第八話 実技訓練
あの日以来、千秋や明日華と行動を共にすることが当たり前になった智観。
二人との仲がますます深まっていったのはもちろんのこと。それがきっかけとなり、彼女はクラスにも徐々に馴染んでいくことが出来た。
朝、部屋を出たら千秋や明日華と一緒に教室へ向かう。
昼には食堂でクラスメイト達と昼食。
授業が終われば、友達の部屋にお邪魔したり、逆に自室に招待したり。
そんなささやかだが幸せな二週間を、智観は過ごした。
そしてあっと言う間に四月は終わり、風に微かだが夏の香りが感じられる五月がやってきた。
これは同時に、智観が学園に来てからおよそ一ヶ月が経過したことをも意味している。
また、今月からは魔法の授業で、待ちに待った実技訓練が始まるのである。
入学前に魔法の教育を受ける人間というのは、一部の上流階級の者や軍人の家の子供などのごく少数に過ぎない。そういう事情もあって、ごく少数の例外を除いたクラス全体に、いや、一年生全体に期待と興奮が満ち溢れていた。
それは智観とて例外ではない。
ある意味、彼女こそが最もこの日を心待ちにしていた者の一人なのだから。
智観達のクラスで実技訓練が始まったのは、五月七日木曜日の三時間目だ。
直前の休み時間から、Cクラスの面々は屋外の魔法演習場へと移動し始めていた。
智観もいつも通り、千秋と明日華の二人と一緒に演習場へと向かった。なお、場所は入学式の前日に確認してあるし、地図もそこかしこにあるので迷う心配は皆無だった。
「うわぁ……改めて見てみてもやっぱり広いですねー」
「走ったら気持ち良さそうです」
「高等魔法を使ってもびくともしないように出来てるらしいからな。それにしてもこれ程までとは……」
演習場の広さに、三者三様の感嘆の声を漏らす智観達。と、そこへ乱入してくる少女が一人。
「魔法演習場なんだから当たり前でしょ? まぁ田舎娘とその取り巻きなら知らなくても不思議じゃありませんけど?」
相変わらず智観を目の敵にしている麗奈だった。
「私達はおまけかい……と言うかお前って結構しつこいな……」
溜息混じりに呟く明日華。
麗奈の諦めの悪さにうんざりしているようだ。
それは智観と千秋も同じで、彼女達も明日華と同様、呆れ顔になっている。
「当然よ! ここで今日こそあんたに引導を渡してあげるわ、小林さん!」
一人だけ全く別の世界で盛り上がっているらしい麗奈は、そう言ってびしっと智観に人差し指を突き付け、宣戦布告する。
「あの……私に勝っても賞金も賞品も出ませんよ」
心底面倒臭そうに答える智観。
「田舎娘のあなたと違って、あたしにはプライドってものがあるのよ! ところで――」
しかしその程度で引き下がる麗奈ではなかった。もしそうなら、とうの昔に智観への対抗心など失っていることだろう。
「ほっとけ、相手にするな」
「そうです。馬鹿が感染りますよ」
話していてはキリが無いと思った明日華達は、智観を連れてその場を離れ、そのまま他のクラスメイト達が固まっているところに混じっていく。
一方、一人取り残された麗奈は、聴衆が不在なことにも気付かずに薀蓄を繰り広げていた。
「あんた達はご存知? ここの地面はマギアフェルムでコーティングされてるってこと。この前あたしが全力でフレアエクスプロージョンをお見舞いしても傷一つ……って聞きなさいよ!!」
しかし、そんな彼女の自慢話も心の叫びも、クラスメイト達と談笑している智観の耳には決して届くことはなかった。
そうしているうちに始業のチャイムが鳴り、教師の蔭山がやってきて、授業が始まった。
「皆、ブレスレットは各一種類ずつ行き渡りましたか?」
授業が始まってまず始めに行われたのは、用具の説明と装着であった。
今日の授業では二種類のブレスレット――一方には『APMF』という文字が、もう一方には『1』という数字が刻まれている――を使用する規則になっている。
智観は配られたそれらを、前者は右手首に、後者は左手首に装着する。
クラスメイト達も左右の違いはあれど、皆同様にしているようだ。
「着けたら必ずスイッチを入れて下さい。命に関る事故にも繋がりますから、絶対に忘れないように!」
蔭山は念入りにそう説明する。当然、これにはしっかりとした理由がある。
その理由は既に智観達も、これまでの授業で少しばかりだが学んできている。
今、彼女達が身に着けたブレスレットの片方。APMFと刻まれた方は、耐物理・魔法フィールドを発生させる装置なのだ。
これは低質量の飛翔体や魔法から身を守ってくれる優れものである。特に耐物理フィールドは大戦前に開発されたものであり、それまでの戦いで主流だった銃火器類を一気に旧式化させたということからも、その強力さが伺い知れるだろう。
魔法が主流となった神暦初期からは、更に耐魔法フィールドまでが追加され、各国の軍隊や警察はもちろん、旅人なども装備するようになった。
ちなみにAPMFというのは共通語で耐物理・魔法フィールドを現す言葉の頭文字を取ったものらしいが、智観はそこまでは覚えていなかった。
そう言えば、と彼女にはふと思い当たる節があった。
母の友恵は戦いに赴く際、必ずペンダントを首に掛けていた記憶がある。
思い返してみれば、あれも耐物理・魔法フィールド発生装置だったのかもしれない。
なお、余談になるが、もう一つのブレスレットは一年生が使っても安全とされるレベルに魔法の出力を制限するものらしい。
「でも本当にこんなもので防げるんでしょうかね?」
とは言え、まだ智観はブレスレットの効果に半信半疑だ。
「じゃあちょっと試してみる?」
そんな彼女に一つの提案をしたのは、クラスメイトの一人だ。
「何かいい案があるの、愛海ちゃん?」
「うん。これで試してみようかなと」
愛海という名のクラスメイトは、ポケットから一つの野球ボール取り出す。
彼女は野球部のメンバーでもあり、ボールの感覚を忘れない為に常に一球持ち歩いているらしい。
彼女の提案とは、フィールドを展開した智観に向かってボールを投げ、それが弾かれるかを確かめようということだ。
智観がこの提案に賛成すると、愛海は待ってましたと言わんばかりに、オーバーアクション気味に振りかぶって、全力で智観めがけてボールを投げつける。
「よーし、行くよーっ!」
「きゃっ!」
投球の瞬間、智観は思わず目を瞑ってしまった。
しかし、いつまで経っても衝撃が来ない。
恐る恐る目を開いてみると、ボールが数十センチ手前の地面の上で跳ねて転がっている光景が目に入った。
「おぉー! 凄い!」
愛海や近くにいた何人かのクラスメイト達は、目を丸くして感嘆の声を上げている。
「これは便利ですねー」
ボールが弾かれる決定的瞬間こそ見ていなかったものの、智観も気持ちは同じだ。
それに加えて魔法まで防いでくれるとなると、これ程に心強いものは無い。
「でもあまり質量の大きい物体とか直接的な攻撃は完全に防げないから過信はするなよ」
感心している智観達に釘を刺したのは、知っているかのような話しぶりの明日華だった。
「明日華ちゃん、使ったことあるんですか?」
「まぁ、剣の稽古をつけてもらう時に少しな」
「なるほど」
直接的な攻撃は止められないということは、つまり剣による斬撃などは(多少軽減されるとは言え)有効ということか。
このことは覚えておく必要がありそうだ、と智観は思った。
彼女は頭の中で何が有効で何が無効なのかを整理しようとする。
そうして思考に意識を割き、無防備になった彼女の体に。
「ということは、これ着けててもこういうことはできるんですね!」
千秋の抱き付き攻撃が炸裂した。
彼女は智観の体に自分の体を密着させた状態で、智観の顔に頬擦りをしてくる。
クラスメイト達は「熱々ね」だの何だのと、口々に囃し立てている。
もっとも、当の智観としてはそんなことよりも千秋の眼鏡が顔に当たって痛いことの方が問題なのだが。
「ちょっと……眼鏡は外し――」
千秋の頬擦りの合間を縫って何とかそこまでを言葉にしたところで、突然智観は解放されることになった。
「止めないか、千秋。智観が迷惑してるだろ」
明日華が千秋を引き剥がしたのであった。
千秋は襟元を明日華に掴まれたまま何か不平を言っていたが、彼女に諌められて渋々ながらも諦めたようだ。
眼鏡攻撃から解放された智観は、楽になったはずなのに、なぜだか寂しいような名残惜しいような感情が湧き出して止まらないでいた。
(もう少しあのままでいた方が良かったな)
体に微かに残る千秋の温もりを手掛かりに、抱き着かれていた瞬間を思い出す智観。
そんな彼女を現実に引き戻したのは蔭山の声だった。
「こら、そこ! ちゃんと先生の話を聞きなさい!」
そう。いつものように騒いでしまっていたが、今は一応授業時間内なのである。
魔法の演習は、広い演習場の一角だけを使って行われた。
まだ一年生の始めともなれば、あまり広いスペースを使用しないで済む為だ。
いや、実際はそれよりも全員に教師の目が行き届くようにするという意味合いの方が大きいかもしれない。
現在は訓練用の標的に対してのみ魔法の使用が許されているのだが、教師の目が無いと(特に男子のクラスにおいて)教師に無断で生徒同士での対戦を始めたりする者が後を絶たないからだ。
ともかく、蔭山の目の届く範囲で、Cクラスの生徒達は標的に向けて各々これまでの授業で習った魔法を唱える練習をしている。
「破壊を司る炎の神よ。我が眼前の敵を焼き尽くせ!」
今もまた一人の女子生徒が習った通りに意識を集中させて呪文を唱える。
「ファイアボール!」
そして掌を標的に向け、魔法の名前を力の限り叫ぶ。
すると彼女の掌からは拳大の火球が撃ち出される。
燃え盛る火球は彼女の意思の通りに標的に命中し、爆発。火の粉を散らして風に消えた。
「やった! あたしにも出来たよ!」
「葵ちゃん凄ーい!」
炎の基本魔法の発動に成功した少女は、友達と手を合わせて成功を祝っている。
この調子で、これまでに魔法を習った経験がある少数の者はもちろんのこと、入学後に初めて魔力を目覚めさせられた者達も次々と魔法の発動を成功させていた。
ただ一人、智観を除いては、だが。
「破壊を司る炎の神よ。我が眼前の敵を焼き尽くせ! ファイアボール!」
先程から智観は何度と無くこの呪文を唱えていた。授業で教わったものと一言一句の違いも無い呪文だ。
意識を集中させ、頭の中で標的が燃え上がるイメージを描くことも忘れていない。
それにも関らず、彼女の掌からは火球どころか火の粉でさえも出る気配が無い。
水や雷、風などの基本魔法の呪文も唱えてみるが、結果は同じだ。
彼女の内にあるはずの力は、少したりとも彼女の意思に応えてはくれない。
「妙ですね。呪文は間違ってないし、小林さんの魔力は出力、容量ともに平均以上の……っと、これ以上言うのは規則に反しますね」
訓練を監督している蔭山も怪訝な顔をしている。
「智観、そんなに力まなくても良いんだぞ?」
「そうですよ。ほら、力を抜いて!」
「は、はい」
明日華達も心配そうに智観の元にやってきた。
なお、彼女達は努力ゆえか才能ゆえか、特に苦も無く魔法を発動させることに成功していた。
彼女達に言われたように力を抜こうと、一旦深呼吸をする智観。
大きく息を吸っては吐き、肺を新鮮な空気で満たす。同時に思考も澄んだ空気のようにクリアになった感覚が智観には感じられた。
それから改めて意識を集中させて呪文の詠唱に入る。
明日華達や、他のクラスメイトの何人かも手と口を止め、そんな智観の姿に見入っている。
だが結果は先程までと何も変わらなかった。
「私、才能無いんでしょうかね……」
梨恵のような優秀な魔道士になる為に入学したのに、最初の詠唱からしてこの有様である。
がっくりと項垂れ、自身を喪失する智観。
「まぁ、何と言うか……気にするな」
「そういうこともありますよ」
彼女の詠唱する姿を見ていたクラスメイト達は、励ましの言葉を掛けてくれる者、興味を無くして自分の訓練に戻る者など様々だった。
中でも特異な反応を見せたのは麗奈だ。彼女の顔には憤怒の感情が満ち満ちている。
彼女は智観の側までやってくると、声を荒げて言った。
「あんた頭は回る癖に、実技は全然駄目だったの!? あんたをライバル視してたあたしの一ヶ月は一体何だったのよ!」
「いや……そんな勝手にライバル視されて勝手に怒られても」
智観にしてみれば完全な逆恨みだ。いい迷惑である。
真面目に相手をするのも馬鹿らしいので適当にあしらっておくと、麗奈は踵を反して元いた場所へと戻っていった。
「あんたをライバル視したあたしが馬鹿でしたわ。せいぜいお友達に稽古でもつけてもらうことね!」
去り際にそんな捨て台詞を残して。
戻った麗奈は一人で訓練を再開していた。
彼女が力強くも美しい声で紡ぐのは、智観のまだ知らぬ呪文。文中に『氷の神』や『凍てつかせよ』といったフレーズがあることから、氷に関係した魔法であることだけは辛うじて分かった。
呪文の詠唱を終えた麗奈は右手を頭上高くに掲げ、魔法の名を叫ぶ。
「ダイヤモンドダスト!」
それと同時に細かな氷の欠片を含んだ吹雪が巻き起こり、標的を周囲の地面もろとも、あらゆる方向から切り付けた。
魔法の効果が終わっても彼女の周囲には微小な氷の欠片が舞っており、それらが太陽の光を受けて輝いている光景は幻想的でさえあった。
「あれは確か氷の上級魔法、ダイヤモンドダスト……粗こそあるけどあれは……」
これまでに多くの生徒を送り出してきた教師の蔭山から見れば、麗奈の唱えたダイヤモンドダストは、完全なものとは到底言えなかった。
だが、それでもなお人を魅了させるものが、麗奈の魔法にはあった。
「今の見た!?」
「見た見た! 上級魔法だって!」
「わたしもあんな魔法が使えるようになりたいなー」
その様子を見ていたクラスメイト達は、うっとりとした目をして麗奈を見つめている。
智観も最初のうちこそ無視を決め込もうとしていたのだが、気が付いてみれば完全に彼女に目を奪われてしまっていた。
人間としては麗奈のことを尊敬出来そうには無かったが、彼女の魔法の腕は間違い無く本物だ。悔しいことに。
「いつか……あなたに勝ってみせます!」
悔しさを噛み締めながら、智観はそう零した。
皮肉にも麗奈が一方的なライバル宣言を撤回した直後に、逆に智観が麗奈をライバル視する結果になってしまった。あるいは麗奈の手の内で踊らされているだけなのかもしれないが。
だが智観にはそんな些細なことは、どちらでも良かった。
彼女はただ純粋に、麗奈に勝ちたいだけなのだ。
その日の夜七時頃、智観は机の前に座ってずっと考え事をしていた。
魔法の授業中に決意を固めたまでは良かったものの、智観にはどうすれば今の状況を改善できるのか、皆目見当が付かなかったのだ。
基本魔法すら使えないようでは、麗奈に勝つどころか年度末の進級試験も危うい。
一年から二年への進級試験はそれ程難しいものではなく、合格率も八割から九割程度だと聞いている。これは以後の進級試験の合格率が軒並み五割前後であるらしいこと考慮すると、圧倒的に広き門だ。
とは言え、一割から二割ほどの落第者が出ているのもまた事実だ。このままでは智観はその一割から二割の中に入ってしまう可能性が高い。
(何とかしないと……でもどうすれば……)
とりあえず教科書を読み漁ってみたが、目ぼしいヒントは得られなかった。
愕然とした彼女は椅子の背もたれに体を預けて天井と壁の交わるところに目を向けてみる。
そうしていると麗奈の言葉が蘇ってきて、また悔しさが込み上げてきた。と、そこで智観は重大なことに気付いた。
「そうだ! 忘れてた!」
『せいぜいお友達に稽古でもつけてもらうことね!』
麗奈が最後に言い放ったこの言葉の中にこそ、ヒントが隠されていたのだ。
要は友達――千秋や明日華が適任だろう――に教えてもらえばいいだけの簡単なことなのだ。
もちろん千秋達が了承してくれればの話だが。
そうと分かると智観は寮の階段を駆け下りて、千秋の部屋へと向かった。
部屋には千秋の他に、好都合なことに明日華もいた。
「千秋ちゃん、明日華ちゃん、お願いです! 魔法教えて下さい!」
彼女達に向かって、智観は深々と頭を下げた。
「いや、いきなりそう言われても、何が何だか……」
「最初から説明して下さい」
二人は突然のことに困惑するばかりだ。
「あ、そうでした。ごめんね」
そこで改めて智観は二人に事情を説明することにした。
千秋達もあの場にいたので、簡単に説明しただけで事情を理解してもらえたのは幸いだった。
「血相変えて飛び込んで来るから何事かと思ったらそんなことですか。私はもちろんオッケーです」
千秋は笑って了承してくれた。
智観に稽古をつけるのがそんなに楽しみなのだろうか。
一方、明日華は腕を組んで難しい顔をしている。
「いいけど、一つだけ条件がある」
神妙な顔付きで切り出す明日華。
「な、なんですか?」
智観は思わず息を呑んで、続く言葉を待つ。と、明日華は突然、目を潤ませて智観に泣き付いてきた。
「お願いだから、この前の数学の宿題見せてくれー! 千秋が自分でやれって言って見せてくれないんだよー!」
あまりにも突然の態度の変化に、智観は面食らってしまった。
だが条件そのものは、彼女にとってはお安い御用だ。その宿題なら既に当日の放課後に解き終わっている。
教えてもらってばかりでは悪いという気持ちもあったので、迷うこと無くこの条件を飲む。
「それくらいなら別にいくらでもオッケーですよ」
ところがそれに猛抗議をしてきたのは千秋だった。
「あー、駄目です! 宿題ってのは自分でやらないと身に着かないんですよ!! 大体、明日華は中学校であの問題やったでしょ!!」
「智観が良いって言ってるんだから良いだろ!」
「駄目です!」
とうとう二人は、いつかの本屋の時のように言い合いを始めてしまった。
喧嘩するほど仲が良いとはよく言うものだが、智観にとっては居心地が良いとは言えない空気だ。
何とか止めさせようと思って、彼女は恐る恐る妥協案を持ちかけてみる。
「あのー……じゃあ妥協案として、解き方だけ教えると言うのは……」
二人はしばらく口を止めて、考え込んだ後、答えた。
「まぁ、それなら良いでしょうかね」
「残念だが仕方が無いな……」
渋々だが、二人ともこの妥協案を飲んでくれた。
言い合いが終結し、内心で安堵の溜息を吐く智観。
それから明るい表情になって、改めて礼をした。
「それでは、よろしくお願いします!」
「あぁ。じゃあ明日の放課後、演習場に集合な」
「お弁当作って持って行きます」
何はともあれ、魔法の稽古をつけてもらう約束は出来た。
自分が千秋と明日華という良い友達を持てたことに、智観は感謝した。