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研究施設を探して

 始まりの島――

 霧の中の街の一角に、コーデントたちはいた。

「あまりにも街が平和すぎて、いらぬ注目を集めるところだった……」

「あ、あはは……。ただでさえ、悪魔の支配する闇の都か、なんて警戒していましたからね……」

「霧があって幸いだったかもしれん」

「……すでにこの島になにかがあるということは、悪魔側に伝わっているのですよね。慎重に行動しないと」

「慎重になってどうするんだよ」

「慎重に行動しないと、目立つではありませんか。できる限り安全に……」

「俺たちの行動なんて、最初から筒抜けに決まってるだろ」

「なぜです」

「なぜったってなぁ……あの島で大幹部と戦ったわけだし、監視とかされてるんじゃないか? だいたい俺たち、悪魔たちがどれだけの組織なのか知らないんだよな。基本はひとりふたりでしか出てこないが、リャッカの村の時はやたらぞろぞろいやがったし、天使の時には低級悪魔がぞろぞろと」

「うううう。やっぱり、帰ったほうがいいのではありませんか?」

「どこにだよ。リャッカだって前に言ってただろ、帰ってもそのうち世界が滅んで終わるだけだっての。誰かが都合よく世界を救ってくれることに期待するか?」

「そう、でしたね……。弱気になっただけです。ごめんなさい」

「いや、あやまられてもしかたないんだが……。俺もまた帰りたくなってきた。無謀なんだろうか」

「げ、元気を出しましょう。世界の人々の安息が私たちの頑張りにかかっているのです。なんとしても、邪悪な者たちを打倒さなくては」

「アンジェリカはシスターだなー……」

「なんですか、あらたまって」

「命と金と人類の平和と、なにが大事なのかと思ってな」

「全部大事です」

「そんなもんかい。リャッカが大切にしてるものは分かり切ってるんだけどな」

「というと……」

「目の前のチーズケーキだろ」

「脇目もふらず、夢中になって食べ続けていますものね」

「これだけでもこの島にきたかいがあったんじゃないかと思えてくるな」

「ええ……?」

「なんだよ、そのきょとんとした表情は」

「いえ、そんなセリフが飛び出してくるなんて思ってもみなかったものですから」

「帰りたい……いっそ大陸に帰りたい。シスターから財宝を強奪して、女と遊び歩いたり魔法道具の材料を買いまくりたい……」

「ええええっ。やめてください、あれは私のですっ」

「知ってるけども。ふう……」

「なんで急に興味を出したのですか。今までお宝なんていらないって態度でしたのにっ」

「金なんてあってもこの海じゃ使いようないしなー……。大陸に戻ったらいくらでも使い道がある」

「へ、へえ……それは……興味ありますね」

「遊びまくりたい、買い物しまくりたい、とか思ってるだろう」

「思ってません! ……ちょ、ちょっとだけ」

「ちょっとだけ思ってないのか。大部分は思ってるってわけだ」

「ううううっ」

 ひとしきりシスターをからかってから。

「冗談はさておいて……聞き込みでなにかわかったか?」

「ええっと、スターズブルーの遺産とは関係ありませんけど、暴れる海賊たちを一掃して回る正義の人が噂になっているようですよ」

「ほほう……せっかくだから悪魔退治にもご協力願えれば、俺たちも助かるんだが」

「おそらく協力していただけると思いますよ」

「なんだと? まさかそいつ、この島にいるのか?」

「噂では無口な剣士の少女らしくて、行く先々で大量の料理を食べあさるとかなんとか……」

「それはリャッカじゃねーか!? 今までの話の中で一番帰りたくなったぞ、おい!?」

「あ、あはは……」

「なにが正義だよ……」

「あとは、北の島にある大聖堂に過去の聖人が遺した護符や衣服、鞄や方位磁石が安置されていたそうなのですが、悪魔の襲撃を受けたとか……」

「うん? なんのためにだ」

「それはわかりませんが……遺品はその場で破壊されてしまったとかで、なんらかの封印が施されていたのかもしれません」

「それは考えても仕方ないか……あとは?」

「そんなところですね……。コーデントさんのほうはなにかありましたか?」

「この島の地図をもらってきたんだが……ここからここまでが居住区。で、このあたりが人の寄り付かない場所ってことになるが」

「では、その部分を地道に調べていけば、その……スターズブルーが使っていた研究施設も見つかるかもしれませんね」

「数十日も前から、不審な物影が目撃されてるらしいぜ」

「それは……。避けては通れない道、ってことですね。どうにかするしか……」

「ま、悪魔との決戦はそうだろうけどな。だが、数十日前からってのはどういうわけだ? 大幹部とは別の悪魔たちなんだろうが……それだけ探してれば、すでに研究施設は見つかっていてもおかしくないはずだ」

「しかし見つけられていない。あるいは見つかっているけれど、この島を出られない理由があるとか……」

「見つけたものの研究がはかどってないとしても、この島で継続する理由がないからな。儀式的ななにか……いや、まだ研究施設は見つかっていない方向で考えたほうがいいのかもしれないな」

「なぜです?」

「妖精の里の……エリオットの奴がたしか言ってただろ。物を探す魔法道具を探してるとかなんとか」

「なるほど……その探し物が研究施設かもしれないってことですね。コーデントさんなら、どこに研究所を作ります?」

「うん? 今なにか、おかしな理論がなかったか」

「いえ、同じ立場として、場所を推測できる部分もあるのではないかと思いまして」

「同じ立場ってことはないと思うが……あん?」

「どうしました?」

「爆弾を除去するための道具を作った研究者は、悪魔と対立して森の奥に研究施設を作った……」

「そう、ですね。ではやはり、今回も……」

「もしかしてこれ、居住区に研究施設があるんじゃねえか?」

「え、ええええ? なぜですかっ?」

「いや、食料の買い出しとか面倒だし」

「えーと……それはそうかもしれませんけれど。周りの人を巻き込んで危ないですし、悪魔から隠れる意味でも……」

「なんで隠れるんだよ」

「え?」

「スターズブルーはその時点では、悪魔と対立していなかったはずだ。隠れる理由がないんだ……」

「あ……」

「それに、魔王が降臨していた時代だろ。瘴気によって魔物がはびこったり怪奇現象が起こった時、ひっそりと隠れていたら対処しづらいはずだ。なんにしろ、どんな理屈をつけたところで……俺ならわざわざ誰もいない場所に隠れようだなんて思わない」

「で、では……探しようがないではありませんか。もしかしたら、もう研究施設も取り壊されてただの住居になってしまっているかも」

「スターズブルーは偉人だぞ。そうと知らなくても怪しい研究施設を簡単に破壊するかよ。地下、ってのが妥当かもな」

「地下……ですか? その理由はどういったものでしょう」

「いくらなんでも、研究には広い空間が必要だったはずだ。そんな場所を確保するのは大変だろうし、目立ちすぎる」

「ですが、地下に広い空間を作るというのも、それ以上に大変なのではないでしょうか」

「スターズブルーは大陸からきた魔法使いだ。その程度のことはやってのけただろう。人付き合いのほうがよっぽど大変だったじゃないかと俺は思うね」

「暗黒の時代に、突然やってきたよそ者ですからね……人々が快く受け入れるのはなかなか難しいでしょう」

「ふむ。大体の目星はついた……船に戻るか」

「ええええ? な、なぜですかっ?」

「船に積んである魔法道具を改良して、探索でもしてみるさ。これだけ範囲がしぼれてるなら見つかるかもしれん。悪魔どもにはできないやりかたってーわけだな」

「…………。いよいよ、ですね」

「そうだな。くっくっく、俺の技術で大陸の……国の奴らの驚く顔が目に浮かぶようだぜ」

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