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Jigsaw2  作者: さより文庫(永井佐頼)
11/29

こうりゅう

 こころに致命傷を負っていたことに、ようやく気づいた。


 すべてを許し、忘れることが出来る人は幸福である。


 僕には……それが出来ない。


   ◇ ◇ ◇


「赤ちゃんの作り方? 野菜畑の、木の股に住んでる鳥が運んでくるんでしょ」


 答えた瞬間、ジゼルが椅子から転げ落ち、スヴェンはお茶碗を載せたお盆をひっくり返した。

 先生が書類から顔をあげ、眉をひそめる。

 僕の足元で寝ているオニグマだけが、しずかだった。


 ――帰城の日から、およそ一ヶ月近く。

 僕は政務のかたわら、剣術とか帝王学とか一般常識を叩き込まれる最中だった。


 今日の午後は、医者であるジゼルの保健体育の講義で、子作りの仕方を教えてもらっている。

 みんなの態度を見るに、僕が、ねえやたちに教わった知識は、盛大に間違っていたようだった。


「マルセル、あのな?」


 這い上がったジゼルが、僕の隣に座り直した。

 円卓の上に置いた本や黒板を整えて、咳払いしている。


「かまととぶっている、わけでもないな。その顔だと」

「二之旗本のかまぼこが魚で作られているのは、知っているよ。ととは魚の別称なんだよね」


 先生が、くつくつと忍び笑いをしている。

 スヴェンは、壊した茶器を、ほうきとちりとりでかき集めていた。


 オニグマがくわっとあくびをして、僕のひざにすがりついてくる。

 なんとなく、その頭を撫でていると、ジゼルがちっと舌を鳴らして、オニグマをにらんだ。


「ジゼル?」

「ああ、すまん。つまり、人間の子作りっていうのはだな」


 お医者さんらしく、図解と医学用語を積み重ねて、正確な子孫の残し方というものを教授し始める。

 最初はおとなしく聞いていたが、話が進むにつれ、僕は吐き気と悪寒を覚えた。


「…ということでな。おまえは、この国の王将……皇帝で、世襲制なのだから、子作りは重要な政務のひとつだぞ。女性の家系も重要な要素だが、うん、まあ、相手が私ならは、なお良し!」


「――いやだ」


 嫌悪のあまり、顔がこわばって、のどが絞まる。

 手が震え、握り拳を作った。


「マルセル?」

「いやだ……いやだ、いやだ、いやだ! それなら僕は結婚しない! 子供も欲しくない!」


 机を叩いて立ちあがり、叫ぶ。


「陛下!?」

「まーるぅ……?」


 ……いやだ。

 いやだ。いやだ。いやだ!

 ねえやたちは、あんなに泣き叫んで、赦しを乞いもしたんだぞ!?

 あいつら、あの九靫の私兵、へらへら笑って、ねえやを殴ったり蹴ったりして、さらには首を落としたあとですら、あんなこと――…


 あれから一ヶ月経った。

 まだ一ヶ月しか経っていない、あの牢屋敷の惨殺から。


 どうして僕が、あいつらとおんなじ真似しなくちゃならない!

 あれが子孫を残す行為なのだとしたら、どうして、ねえやたちは殺された!?


 ――気づいたら、執務室を飛び出していて、露台に出ていた。

 ここから見下ろす首都は、まだ荒れた様相で、ごはんの炊き出しの煙がまだたなびいている。


 逆臣派の六元老は、摂政として、ここに居座っている間、首都の民を野良動物のように扱っていたという。

 僕のねえやと同じく、私兵にひどい目に遭わされたあと、さらに殺された女の人たちも多い。


「……どうして、そんなこと、するのかな……」


 転落防止の柵にに寄りかかり、しゃがみこむ。


「好きな女の人との間に、子供ってできるんじゃないの……? 殴ったり、蹴ったり、殺したりするくらい嫌いなら、最初からほうっておけばいいじゃないか」


 僕だって男だけど、そんな歪んだ欲求なんて、とても持てない。

 ねえやたちの死に際が強烈で、鮮烈で、いまはもう子作りなんて行為が、この世で一番おそろしいもののように思える。


 ――ここ最近、三元老のリョウ、カナル、ブライトさんたちが、自分の娘さんや、お孫さん、姪っこさんをつれて、僕のご機嫌うかがいにくるようになった。

 意図は、なんとなく察していた。

 彼らの目的は、自分の一族の女性を僕に差し出し、僕との婚姻によって、一族と領土全体の安寧をはかることだ。


 いまはまだ三元老のことを無碍にはできないから、彼女らに優しくしようとつとめていた。

 ねえや三人、ばあや一人に囲まれて育ったので、女の子のあつかいは、生まれつき知っている。

 結果、彼女らは、そこそこ僕を気に入ってくれたようだし、彼女らの口添えで三元老も物資や金品の援助を惜しまなくなった。


 女の子は、きらいじゃない。

 スヴェンの従妹は毅然としていて、でも茶目っ気もあるお姫様だと思う。

 カナルさんとこの孫娘は、刺繍と狩りが得意で、かっこよかった。

 ブライトさんとこの姪っ子は、まだ七歳で、妹みたいに、かわいいって思った。

 でも――それだけだ。


 いずれ彼女らに、おぞましい行為を働く自分の姿を想像したら、怖くて怖くて仕方がない。

 頭のなかが、ぐるぐるした。吐き気、めまい、動悸。

 世襲制の皇帝にとって必要な行為だと頭では理解しているのに、こころと体は完全に拒絶している。


 とうとう柱の陰で吐いた。

 胃液の、生臭い、すっぱい匂い。

 みにくい茶色のぶつぶつ。

 ……気持ち悪い、嗚咽が止まらない。

 苦しくて、少しだけ涙が流れた。


 まもなく、僕の背中を、大きな手がさすった。


「陛下……皇子……」


 スヴェンの手が、心配そうに何度も何度も。

 彼以外の気配がない。

 ……みんな、気をつかってくれたらしい。

 臆面なく弱音を吐ける相手が、いまのところ、スヴェンしかいないって知ってるから。


「ごめん。ぼく、黄泉がえるとき、どこか壊れたのかもしれない……。婚姻や子作りが怖いとか、たぶん男らしくないことだよね……」

「――ご自分を責める必要は、ございません。その傷は、外からつけられたものであって、皇子自身、なんの責もないことです」

「うん……。……でも、こんなでは、皇帝として、だめなやつだ」


 陛下、とスヴェンが、僕の嘆きをさえぎる。


「これからお話しすることは、どうか皇子の胸のみに――

 その実、伯父から、従妹の姫をつよく薦めるよう言いつけられております。ですが、スヴェンは無理強いいたしません。終の盾は、皇帝を守る盾。陛下を傷つけるものならば、伯父も従妹も切り捨てる覚悟です。親族の縁を切ると言うことではなく、命と存在そのものをこの世から屠り断つということです」


 彼の血を吐くような言葉と蒼白な顔に、たまらず息をのんだ。


「ちがう。ごめん、そういうことを言わせたいんじゃあ、ない。落ち着いて。いや、そうではなくてね」

「――陛下、お話の続きは、ここではなく、こちらへ」


 スヴェンが、僕を抱え、吐瀉物のあるところから、さりげなく引きはがした。

 用意のよいことに、露台の円卓に水の入った椀がある。

 おとなしく、水でうがいをして、口のなかの酸っぱいものをそこにぺっと吐きだした。


「……だめだなあって思ったんだよ。みんな、立派なのに、僕だけ名ばかりの皇帝で、」

「――陛下、卓上に突っ伏してください」

「…………こう?」

「はい。――どうぞ」


 背中をさすられると、安心して、そして僕ははじめて、大声で泣いた。


「……いやだっ……気持ち悪い……なんで、あんなことするっ……」


 泣きながら、本音を吐露した。


「いやだ……そんなの、したくない……気持ち悪い……」

「………………」

「どうしよう……どうしたらいいんだっ……こんなんで、みんなにがっかりされたらって……」


 僕の愚痴と嫌悪感を黙って聞いていたスヴェンが、陛下、と固い声で僕を呼んだ。


「――婚姻も、子孫を残すことさえ、おつらいのなら、解決策は、ひとつしかございません」

「……皇帝を、やめるということ?」

「いいえ」


 スヴェンは一度、目を閉じ、自身の表情を改めた。

 無表情、冷徹。そんな表情で、目と口を開く。


「戦争によって、この世界すべての島国を完全接合……併合すればよいのです」

「え?」

「玄女と上帝の神話を憶えていらっしゃいますか? すべての島国をひとつにした王将は、玄女によって不老長寿の神、上帝になれるという」

「それは、」


 憶えている。記憶している。

 だが、


「この世にひとつしか国がないのなら、外敵を恐れずにすみます。そして、不老長寿の神となれば、子孫を残す理由がなくなる」

「それは……だけど、」

「陛下。スヴェンは機能的に、子を残すことが出来ません。ですから、終の盾は私が最後です。この先、陛下が御子をお残しになられても、守る盾が、もういない」

「……ごめん」

「これは私の浅慮の問題です。ただ私が申し上げたいのは、」

「わかってる。ただね、スヴェン。そんな理由で、他国と戦争をする王将がいるとしたら、僕だけではないかしらと思って」

「不老不死の妙薬をねらい、傾国の美女をめぐり、金銀財宝をねらって、戦した王も、過去にはおります」

「そんなで、巻き込まれる国民が、かわいそうだ」


 鼻をかみ、目をこすって、苦笑した。


「……ごめん。いまは、何も考えたくない」

「はい」


 露台に、しずかな時間が流れる。

 間もなく、生ぬるい風が吹き、雷鳴がきこえた。


「――春雷。にしては、なにか妙な」


 スヴェンの独り言に、僕は顔をあげた。

 露台の手すりの向こう、上空に、文字通りの暗雲が立ちこめる。


 遠くを見ようと目を細めるスヴェンが、低くうめいた。

 と、同時に、露台に先生とジゼル、少し遅れてオニグマが駆け込んでくる。


 獣の咆哮のような雷鳴。

 黒い空を這う蛇のような稲妻。


「龍だ」


 先生が、つぶやいた。


「あれが、龍ですか? しかし、空想上の生き物では、」


『アクセル! 見つけたぞ!』


 雷鳴とともにこだまする声、叫び。

 ただの稲妻と思っていた光は、長い胴にたてがみを生やし、角やら手やらかぎ爪やらを生やした巨大な蛇だった。


『アクセル、アクセル、アクセル!』


 龍と呼ばれた巨大生物は、雷鳴疾風とともに、こちらへ飛んでくる。


『いまは名もなき、黄泉の根の国、黄金果樹園より推して参った!』


 おかしいな……。咆哮は雷鳴そのものなのに、なぜか人の話す言葉として聞こえる。認識できる。


『アクセル! 過去に滅びし者が、新たな世に干渉するな! 先の善勝夫人の命により、もろとも排除する!』


 鋭い牙が並ぶ口を開け、龍は――僕のほうへ向かってくる。


 彼の通り道で落雷が起きて、首都の建物が壊れ、また火を噴いているのが見えた。

 まったく、なにに怒っているのか知らないが、こんなの、ただの八つ当たりだろう! 大迷惑だ!


「先生!」

「龍は、王者のしるしというけどね。こうなると、ただの害獣だな」


 先生は破壊された建物を見て、肩をすくめた。


「面倒だ、あのバカ龍、さっさと殺してしまおう」

「なっ……待てギルベルド! 黄龍ってのは、」

「くちなわの亜種だからって、肩を持つかい? あれ、こっちを殺す気満々だよ。次にマルセルくんが死んだら、もう二度と黄泉がえらない。こんな、くだらないことで、彼を死なせる気か」

「うっ、ぐ、」


 先生とジゼルが口論する間に、龍は距離をどんどん近づけている。

 スヴェンが僕の左――先生の反対側に陣取って、腰の太刀に手をかけた。


「陛下、ご命令は!?」

「え……えっ?」

「わっ、私は今回は加勢しないからなっ! こんな罰当たり、できるもんかっ」

「ああ、女はおとなしく引っこんでるといい。オニグマ、ジゼルさんを奥へ連れて、見張れ! スヴェン、のどを。あの一枚だけ色のちがう鱗が弱点のはず」

「昔どおりの逆鱗か、承知」


『アクセルぅぅぅぅ!』


 龍が頭から、こっちに突っ込んできた。


 先生は露台の上にある横木に、霊宝武具の双頭蛇を投げた。

 そのまま振り子のように全身を揺らし、龍の突撃と同時に何もない空中へ跳ぶ。


 僕を見据えていた龍の視線が、先生につられて斜め上に動いた。

 先生は軽業師のように体をひねり、もう一方の双頭蛇を投げる。

 赤い縄とおもりが、ぐるぐるっと龍の頭に巻き付き、その巨大な口を縛り上げた。


『むー、むむ、む……っ』

「スヴェン!」

「陛下、しばし離れます!」


 先生の合図に、次はスヴェンが飛び出した。

 苦しげに頭をそらした龍ののど、スヴェンの太刀が突き刺さる。

 その隙に龍の背を階段のように駆け下り、先生は露台に飛び降りた。


『アク……っ』


 龍はかすかに声を漏らし、そして、そのまま――


「……へ?」


 ばしゃーと水音をたて、龍の体は液体化。

 そのまま真下の地面に滝のように流れ落ちた。

 はた迷惑な怪物の、あっけない最期。


「…………何これ」


 その幕切れに、僕がぽかんと口を開けていると、


「黄龍は、死者の国の水でできているらしい。だから死ぬと液体に戻る」

「亢龍どの。なぜ、このような怪物が、突然、」

「あの口ぶりからして、例外狩り、異物狩り、だろう。人の世にありえない存在を、排除しようとした」

「例外の、異物」


 それは……例えば、死んだはずの人間が、蘇生したとか。そういうもののことだろうか?


「――ぼく、この件に心当たりあるかも」

「陛下……?」

「へえっ。それは、どこで?」

「夢のなか。黄色の泉のそばにおばあさんがいて、そのひとが今みたいな怪物に化けました。そして、叫んでた。アクセル、アクセルって。あれは夢と思っていたけど……」


 牢屋敷を脱したあと、夢で見たことを先生に伝えると、


「ああ……なるほど。そういうこと」


 先生が、うなずいた。


 やけに耳に、目につくアクセルという名前。

 死んでいた時もそうだし、霊宮に行った時も、いまの龍騒動も。

 ……黄泉がえりが、あるんだ。生まれ変わりだって……。


 おこがましい、大それたことを思いつき、頭を振った。

 まさかね……。僕の名前はマルセルだ、アクセルじゃあ、ない。

 それに、いまだって問題山積みの皇帝人生だ。前世だか、転生だか、そんな面倒ごとまで背負うのは、ごめんこうむる。


「先生。コウリュウはまた、きますか?」

「黄泉のばあさんも、そんな暇な御仁じゃあ、ないと思いたいね」


 それよりもと、先生は双頭蛇を回収し、腕にくるくる巻き付けながら、


「ちょうどいい、マルセルくんに龍殺しの英雄って経歴をつけくわえておこう。王権の神秘性が増す。スヴェン、きみ、自分の手柄を譲る気は、あるかい?」

「譲るも何も……私は陛下の盾です。すべては、陛下のために」

「いやあ、すばらしい忠臣をもったね、マルセルくん」


 スヴェンの無欲さに拍手し、先生は微苦笑した。


「――それで、どうすればよいのですか?」


 からかわれていると気づいたらしいスヴェンは、苦虫を噛み潰した顔だ。


「ああ、それはね、」


 そして、二人は、今回の件をどう処理するかで話し合いを始めてしまった。

 なんとなく居心地悪くなって、一声かけてから、室内に戻った。

 露台のある部屋――僕の私室の片隅にジゼルが膝をかかえてうずくまり、少し離れた場所にオニグマが立っていた。


「まーるぅ! もう、おわた?」


 ぱっとオニグマが振り返り、大きな手足をばたばたしながら、僕を出迎える。


「うん、龍退治はね。――ジゼル?」

「……おまえ、殺したのか? 龍を」

「いや、僕ではないよ。でも一般的に、僕が斃したことになるらしい。龍殺しの英雄だって」

「そうか………………いや。人間社会の昔話では、定番だものな、龍殺しの英雄」

「――何が、いやなんだい? ちゃんと言ってくれると、たすかるよ」


 僕は、彼女の隣に三角座りをした。

 膝を抱えていた白い手をつかみ、握って、手の甲をぽんぽんとたたく。


「……私の一族では、な。龍は、山に千年、海に千年生きた蛇だといわれている」

「うん」

「だから、龍は、敬意を表すべき存在であって……。あれは神話級の蛇といっても、いいくらいだ」


 ん? 神話級の蛇……?

 そういえば、僕が先生からもらった丸薬の原材料、神話級の蛇の生き血だったような……。


「だから、龍を殺すといわれて、怖くって……畏れ多かった」

「……そっかぁ」

「今日のあれが暴れたせいで、人間や首都に迷惑かかっているのは、わかっている。……すまん。次に、龍が出てきても、私はおまえに助太刀することを、ためらうかもしれない」

「次から次に、ぽんぽん龍が出てきたら、僕たち、すごく困るよ」


 ジゼルは、僕の手に指をならめ、にぎにぎと握り返した。

 ふと僕は、刀掛台の刀を見やった。

 死にたくないから、殺されたくないから、戦うために手に入れた霊宝武具を。


「――わかった。誰だって、いやなことはやりたくないね。だから、次に龍退治することがあったなら、きみを巻き込まないように気をつけよう」


 そして、先ほど、棚上げしてしまった問題を、あらためて考えた。


 女の人と結婚して、子供を作ること。

 それを回避するためには、覇道を進まなくてはならないこと。


「……ねえ、ジゼル。オニグマもだよ」

「なに?」

「なんだ?」

「僕が……もし、今ある全部の島国を、ヨルムンガンドの領土にしたいって言ったら、どうする?」


 僕の問いかけに、ジゼルが大仰に震えた。


「マルセル。それは本気か? 冗談でなく」

「……まだ、わからないけどね。でも、今のままの僕なら、そうなる可能性は、高い」


 国のために結婚する。子供を作る。

 そんな道理があるならば、スヴェンが提案したように、戦争を…って考え方も、あるのだ。ヨルムンガンドという国を永遠に持続させのなら。


 ………………

 …………待て。

 ……僕は、いま、何を考えた?

 戦争って……冗談にしては、悪質すぎやしないか?


「まーるぅ、が、望むなら。オニグマ、手伝う」


 しかし、オニグマは是と答えた。

 そして、ジゼルは、


「マルセル……っ」

「わあっ!?」


 両腕をひろげ、僕を真っ正面から抱き込んで、ぎゅうぎゅうと包んでくる。


「嬉しい! 嬉しいよ、マルセル! おまえ、上帝になる気なんだな!? ああ、もちろん! 世界をひとつにする男に、私が全面協力しないわけ、ないじゃないか!」

「いや、まだ悩みちゅ……んっぐ」


 ちょ、ちょっと待って、待って! そんなに、僕の顔に、おっぱい押しつけないで! 息できない、苦しい!


「マルセル、マルセル、マルセル! ああ、やはり、私の上帝の卵は、おまえだったんだ! ここまで長く放浪してきた甲斐あったぞ! おまえは、私が絶対に孵してやるからな!」

「ぐえっ」


 ジゼルは、僕を抱き潰す気なんだろうか?

 ――あ、だめだ。苦しくて、意識がだんだん遠のいてきた……。


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