私は・・・・・・
「ブランディーヌ、お前との婚約を破棄する」
「なぜですの?」
「なぜだと? しらばっくれるな!」
第2王子と宰相の息子、そして騎士団長の息子がブランディーヌを取り囲む。
「何のことですか?」
「しらじらしい。そんなのあなたがセリーヌさんをいじめたからに決まっているでしょう」
「私はそんなことしていませんわ」
「証拠はあるんだよ」
「証拠ですか?」
「そうだ。これを見ろ!」
そういって王子は切り刻まれたセリーヌの教科書を掲げる。
「教科書をそんな風にする人がいるなんて信じられませんわ」
「お前がやったんだろう、ブランディーヌ」
「いえ、私じゃありませんわ」
「嘘をつくな!」
「その教科書を私が切り刻んだという証拠なんてありますの?」
「「「……」」」
「教科書の件はさておき、あなたは先週末の放課後に図書館付近の階段でセリーヌさんを突き落とそうとしたでしょう。これは立派な犯罪ですよ。これは教科書の件とは違って犯行を見ていた生徒がいるんです。言い逃れはできませんよ」
「そのことならば、私の責任ではありませんわ。セリーヌ様が私に向かって走ってきたんです。あの時は私も足をひねってしまいまして……」
ブランディーヌ様が可哀想だわ。
絶対、セリーヌ様が悪いわよね。と周囲がざわつく。
「もう他にはありませんの?」
「「「……」」」
「そこまでだ」
「兄上、なぜここに……」
「学園で騒ぎが起こっていると聞いて来てみれば、何をやっているんだ!」
「これは……」
「一人の女に惚れこみ、婚約者をないがしろにするなんて。そればかりか大衆の目の前で婚約破棄をするなんて王家のものとして恥ずかしくないのか!」
「それは……」
「お前らも将来国を背負うものがこんなことして許されると思うのか」
「「……」」
「詳しい話は城で聞く」
第2王子、宰相息子、騎士団長の息子は第1王子の言葉に反論できなかった。
「連れて行け」
「やめてください。彼らは私のことを思って行動してくれたのです」
「「「セリーヌ……」」」
「あなたは?」
「私は、セリーヌ=アイドですわ」
「そうか、あなたが……」
「もちろんあなたにも話は聞かせてもらうよ」
そして、4人は縛られ城に連れられて行く。
トントンと扉がたたかれる。
「皆さまお揃いになりましたので、謁見室までご案内いたします」
謁見室の扉が開かれた。
謁見室には、国王様、王妃様そして第1王子と第2王子の婚約者がいる。
「顔をあげなさい」
国王様にそう言われ顔をあげる。
「このたびの貴殿の働きには感謝する」
「ありがとうございます」
「あなたのおかげで彼との婚約破棄、円滑に進めることができますわ」
「邪魔だった宰相の息子と使えない騎士団長の息子も片づけられそうだし、とりあえず膿は一掃できそうなのよね」
「それも貴殿のおかげだ。本当に感謝する」
私の名は、ラプラス。
ラプラス商会の会長をしている。
ラプラス商会の商品は幅広く、ラプラス商会に依頼すれば手に入らないものなんてないと噂になるほどだ。
それもそのはず、一般には知られてはいないがラプラス商会のものは皆、魔法使いなのだ。
魔法使いが手に入れられないものを一般人が手に入れられるわけがない。
そんなラプラス商会には一般の人達には公開していないサービスを一部のお得意様には行っている。
それが、人材派遣サービスだ。
このサービスは、顧客に魔法使いたちを派遣するサービスだ。
サービスの使い方はお客様によって異なるが、大体は廃嫡したい息子や排除したい相手を貶めるために使われる。
今回、王子と宰相息子と騎士団長の息子を排除するために彼らを誑かす人間が必要だった。
万が一、誑かされなかった場合は今までの彼らの所業にも目をつむるからしっかりと彼らを見極めてほしいとのことだった。
今回、私は彼らを誑かす役と彼らを見極める役を請け負った。
「では、今回の報酬は後日振り込んでおく」
「ありがとうございます。今後ともどうぞラプラス商会をごひいきに」
「おかえりなさい、ラプラスさん」
「ただいまー、イザベル」
やっと我が家に帰れてホッとする。
「今回学生や教員に使ったセリーヌという人物への記憶、どうしますか?」
「彼らのことは王家が内内で処理するらしいから消しといて」
「了解です」
ラプラス商会は、仕事に使う人物が実在すると周囲の人間全てに思い込ませるところから、記憶を消すまで一連の仕事を請け負います。
生活用品から魔法使いの派遣まで様々な商品を取り揃えております。
ご入用ものがございましたら、どうぞラプラス商会にご用命ください。