていたら、なんと受かってしまった。

 もしかしたら、授業についていけなくなるかもしれない……。

 でも、わたしは、もう少し、頑張ってみることにした。




 わたしには、夢がある。

 パン屋になることだ。

 でも、叶わないと思っていた。

 というより、幼い頃の、よくある戯言(ざれごと)だと思ってた。

 大きくなるにつれ、わたしは夢から覚めていった。

 わたしは、これからの学校生活で、また夢を見つけよう……とか、ぼんやり考えていた。

 そう考えても、いままで適当に生きてきたわたしに、簡単に見つけられる訳もなかった……。

 でも、今はちがう。

 わたしは、高校を卒業したら、パン屋で、住み込みのバイトをさせてもらう。

 普通じゃないかもしれない。失敗するかもしれない。

 それでも、わたしは挑戦したい。

 こんなふうに思えるのは……。

 なっちゃん。

 なっちゃんが、背中を押してくれたから。


 なっちゃんにとっては、なんでもない会話だったかもしれない。

 なんてことない日常の、何気ない言葉だったかもしれない。

 でも、わたしは、なっちゃんの言葉に、確かに救われた。




 一年。

 たった一年間で、わたし達は、とても仲良くなれた。

 短くも、長かった一年…………。

 なっちゃんに出会って、私は変われた。

 なっちゃんは、ありのままのわたしを、受け入れてくれた。

 なっちゃんとは、なんでも言い合えた。心から笑えた。本音で話せた。

 二人で、いつまでも笑ってた。


 初めて、心から友達だと思えた。

 友達と過ごす時間が、愛しいと思った。忘れたくないと思った。

 ……ずっと、仲良くしてたい。

 なっちゃんは、わたしの、かけがえのない、親友。




 なっちゃんを、初めて見たのは、高校の入学式の日だった。

 こんな綺麗な人がいるなんて……。

 全体的にスラリとした、モデルさんみたいな体型。

 短い髪や、まつ毛、眉。

 そして高い背。

 ……どこをとっても、綺麗だった。

 わたしとは、正反対。

 わたしの、理想のような人……。


 そんななっちゃんと、三年生になったとき、出会った。

 それに、同じクラスにもなれた。

 わたしは、なっちゃんと仲良くなれて、本当に嬉しかった。

 噂に聞いていた通りの所もあったし、そうじゃない所もあった。

 なっちゃんの、全てを知りたいと思ったし……。

 なっちゃんに、全てを話したいと思ったの……。













 そこまで語り終えたみーちゃんは、なんだか、スッキリしたような顔をしていた。

「なんだか恥ずかしくって、ずっと言えなかったけど……最後に、なっちゃんに話せてよかった……」

「…………」

「こんなわたしと、仲良くしてくれて、ありがとう」

「…………」

 私は、なにも言えなくなってしまった。

 みーちゃんに、そんな過去があったなんて……。

 そんな風に思ってたなんて……そんな風に、想っていたなんて……。

「でも、卒業しても、また会えるよ! お互い忙しくなるだろうけど、絶対、また会おうよ」

「……うん……絶対……」

「…………」

 みーちゃんとは、なんでも話してきたつもりだった。

 だけど、お互いの過去に踏み込んだ話は、したことがなかった。二人とも、気づかない内に、避けていたのかもしれない。

 ……みーちゃんが、話してくれたんだ。

 私も……。

「…………私の話も、よかったら聞いてくれる?」

「……うん。もちろん」

 みーちゃんは、私の目をじっと見つめてきた。

「……私は…………」



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