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ネコでも分かる経済の話  作者: 駒田 朗(のらねこま)
第一期 おカネに関わる初歩的なお話
24/25

23)アベノミクスは失敗だったのか

(じいちゃん)


 アベノミクスは失敗だった。そんな記事がマスコミに散見される。一方で、アベノミクスは一定の成果を収めたとの主張もある。主張が対立している。これは経済論争というより、政治的な争いという側面が強い。


 経済論や経済学は、学問という側面よりも政治的な側面が極めて強い。学問的、中立的な論争という側面よりも、政治的な権力闘争、あるいは利益団体のぶつかり合いが時として経済論や経済学の論争に大きな影響を与えるのじゃ。


 誤解をおそれずに言うなら、安倍元首相に反対だから、安倍首相のやること成すことすべてに反対しなければならない。坊主憎けりゃ袈裟まで憎いという匂いがする、とも言える。


(ねこ)


 経済論争は利害のぶつかり合いなんだにゃ。


(じいちゃん)


 そうなんじゃ、だから、そうした側面があることを理解しておかないと、勢力争いに振り回されてバカを見ることにもなりかねない。


 まあ、それはさておき、アベノミクス全体を見渡してみた場合、アベノミクスは失敗したと言わざるを得ないだろう。なぜなら、アベノミクスは「脱デフレと日本経済の復活」を目標としていたからじゃ。政権交代までに目標を達成できなかったという点では、明らかに失敗と言える。


 しかし、すべてがまったく無意味だったわけではない。脱デフレという目標も、消費税増税までは順調だった。アベノミクスにまったく効果がなかったと言うのは間違いじゃ。複数の政策ミックスであるアベノミクスは、消費税の増税政策まで含めて評価されるべきものなので、アベノミクスは失敗したと評価されて当然と言える。


 だからと言って、アベノミクスをすべきではなかったのか、と言えば、必ずしもそうとは言えない。最初からアベノミクスの政策を完全否定して、その当時、反対のことを推進していたら、もっと悲惨なことになっていた恐れもあるからだ。


(ねこ)


 結局は結果論で語るだけなんだにゃ。でも、どうしてアベノミクスは失敗したのかにゃ。


(じいちゃん)


 アベノミクスは三本の矢と言われていた。


 しかし、三本の矢の中で最も大きかったのは第一の矢の「金融緩和政策」であって、残りの「財政出動」や「構造改革」は、金融緩和ほど熱心に行われなかった。じゃから、アベノミクスからは主に、金融緩和政策の効果について判断できると思う。


 わしの感想としては、消費税増税までは脱デフレが順調に推移していたことから金融緩和政策には効果があったと思う。じゃが、事前に言われているほど効果が高いわけではなかった。だから、消費税を増税しただけで、あっという間に景気が腰折れし、デフレに逆戻りしてしまったのじゃ。


 金融緩和を推進してきた「リフレ派」と呼ばれる人たちは、当初、「財政出動などやらずとも、金融緩和だけで十分」とドヤ顔で言っていた。しかし消費税増税ですっかり景気が腰折れしてしまったため、「財政出動も必要だ」と言い出した。まあ、世の中はそんなもんじゃ。


 じゃが、財政出動は増加しなかった。なぜなら財務省からの猛烈な「財政再建」の圧力があったからじゃ。そして経済が回復しないまま、やがて新型コロナによる経済の混乱へ突入することになった。


(ねこ)


 そうか、金融緩和政策に一定の効果はあったけど、効果があまりにも弱すぎて消費税増税に耐えられず、脱デフレと景気回復に失敗したんだにゃ。しかも財務省も反対で財政出動を増やすこともなく、そのままズルズルと行った。


(じいちゃん)


 実際、脱デフレに最も効果があるのは財政出動じゃ。それはなぜか?


 金融緩和政策の場合は、民間銀行の貸出金利を下げることで企業への貸し出しを増やし(借金を増やし)、世の中のおカネを増やし、おカネを回そうとする政策じゃ。じゃが、これは企業が銀行からおカネを借りないことには何も始まらない。景気が悪い時におカネを借りる企業は少ない。いわば「間接的な方法」じゃ。


 一方、財政政策は政府が国債を発行して行うことができる。政府が銀行からおカネを借りるわけじゃ。政府は企業と異なり、景気が悪くても政策としておカネを借りることができる。だから、確実に世の中のおカネの量を増やし、おカネを回すことができる。いわば「直接的な方法」じゃ。政府・日銀が行う政策としては、当然ながら直接的な方法の方が効果は高い。


 もちろん、この両者にはそれ以外にも経済効果に違いはあるのじゃが、ここでは省略する。


(ねこ)


 じゃあ、なんで財政出動をしなかったのかにゃ。


(じいちゃん)


 それは、財務省の至上主義ともいえる「均衡財政」の考え方にあるのじゃ。この考え方に、もはや意味がないことはすでに話してきたが、財務省を中心とする官僚や経済学者などのあいだには、いまだに「均衡財政が絶対である」との思い込みが強い。だから、国債の発行を減らし、社会保障や年金のような財政支出の増加を押さえ、何かに付けて増税しようとするのじゃ。


(ねこ)


 でも、本当に財政出動には効果があるのかにゃ。


(じいちゃん)


 皮肉にも、コロナ危機がそのことを証明することになったと考えられる。コロナ危機に伴う経済の混乱を回避するため、日本政府はそれまでとは比較にならないほど大規模な財政出動を行った。その金額は最大で前年度の1.4倍に達した。


 こうした大規模な財政出動が数年続いたが、最近(2023~2024年ごろ)になって、景気が徐々に回復し始めた。デフレ脱却へ向けて賃金の上昇も始まった。これはどういうことじゃろうか?これが、大規模な財政出動によって世の中におカネが供給され、景気を刺激していると考えることが妥当じゃろう。他に目立った要因はないのだから。


(ねこ)


 確かにそうだにゃ。金融緩和はコロナ危機前から全開だったけど、デフレは解消しなかったにゃ。ところが、コロナ危機で前代未聞の規模の財政出動が行われたら、デフレが解消し始めたのですにゃ。


(じいちゃん)


 こんな程度のことは、ちょっと考えれば素人でもわかりそうなものじゃが、どこの新聞もテレビも絶対このことに触れようとしない。その一方で「コロナ危機対応のために財政出動を増やしたために、国債がますます増えて大変だ」という財政危機のニュースは大量に出回っている。


 「コロナ危機の大規模財政出動で、景気が回復した」なんて書くと、何か都合の悪いことでもあるのじゃろう。


(ねこ)


 アベノミクスの副作用はあるのかにゃ。


(じいちゃん)


 財政出動をケチって金融緩和に大きく依存した結果、資産バブルが膨らみ始めた。現代の金融システムは、バブルを引き起こすと説明してきたとおりじゃ。脱デフレは進まないが、アベノミクス以後、株価は大きく上昇した。


 じゃが、歴史上、バブルは必ず崩壊し、経済の大混乱を引き起こしてきた。そして驚くべきことに、世界大恐慌後の対応を除き、日本政府・日銀は近年ことごとくバブルの後処理に失敗し、そのたびに日本経済をダメにしてきた。


 それが再び繰り返されるのではないかと、ワシはとても心配しておるのじゃよ。


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― 新着の感想 ―
[一言]  リフレ派の失敗の根本、それは自分達の原理原則に対する意思の強固さの差異でしょうね。それは破綻論が学術的に正しいとかでは無く、単に野蛮に文明が屈しただけの話なんだけど、リフレ派の連中は敗戦を…
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