第二章 Ⅳ
黒樹を何とかやり過ごした後、僕はようやく学校から出ることができた。
と、思ったのもつかの間、何故か僕は黒服でグラサンのオッサン数人により、無理やり車に押し込められ、手足を縛られて目隠しをされ、どこかへ連行されていた。
つまり、誘拐、あるいは拉致である。
………………はい。立派な犯罪です。
これが彩花なら、僕は許してしまうかもしれないが、このオッサン達を許すことは多分無いだろう。
などと考えている場合ではない。
この状況はマズイ。
早く何とかしなくては。
そう思ったものの、子供一人で大人数人に太刀打ちできる訳がない。
どれくらいの時間がたったのか、ようやく車が停止した。
車から降ろされ、手足を縛っていたものがほどかれた。
そして目隠しが外され、僕の目に飛び込んだものは………
「………テレビ局?」
そこにあったのは、テレビ局のビルだった。
「歩け。」
囲まれているので逃げることもできず、オッサン達が怖すぎて大声も出せない。
仕方なく僕は言う通りにすることにした。
すると正面玄関からではなく、何故か関係者専用の裏口から入った。
警備員がいる。
これはチャンスだ。……………と、思ったら警備員があきれ顔で僕とオッサン達を見ながら、
「また彼女ですか?」
と言った。するとオッサンの一人が、
「そうなんですよ。困っちゃいますよ、ホントに。」
苦笑いしながらそう言った。
「いつもご苦労様です。」
と、警備員が言った時点で僕はあきらめた。
が、それよりも気になったことが一つある。
さっきの警備員の言葉だ。
さっきあの人は「また彼女」と言った。
そしてここはテレビ局。
思い当たる人物が約一名。
今日何度目かの嫌な予感がした。
そして楽屋らしき場所へ連れられ、中に入るとそこには――
「あら、遅かったわね、桐生君。」
隣のクラスの朝野が、怪しげな微笑を浮かべていた。