プロローグ1
プロローグ1
START1
バスが迫って来る。
途中で何があったかわからないが横倒しになって物凄い速度でやってくる。
他の四人は何が起こったのかわからないような顔をして、ただ呆然と立ち尽くしている。
バスが迫る。
俺は目を瞑った。
ーーーーああ、やっぱり変わらない。
ー2064年6月16日ー
「はあ〜あ」
大きなため息をつく。
この順番を待っているときの独特の緊張感は何回経験しても慣れない。
今日は[ビジョン]の定期チェックだ。
ビジョンとは、アークシステムというどっかのお偉い科学者が開発した「個人の未来を可視化する」というシステムを使用した可視化された未来のことだ。
本当にそんなことが可能なのかと調べてみたが、俺には難しすぎて何が何だか全く分からなかったが、とりあえずできるらしい。
「なーに暗い顔してんのよ!」
「うおっ」
脳内で一人説明をしているところで声を掛けられてびっくりする。
「なんだ、未来か驚かすなよ。今俺は少しでもビジョンを良いもの変えようと善良な行いをしようとしてだな…」
「ぷぷ、前みたいに生涯独身なんてビジョンを見ちゃあねぇ。」
「はぁ?違う俺はちゃんと結婚して…」
「え、結婚してたの?」
「あ、いや違う何でもない」
「そういえば、未来はどんなビジョンを見たんだっけ」
なんとか次の話しに繋げて取り繕う。
「私は、結婚…かな」
「未来と結婚するなんてどんな奴だろな。苦労が目に浮かぶぜ。」
「うるさいなぁ!独身に言われたくない!」
「えー次、東洞 信君。」
おっと女の担任の大嶋先生に呼ばれた。
俺は立って先生のあとについていく。
階段を降りて地下に行く。
途中クラスの女子の浅田さんとすれ違う。浅田さんは絶望的な顔して俺に一瞥もくれぬまま過ぎていった。
どうやらだめだったらしい、本当は他人のビジョンには不干渉なのだけど、あれは教室入ったら問い詰められるな、きっと。
ある部屋のドア前で先生は立ち止まり、鍵を開ける。
中に入ると物々しい機会が沢山あった。
俺は思わず唾を飲み込む。
ベッドに横になり、頭や体に機器が取り付けられる。
目は何かの機械で覆われていて、何も見えない。
10分ほど経っただろうかやけに長く感じる。時折聞こえる先生の重いため息が悪い結果を連想させてしまう。
そして、キィと椅子が動く音が聞こえた。どうやら終わったらしい。
先生が機器を外してくれる。
外し終わると俺は先生と向き合って結果を待つ。
長い沈黙の後、先生が重い唇をひらいた。
「さすがね、東洞君順風満帆な人生だわ。」
「ありがとうございました」
俺はそれだけ言って部屋を出た。
先生から告げられ内容はこうだった。
「詳しい年齢までは分からないけど東洞君あなたは、医者になり、結婚し、子供ができ、豪邸に住み、素晴らしい人生を謳歌できるわ。
これからもこのビジョンに向かって頑張ってね。」
前もほぼ同じような内容だった。
だけど俺はなれるような頭もないし、仲の良い女子なんて未来を含めて数名だ。
前はこんなすごいビジョンに盛り上がって、浮かれていたが、こうも連続だとおかしい。
この先俺にどんな変化があるというんだ