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ネコでも分かる経済の話  作者: 駒田 朗(のらねこま)
第一期 おカネに関わる初歩的なお話
6/25

5)民間銀行はどうやって預金を発行するのか

(じいちゃん)


 今日は民間銀行によるおカネの発行を規制している「準備預金制度」について説明するのじゃ。


 昔の銀行は、おカネを借りたい人に銀行券を発行して貸し出しているという話をした。しかし、銀行券は発行しようと思えば無限に発行できてしまう。それは今日の民間企業でも同じじゃ。そこで、民間銀行が発行するおカネ、すなわち預金の量を制限するための仕組みが作られた。それが「準備預金制度」というルールなのじゃ。


 ところで、昔の銀行は金貨を預かって銀行券を発行した。では、今の民間銀行は、何を預かって、何を発行していると思う?


(ねこ)


 ええと、現金を預かって、預金を発行しているのにゃ。


(じいちゃん)


 その通り。昔の金貨に該当するのが現金、つまり日銀が発行する日銀券(正確には日銀当座預金も含まれるが、ややこしいので今は省略する)じゃ。そして民間銀行が現金を預かると、銀行の預金通帳に預金が発生する。つまり民間銀行の発行するおカネは預金じゃ。


 なぜ預金がおカネなのかといえば、わざわざ現金を引き出さなくとも、預金をやり取りするだけで買い物や取引ができる。だから預金はおカネなのじゃよ。そして、預金のことを「信用通貨」と呼ぶこともある。


 そして、昔の銀行と同じように、今の民間銀行もおカネを発行し、借りたい人に貸し出している。つまり預金を発行して、借りたい人の預金口座に振り込むことで貸し出しをしておる。


(ねこ)


 でも、この仕組みのままだと、借りたい人がいる限り、民間銀行は預金を無限に発行できてしまうにゃ。


(じいちゃん)


 そこで、準備預金制度の出番じゃ。それを理解するうえで、まず知っておくべきことは、すべての民間銀行は、日銀に預金口座を持っているということじゃ。それを日銀当座預金口座と呼ぶ。日銀に当座預金口座を持つことが許されておるのは、民間銀行と政府だけじゃ。一般国民や企業は許されていない。


(ねこ)


 民間銀行は特別なんだにゃ。


(じいちゃん)


 さて、銀行は手元に現金を持っておる。ここではわかりやすいように、仮に一万円の銀行券を100枚、すなわち100万円の現金を持っているものとする。そして、銀行が誰かに100万円のおカネを貸す場合、この銀行券100万円を貸すわけではない。


 銀行は新たに預金を100万円発行し、貸し出す相手の預金口座に100万円を振り込む。同時に、銀行の帳簿には、貸し出した分の預金100万円が記録される。これで銀行は100万円を貸し出したことになる。これが信用創造と呼ばれる仕組みだ。借りる側の預金通帳と銀行の帳簿に100万円を記載するだけなので、簡単に貸し出しできる。これを無制限に繰り返すなら、預金は無限に増えてしまう。


 そこで、準備預金制度では、銀行の帳簿に記載されている「預金の金額」に合わせて、一定の割合の現金を日銀当座預金口座に預金しなければならない決まりになっている。例えば100万円を貸し出すことで、銀行の帳簿上で100万円の預金が増えたわけだから、その1%である1万円の銀行券を日銀に預金する。すると、手元には99万円が残る。


 つまり、100万円の預金を発行して貸し出すと、その1%である1万円の現金が手元から減って、日銀当座預金に預金される(なお、預金するパーセントは法律で決める)。それを100回繰り返すと、手元の現金はゼロになる。そうなると、それ以上はおカネを貸すことができなくなるんじゃ。つまり、おカネの発行に制限がかかる。


 かなり大雑把な説明じゃが、これが準備預金制度の基本的な仕組みじゃ。


(ねこ)


 ぐわ。いきなり難しくなったにゃ。つまり、銀行が誰かに預金を貸し出すには現金が必要で、貸し出した預金の金額に応じて一定割合の現金を日銀に預けなきゃならない。そして、手元の現金をみんな日銀に預け入れてしまったら、もうそれ以上は預金を発行して貸し出すことはできなくなるんだにゃ。


(じいちゃん)


 そういうことじゃ。じゃから、銀行は集めたおカネを貸しているのではない。集めたおカネ(現金)を日銀に預けることで、預金を発行し、それを貸出しておるのじゃよ。


(ねこ)


 う~ん。でも100万円を100回貸すと、全部で一億円になるにゃ。現金100万円が一億円に膨らむとなると、それでもおカネは増えすぎじゃないのかにゃ。


(じいちゃん)


 そうじゃのう。じゃから今説明した方法以外にも、日銀が様々な方法を用いて民間銀行の発行できる預金の量をコントロールしておる。それが日銀の金融政策と呼ばれるものなのじゃよ。それは、もう少しややこしくなるので、また今度の機会に説明しようかのう。



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