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共存する島

「なんだかなぁ……」

「…………? どう、したの?」

「こう、漠然と俺が思ってただけなんだろうが。西の海ってのは魔法も機械もない未開の地で、迷信がはびこってるだけだと考えてたんだよ」

「……うん」

「こう、なんていうか人間がのんびりと……牧歌的に過ごしていてさ」

「……うん」

「……考えれば当然なのかもしれないが、大陸と同じように、この海にある島にもさ」

「…………」

「妖精って、いるもんなんだなぁと」

 遠くの方に、ふよふよと浮いている小さな生物を見やる。

「……大陸。妖精が、いっぱい?」

「そうでもないけどな。むしろこの島ほど妖精が見られるってのも少ないと思うが……まあ、俺の通ってた学校では妖精がけっこうたむろしてたかな」

「……うん」

「こうやっていつでも騒がしく……時にはあんなふうに市場で人をからかったりいたずらしたり」

「……」

「簡単に言えばこの島は、妖精と共存する島、ってことか。平和だなー」

「………………。帰りたい、の?」

「あん? ……ま、故郷が懐かしくないって言ったら嘘にはなるけどな」

「……そう」

「そうかもな。今さら、学校のやつらに対して怒りなんて……怒りなんて……。……うがー!? くっそ、あいつら、噂話するしか能がない分際で馬鹿にしやがってっ。うがああああっ!?」

「………………」

「ふう……。ぬうう……どうしてもあいつらを許すことはできないらしい」

「……うん」

「こほん。ま、まあなんだ……とにかく始まりの島の情報を集めないとな。せっかく、新しい島にやってきたんだし」

「…………四回目」

「この島についてから、そんなに言ったっけか……」

「……。うん」

「どうしても腰を落ち着けて動く気にならないよな……シスターのあれを見てると」

「……商売、上手。だよね」

「ほら、この繊細な描き込みと筆圧を見てくださいよ。青い衣は聖なる象徴ですが、ここまでさりげなく、かつ大胆に描いて見せる作品はそうそう見られるものではありませんよ!」

「たしかに商売上手……というか、二束三文のがらくたまでぼったくって売り払ってるようにしか見えないんだが。海賊も真っ青だよなー」

「…………うん」

「黄金もなんだかんだ言いくるめて高値で売ってるし、あれか。長年のシスター生活で欲がたまってでもいたのか」

「…………違うと、思うけど」

「ん。なんでだよ」

「……元から。そういうの、好きそう」

「ほほう……リャッカの目にはそういうふうに見えるのか」

「……神の奇跡も」

「ああ……魔法を奇跡って言い張ってたのも、ちやほやされたいからだったってことか」

「うん……」

「待てよ。ってことは、シスターがついてきたのはもしかしてちやほやされなくなったからか? 最初は、残っても居心地悪そうとか言ってたが」

「…………」

「あのよく分からない魔法使いが竜神様と戦ってたところは、それなりに島民に見られてたはずだ。頑張って釈明すれば……あのシスターの舌の回り具合だと頑張らなくても、自分の責任ではないって納得させられたかもしれない」

「……どっちも、かも」

「どっちも? ちやほやされなくなるし、自分の身が危険かもしれないとも思った……ってことか」

「……うん」

「ふむ。まあシスターがついてきてくれるなら、俺たちは大助かりなわけだが」

「そう?」

「お前と違って、俺は怪我ばっかだしな」

「……」

「巨大生物では消化液、竜神様にはブレスを吐かれるし……」

「……そう」

「まあ……なんだ。とりあえず、シスターが金だけ持ってどこかに逃げないかだけ心配してようか」

「…………。そう、だね」

「ありがとうございます。それでこちらの王冠はですね……ああっ!?」

「む。シスターのほうでなにかあったのか?」

「……あれ、浮かんでる」

「なに……? あの袋かっ」

「私のお金が!」

「あーあー……あの中に稼いだ金が全部入ってるわけか」

「妖精が、持ってる」

「なんとも……仕方ない、助けに行くか」

「…………。うん」

「あ、おふたりともいいところにっ。実はですね……っ」

「……知ってる、よ?」

「一部始終見てたからな。とりあえず、さっさと売り物を片づけろ」

「は、はいっ。う、うふふふふ……」

「ど、どうしたシスター」

「あの妖精、よくも私のお金を……。人様から物を奪ったらどんな目に会うか、必ずや報いを受けさせてあげます!」

「このシスターは……自分の売り物も一応、人様から奪ったものだってこと忘れてやがるな」

「………………うん。海賊、だもんね」

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