ココロノ季節
いつもより寒い朝、愛犬に起こされてふと窓の外を見た。
「雪だ。」
九州南部にあるこの地域では年に1・2回降るか降らないかの貴重な雪だ。しかし、少年はシンシンと降る雪を見ても無表情で自分の部屋を後にした。
年は20代前半だろうか。言われて見れば10代、30代にも見える。いわゆる年齢不詳と言っても良いだろう。家には彼以外誰もいない。
玄関の靴の数で家族と住んでるのが分かる。
犬にエサをやり、ダッフルコートをはおり家を出た。スーツや作業着も着ず、何も持たずフラりと雪を頭に積もらせながら歩いて行った。
少年が入っていったのはとある病院。病院と言っても、独特の雰囲気のあるいわゆるメンタルな部分の為にある場所である。
受け付けに行き、
「面会…。」
と呟いた。
「おはようございます。こちらにサインお願いします。」
事務的なお姉さんの対応。慣れてるかの様にサインした。
「少々お待ち下さい。」
ガランとした空間だが声はする。先生に診察を受けてる人はいるようだ。
「お待たせしました。こちらへどうぞ。」
泣き叫ぶ声。ブツブツとお経を読むかのような音。ドンドンと壁を叩く騒音。少年は少し顔を歪めていた。
「では、面会は15分ですので。」
何の音もしない部屋を少年はノックしてから開いた。
うつろな目。まるで人形のような女の子が部屋の隅に膝を丸めて座っていた。少年は何も言わずイスに座った。
雪が降る。
窓から見えた。
ポトっ。少年のジーンズに水滴が落ちた。
「雪…キレイだ。お前と見る雪が一番好きなんだ。」
「……。」
少女には届いていない。
コンコン
「お時間ですよ。」
「はい。」
15分は少年にとって短かすぎた。
『君がいればいい』なんて嘘だ。相手を求め感じ、助け合う。それが人というモノだろう。
僕が毎日会いに行く彼女は今“心の世界”に閉じ込もってしまっている。いくらその扉の鍵を見つけて開いたても鍵は数えきれないほどあって、もしも1つの扉を開けても“彼女”に会えるか分からないのが今の現状。
鍵は彼女の心のキズの上にかかってる。いくら探しても分からない。僕が何をした?
先生はこう言う。
「あなたのせいではありませんよ。ただ…今はタイミングが悪いだけです。」
タイミング?
そうか。遠回しに「オマエノセイダ」と言ってるんだ。
僕が崩れる。
君と僕って結局何だったのか。心が壊れるまで僕に言わなかったのはどうしてだろう。
……
(ここから彼女のココロの中)
痛い。ダルい。疲れた。ある日突然全てがどうでもよくなった。人に話しかけられても「うん。」としか返事が出来ない。
会話って面倒くさいでしょ。
そして周りは私から離れていった。楽だ。何で今までこうしなかったんだろう。
「おい!どうしたんだよ!」
彼は怒っていた。でももうどうでもいい。
私の目には何も映らないよ。
あなたも。
目が合ってもバカバカしい。年下に馬鹿にされても腹はたつけど無視。あぁ。何食べても味覚はゼロ。
だけど、自分に何かが芽生えたの。人生どうでもいい。(私の事なんてほっといて)
シニタイ(勇気はないのに次の日消えていたいと願う毎日)。
私って何だっけ。
……
(彼に戻ります)
君が心を失って僕も無感情になった。そりゃ友達や家族の前では“普通”のフリするけど。美しい景色が色褪せた。君が好きなモノが嫌いになった。
本当は君に会いに行きたくないと叫ぶ心。
友人は
「ほっとけよ。最低な奴じゃん。」
って言う。僕はそれに対して何も言わない。言えないんだ。
僕は君の何が好きだったんだろう。
明るい笑顔
今はもう見れない。
可愛いらしい声
何も話してくれない。
僕しか知らない事も今は、今の君を僕は何も知らない。僕はもう何も分からない。
3年の月日が流れた。だけど、僕は君に話しかけるよ。君の声で何があったか知りたいから。
君の笑顔を見る為に。
【End】
読んで頂きありがとうございました。こんな話は初です。でも、実際に心が壊れたらと真剣に考えながら書きました。
短編もイイですね。
こんな暗い時もある時も乗り越えていけたらと思います!最後まで読んで頂いた方々ありがとうございました。