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興味のありか

「おー、本当に治りやがった!」

「……疑っていたのですか?」

「いやいや。大陸でも話に聞いた程度で、実際に見たことなかったから」

「…………。でも、本当に怪我をなさっていたのですね」

「……疑ってたのかよ」

「ごめんなさい。怪我をしているようには見えなかったので……スターズブルーの遺産というのも、万能ではないのですね」

「しょせんは人間が手にできる程度の力でしかないってことだぁな。……手にした竜神様はいまだに暴れてるようだが」

「…………」

「あれだよなー。むしろこんなに戦えてる魔法使いのほうが人間離れしてるよなー」

「ええっと、実は大陸のほうではあれくらいの魔法使いが標準的だったりは――」

「しない。絶対にしない。国一番の魔法使いだったと仮定してもあそこまですごくない」

「そ、そんなにですか?」

「あんなのがぽんぽんいたら大陸はとっくに滅んでるっての。……まあ」

「どうしました?」

「まあ、スターズブルーなんてのがぽんぽん広まってるこの海はたいがいおかしいけどな」

「私、さきほどまで見たことありませんでしたけど」

「それが一気に四人も見たわけか。見識が広がってよかったじゃないか」

「四人? あなたがたふたりと、竜神様と……」

「そしてあの魔法使いってわけだ」

「そうなのですか?」

「間違いないな。リャッカが言うには身体が分裂したって話だが……竜神様の暴風もスターズブルーっぽいな」

 破壊音をまき散らしながら土砂や木々が吹き飛んでいる地点を眺めながら、しみじみと言う。

「この島、もしかして滅びるんじゃないか?」

「え、縁起でもないこと言わないでください」

「島を捨てて逃げ出そうとしてる人間の言う台詞でもないと思うが……。そして、この島の人間も滅びるんじゃないかと思ってるようだが」

 くるっと反対側を振り向く。

 島に来るまで乗っていた海賊船の上から、リャッカが島民をひとりずつ気絶させて放り出していく。

「あれはその。一時避難と言いますか……」

「海賊から海賊船を盗もうと考えるとか、この島の住民はおっかないよな。食糧積み込んでくれたみたいでありがたいけど」

「うううう」

「お、そろそろ終わったか。ほら、隠れてないでいくぞ。シスター」

「は、はいっ。ああ、大工さん、町長にパン屋の……」

「おい……」

「ご、ごめんなさいっ」

「まったく。自分を生贄として差し出した奴らに対して、人目なんて気にする必要ないと思うがね」

「わ、割り切れないじゃないですか。そういうことって」

「さっぱり分からん。気に入らない奴がいればきっぱり怒鳴り返す性分だしな」

「あなたって……。そ、そうですよね。海賊ですものね」

「いや、のほほんと大陸で暮らしてたときからこんな感じだが……リャッカ、船室は全部確認したか?」

「……した。こんなのとか」

「ああ、町の子供たちっ」

「おい……」

「ご、ごめんなさい……」

「…………。捨ててきて、いい?」

「いくらシスターが騒いだって、連れてくわけにゃいかんだろ。人さらいじゃあるまいし」

「う。私はその、気絶させられてることにあわてただけで」

「そうかい。それじゃ出発するか」

 子供を町民の山の中に捨て、港から離れていく船。

「……、疲れた」

「竜神様とかのことを言ってるのか、それとも船から人追い出したこと言ってるのか、どっちだかな」

「……。どっちも?」

「そりゃご苦労。やっぱあれだな、この海はおっかない生物ばっかだな」

「……うん」

「俺たちも一応、島が滅びないようにでも祈っておくか? シスターは一心不乱なようだが」

「…………」

「……ん?」

「……まあ、祈ってもいい」

「興味なさげだな、リャッカ」

「あの島がどうなっても、関係ないから」

「まったくもってその通りだが。……やめとくか。シスターだけでも十分そうだし」

「うん」

「……ふう。そろそろ島が見えなくなるな」

「……うん」

「シスター、そろそろこっちこいよ」

「…………」

「シスター! こっちこい!」

「あ、はい……。なんでしょう、なんだか実感がわきませんね」

「…………そういうもんかもな。リャッカはどうなんだ?」

「……?」

「ほら、自分の島を出たことに対して」

「なにも」

「そうか……」

「感謝、してるから」

「む。ええい、シスター、こっち。とりあえず案内するから」

「は、はい?」

「こっちが寝床、こっちが台所、こっちが倉庫……」

「え。あの、これ、なんですか……」

「ああ、船の元の持ち主が持ってたものだな。他に置く場所もないし、食料と一緒だが」

 金銀財宝である。

 きらきらと輝いている。

「わあっ」

「……。こんなのとか」

「わああっ」

「こんなのとか」

「わあああっ」

「こんなのもあるな」

「わあああああっ!」

「…………。シスター、目が輝いてる」

「すっかり財宝に夢中だな。もう島の事なんか忘れてるんじゃないのか……?」

「……忘れられるなら、いいこと」

「かもな」

 なんとなく、金ぴかの首飾りをリャッカにかけてやる。

 不思議そうに首を傾げる彼女を見て、コーデントは息を吐いた。

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