表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/49

巻き戻り島の発見

 ――始まりの島。

 ようやくたどり着いたその光景への感嘆の息が、朝の冷気に白く染まって宙へと立ち上り、その白さが唐突に消える。

「え?」

 一瞬の間に起こったその出来事に、コーデントは間の抜けた声を漏らした。

「なにが……、……っ。始まりの島も消えた!?」

「…………」

「おい、リャッカ。なんとか言え。なにが起きた!」

「…………。なんとか」

「殴っておいてなんだが、そういうあほなこと言ってるともう一度殴るぞ」

「…………。太陽」

「なに?」

「位置が、違う。…………かも」

「な、なんだと?」

「……爆弾の、位置も」

 海にぷかぷかと浮かぶ爆弾を指さして、リャッカが言う。

「じゃあ……なにか。俺たちは船ごと別の場所に移動しちまったってことか!? どうして!」

「…………」

「ふぁふ……。おはようございます。どうしたのですか。なんだか騒がしいですけど」

「シスター……ちっ」

「なぜ挨拶しただけで舌打ちされるのですか!?」

「別にシスターに思うところはないが」

「理由もなく舌打ちって、もっとひどいと思うのですけど……」

「…………おはよう」

「あ、はい。おはようございます、リャッカさん」

「ごはん……」

「ふざんけんな!」

 あまりにも鬼気迫る表情で怒鳴るコーデントに、シスターがぎょっとした。

「え、ええっと……? な、なにがあったのですか? いくらなんでもこんなにコーデントさんが怒るなんて……」

「…………消えた」

「な、なにがですか?」

「……始まりの、島?」

「ええ?」

「始まりの島が見えたと思ったら、船ごとどこかに転移したらしい。なんの嫌がらせだっ」

 コーデントはそう吐き捨てながら、海面をにらみつけた。

 思いついて、シスターは曖昧な表情を浮かべた。

「あー……あの、神官でしょうか。大幹部とか名乗っていた」

「なんだと? なんの意味があるってんだよ、この状況に。すでに攻撃されてるってことか?」

「いえ、お遊びを欲しがっているようなことを言っていたような……気のせいかもしれませんが」

「たしかに言ってた気が……ええい、どうしろってんだっ」

「それはわかりませんが……」

「…………とりあえず、ごはん」

「リャッカ!」

「…………」

「あ。ちょっと待ってください、コーデントさん」

「シスターまでごはんとか言い出すんじゃないだろうな……?」

「い、いえ……怖いですよコーデントさん……。そうではなく」

「だったらなんだ」

「向こうに見える島なのですけど……見覚えがあるような気が」

「なんだと!?」

「もぐもぐ……」

 なにやら果物を食べているらしいリャッカを無視して、コーデントは船から身を乗り出しその島を見た。

 遠くのほうに小さく見える島。木々が多く、一見して自然ばかりの無人島のようではあったが、真ん中の奥のほうに古めかしい様式の白い建築物が見える。

 コーデントは疑わしげに聞き返した。

「見覚え……あるか?」

「あの、昨日あたりに。危険感知の魔法道具に引っかかって、近寄らないようにしたはず……」

「そういえばそんなことも……。どうみても始まりの島じゃなさそうだったしな。てことはここは」

「それほど離れた場所に来てしまった、というわけではなさそうですね」

「ふむ……」

「どうします?」

「よっし。そういうことなら話は簡単だ。もう一度同じ航路をたどって、今度こそ始まりの島へたどり着くぞ!」

 それからしばし。

「……………………」

「困り、ましたね」

「……ふっ、ざけんなあぁぁぁぁああああ!?」

 またもや始まりの島を目前にして、船ごと別の場所に移されていた。

 近くにある島を見ながら、シスターが言う。

「目印の島がまたありますね。同じ場所に戻されたみたいです」

「ぬう……。なんか悪い呪いでもあるんじゃないか、あの島」

「あ、あはは……」

「…………行く?」

「そうするか」

「え? ええっ? なんで急におふたりで通じ合っているのですか!?」

「もう一回始まりの島を目指してまた戻されるのも悔しいし、実際にあの島に原因があるかもしれないだろーが」

「それはそうかもしれませんけど……うーん」

「なにか不満か。シスターは」

「いえ。コーデントさんとリャッカさん、とても仲がよいなと思いまして」

「そうか?」

「…………。なかよし」

「いえーい……」

 なんとなくハイタッチしてみたり。

 手をひっこめながら、コーデントは嘆息した。

「こんなあほなことをしてる場合じゃないだろ。始まりの島にたどり着くために、絶対にこの状況を解決しないと。だれの仕業かしらんが、待ってろよ!」

「してる場合じゃない、と思うのならしなければいいじゃありませんか……」

「シスターに疎外感を味わわせるためなら、なんだってするぞ俺は」

「な、なんでですか?」

「別に理由はないが」

「うううう……コーデントさんにきっと八つ当たりされてる……」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ