探す旅路
「……暗いな」
「……うん」
「どこかに明かりをつける道具があったはず」
「……」
「ここはイルカの体内ってわけか……適度に水が張っていて、船が沈んでないのがなによりだが。お、ついた」
「……明るい」
「うわー、周りの壁がぜんぶぴくぴく動いてやがる。図らずもリャッカの念願がかなったわけだが」
「……。念願?」
「乗り物だったらいいのにな、みたいなこと言ってただろ。いまおれたちは、まがりなりにも巨大イルカに似たなにかの中に乗っているわけだ」
「……なるほど」
「せっかくだからもっとはしゃいだっていいんだぜ。踊りでも踊るか?」
「……。ううん」
「そうか……。ま、とにかくここから逃げ出さないとな」
「……?」
「いつまでもこのままってわけにもいかないだろ。どうにか脱出しないと。始まりの島を探さなきゃならん。それに、リャッカだってこのままじゃ、食料がなくなって困るだろ?」
「……食料」
「お前な……」
リャッカが指さしたのは、上下左右を取り囲む、壁や地面だった。つまり巨大生物の身体である。
「たしかに食べられはするのかもしれないが……。かわいいだのなんだの言ってた相手に、切り替えがはやすぎないか?」
「……ごはん、大事」
「そりゃそうだろうけどよ」
「うん」
「まあ、この生物に暴れられても困るから、それは最後の手段ってことになるか」
「………………」
「どうした?」
「……。なんでも。……人」
「人?」
「……あっちから、くる」
「おお、ほんとだ。小舟って感じだが……おーい」
「おやおやおや。急に明るくなったからなにごとかと思いましたが、まさかわたくし以外にもこの怪物に飲み込まれたかたたちがいるとは」
「あー、じゃああんたも飲み込まれたのか。まったく災難だな、おっさん」
「ええ、ええ。その通りですとも」
「俺はコーデント。で、こっちの……なんかマイペースな感じなのがリャッカ。俺たちは面白いものを求めて、航海をしてるんだ」
「ほほう、後悔を」
「ああ」
「こんな怪物に飲み込まれたら、しかたのないことでしょうな」
「あん?」
「それでは、わたくしも自己紹介をさせていただきましょうか」
「そうしていただきましょうか……リャッカもぼーっとしてる割にはちゃんと聞いてるだろうから、気にしないでやってくれ」
「おやおやおや。わたくし、アーデルと申す者です。始まりの島を探す途中、この怪物に飲まれてしまいまして」