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世の中そんなに甘くない。

 俺は、毎日をなんとなく過ごしてきた。特に優れてもなくて誰からも必要とされなかった俺に、存在意義はあるのか?といつも自問自答していたくらいだ。


 そうぞうしんが姿をけしてから数時間。状況を飲み込めない人、パニックに陥ったもの、漠然と立ちのめる人。


 ――――そして、闘志を燃やすものも。

 少なくとも俺はその一人だと信じたい。てかそうだ。存在意義のなかった俺に対して、奴はそれを与えてくれた。


 俺にも生きる意味が見つかったのだ。世界のどうこう……とかのためじゃなく

 「自分の存在意義のために――」


 なんて、あの時つい口にだしてしまったため、いらぬ約束までしてしまうことになってしまったんだけど。心配事は増やしたくないな。。。

 「うおっ! 」

 その刹那、俺の前腕に突き刺さった二つの牙により大量の血があふれ出した。

 

 「うわぁあああぎぃぅやぁあうぅ! 」

 

 って、そんな痛くないんだけど(笑)

 この事に気が付いたのは、ほんのさっき。あん時はほんと死ぬかと思ったはわ。だって、オオカミが。あの獰猛なオオカミが・よ? 噛み付いてきたんだよ。これも、奴がいってたこの世界のルールの一つなんだろう。


 ”痛覚は思ったよりもない (笑)”

 

 噛み付いたきた瞬間、手に力をいれ牙をぬけなくする。それで、やりたい放題攻撃力のない、このちっぽけな短剣で倒す。これが今さっき思いついたこのオオカミの攻略法だ。なんせ、動きが早い。早すぎる。とてもじゃないけど運動音痴の俺にはついていけません。


 「おっ!」

 どうやら、HPを切らしたのだろう。あの満月の夜に聞こえる様な泣き声と共に、オオカミは蒸発した。蒸発。

 それと同時に、いつもの画面。宙に浮かぶ、青いスクリーン。いわゆる、戦闘結果というやつだ。獲得EXPやら、素材、G。どれも俺にとっては見慣れているような、新鮮のような。


 そういや、Lvあがったらどうなるんだろうか?奴は、ゲームの設定を付与した! なんていってたけど、痛覚以外どうも変化が見当たらない。素材という点ではマニア心がくすぐられるのは確かなんだけど。

 戦闘結果のスクリーン下部にあるOKをタッチする。


 「――――だっさいやり方ね。もう少しどうにかならないのかしら? 」


 ……後方から聞こえるこの声の主は。恐る恐る振り向く。


 。。。。。うわぁ、恥ずかしい。めちゃくちゃ恥ずかしい!

 

 「立派な戦士になるんじゃなかったの? 」

 やはり、予想通り痛いところを突かれた。


 ――数時間前。奴が闇に姿を消した後。

 「自分の存在意義のために――」

 予想以上に、いや、そもそも声をだすつもりなんて無かったのだが、俺の心の声は、喉を通り、周りの人間の耳にまで到達していた。

 そこでだ、彼女が再び現れた。

 

 「自分の存在意義のため……ねぇ」

 

 少女が――先程会った自分と同い年ぐらいであろう制服の少女が、どこか俺をバカにしたような目で俺を見ていた。

 「……なんだ、よ。 ? 」

 「確かに世界を救うために戦うなんてただの戯言ざれごとでしかないものね。ていうか、何カッコつけたこといってるの? 気持ち悪い」

 流石に、女子から発せられた”気持ち悪い”という言葉には心が折れた。と同時に俺の頭は通常時の冷静さを失い、なんかこう、頭が真っ白になってた。

 

 そんな俺をみかねたのか、一つの沈黙の後、彼女の声がそれを破った。

 「提案なんだけれども、これから一緒に行動しない? この世界について詳しいものはいない。それ故に、どんなことが起きるか分からない。一人で行動するのは危険だと思うの」

 

 まさに、彼女の言うとおりだ。一瞬目線を床に落として考える素振りをしてみせた。だが、俺にはその気はない。そもそも、団体でやるものは苦手だ。絶対に足を引っ張ることになる。

 俺は答えを決め、顔をあげる。

 …………いやいや、コレは違うんだ。うん。

 途中、胸に目がいきそうになったが、しっかりと目をみた。

 「ごめん。確かに君の言うとおりだけど、俺は一人で行動する。一人で行動して一人で何でもできるようになりたい。誰の迷惑にもなりたくないんだ…………俺は立派な戦士になるんだ! 」

 いま、思い返せばもろにアニメの主人公みたいな台詞をよくもはいたものだ。俺の黒歴史台詞候補になるな。。。

 「ふ~ん。立派な戦士ね……ぇ。まぁ、いいわ。私は、黒崎りん。あなたは? 」

 聞いてもいないのに、彼女、黒崎りんは自己紹介を始め俺もそれにならった。

 「笹塚ささづか怠人たいと。怠ける人と書いて怠人」

 うん。さっきの豪語からの名前紹介。もう、矛盾してますやん。まぁ、俺なりの精一杯のジョークのつもりだ。状況が状況だ。

 「それじゃぁ、怠人。また会うのを楽しみにしてるわ。立派な戦士さん」

 そういうと、りんは嘲笑のような笑みを浮かべて、一人でどこかにいってしまった。

 もしかして、俺バカにされてる? てかジョークのつもりだったんだけどなぁ……。


 ――――それで、今に至る。と言うわけです。


 はい。かっこつけた言葉の後に、あんなつまらんジョークをかましたのです。恥ずかしいったら、ありゃしません。てか、神様のいたずらですか? ふざけんっなよ!さっき、中2病発動したの聞かれたばっかだぞ! くそったれ! 


 世の中そんなに甘くない。 

 


 

読んでくださった方。ありがとうございました。

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