船の中
船の中。
出来あがった料理を見下ろしながら、コーデントはつぶやく。
「なにやってんだろうな、俺」
「……料理、上手だよ?」
「そりゃどうも。じゃなくて、曲がりなりにも俺たちは海賊なんだ。分かってるな?」
「……うん。とりあえず」
「そう、とりあえず。で、俺がこの海賊船の船長で、お前はその部下。それもいいな」
乗っ取った海賊船。
捕虜を除けば、彼ら二人しかいない。
「……私、部下」
こくり、とうなずく黒髪の少女。
リャッカ。
「で、うっかり漂流していた俺たちは、この船を乗っ取ってようやく食料にありついたわけだ」
「……美味しい、よ?」
「ありがとう。なんで俺が料理を作ってんだよ!?」
「……?」
「だーかーら、こういうのは部下であるお前の役目だろ」
「……料理、苦手」
「だったら覚えるなりなんなり――」
「……頑張る」
「おおう……素直じゃないか」
「野菜、とか」
「うん?」
「……斬るのは、得意」
「知ってるよ……」
なんとなく、船を乗っ取る時にでた死人について思い出す。
彼女が斬り殺した船員が大多数だったが、そのまま海に放り捨てた。
「というか、それを知ってたからこそお前を連れてきたわけだしな。感謝しろよ」
「……」
「なんで無言なんだよ」
「……考えてた」
「なにを」
「……感謝すべきか」
「とりあえず感謝しとけ」
「……うん。ありがとう。掘り出してくれて」
「どういたしまして。はぁ」
「……? どこ、いくの?」
「そろそろ島でも見えてくるんじゃないかと思ってな。外に出てくるよ」
「……行く」
「そうか……って、そんな慌てて食わなくてもいいだろ!? よくそんなに食べるよな」
「……」
「俺よか食うもんな……。昔から大食いだったのか?」
「……けぷ。それほど。同じ、くらい」
「そーかい。腹壊すなよ」
「……うん。壊さない」
外に出て。
「今日もいい天気だよな」
「まぶしい……」
「なんでぐったりしてるんだよ。それはお前なりの冗談なのか?」
「……うん」
「そうか……」
「見えた」
「なにがだ?」
「……島」
「……っ!? 本当だ! あの遠くのちっこいのがそうか」
「……おっきい、山がある。ふたっつ」
「お前、目、いいよな……」
「……町のところ、谷になってる」
「よっし。じゃあ、行ってみるか」
「……あると、いいね」
「スターズブルーの遺産か。そんな早く見つかるとは思ってないが……」