表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/288

90話 黄昏の隠形

翁面の1人が初めて襲ってきました。

短いです。

太陽が地平線に沈みかかり、世界を赤く染めている。

光と闇が交わる、曖昧な境界――黄昏時である。


サギリの目が細まった。

詰所の裏手は、人目に付きにくいところにある小さな空き地だった。草がまばらに生えていて、ところどころに木の箱が置かれている。

その1つに座り、おやつのおにぎりを食べていたサギリは、ご飯粒が喉にひっかかってゲホゲホとせき込んだ。


「だいじょうぶですか?」

1人の濃い茶色の忍服を着た若者が声をかけてきた。


「だ、だいじょう…ゲホッ」

「背中さすりますよ」

そばかすがある、まだ幼さが残る黒髪黒瞳の若者は、先ほどの訓練で2組の最後まで立っていた人物だ。

笑顔を浮かべながら若者が後ろにまわる。


その手には苦無が握られていた。


気配を消してそばにいたケサギが声を出した。

「やめておけ」

苦無を持つ右手首を、ケサギが握った。

だが、その手首はまるで煙のように本体ごと消える。

「幻影?!」

「えっ?なになに?」


サギリが慌てる。その体をムクロが抱きかかえ、後方に跳ぶ。宙に浮いた苦無がサギリがいた場所を斬る。空を斬った苦無が溶けるように消える。


ケサギとムクロが目を潜める。

見えない敵か……。


サギリを抱えたムクロの前に、ケサギは両刀を抜いて構える。

右から苦無を持った若者がいきなり現れ、切りかかってくる。

その胴を忍刀で薙ぎ払うが、感触がない。

苦無だけがケサギの右の二の腕を掠った。

忍服が切れ、下から赤い筋となって血が流れる。


「ちっ」

「毒は?」

「ない」

「上」

姿を現したヒカゲの声に反応し、ケサギが頭の上で両手で忍刀を交差して苦無を受け止める。

恐ろしい力だ。苦無は、フッと消えた。


ヒカゲも左右の忍刀を抜き、サギリの前に立つ。

「苦無だけが……実体……」

「そうか。やっかいだな」

「何これえー?僕、襲われてるの?」

「そうだ、おとなしく抱っこされててくれ」

「はい!おねがいします!むぐむぐ」

サギリは左手でおにぎりを食べながら右手をムクロの背中に回しぎゅっと抱きついた。


「本体が斬れないとなるとどうしたらいいんだろう?」

「はてさて」

「困る……」


「マト!やめな!!!」

サヤが到着した。

何もない空間なのに、なぜか動揺が伝わってくる。


「月牙」

サカキの声。右手に来た大太刀を左腰に構え、腰を落とし目を閉じる。


そして――


ザン!!


神速で空間を斬る。

居合である。


「ぎゃああああああああ」

耳を覆いたくなるような悲鳴が聞こえた。


一同が目を見張る。

空中に面が現れた。


「「翁面?!」」


横にまっぷたつになった翁面がコトリ、と地面に落ちる。

続いて苦無がカランと転がる。


「サギリの言葉じゃないけど……」

「「何これえーー!?」」

全員同じ言葉が出た。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「すごい悲鳴が聞こえたが?!」

詰所の忍者たちが駆けつけてくる気配がする。裏手の引き戸を閉めてサカキが応答する。


「だいじょうぶだ、拷問訓練の模範演技の声だ。つい力が入ってな、驚かせてすまん」

「……そうでしたか、承知しました」

複数の足音が去っていく。サカキの機転に、ムクロ、ケサギ、ヒカゲが親指を立てる。


サギリだけがまだムクロに抱っこされたまま「え?え?」と訳がわかっていなかった。

おにぎりは完食している。


「この面、触ると危ないよな」

「どうしよう、このままにしておけないし」

「サギリ、お前、実は大物だな?この騒動の中、おにぎり全部食ってやがる」

「えっ、そんなことないと思うけど……」


「さぎりっちーー無事でよかった……」

サヤが泣きそうになっている。


「「こいつも人の子だったんだな」」

と夜香上忍たちは失礼なことを思った。

サヤは女性でありながら白露忍軍を統率する力量と冷酷な判断力は周囲に恐れられていた。


「なんだかよくわからないけど、無事です。ご心配をおかけして……」

「あっ、面が!」


翁面がぼろぼろと崩れていく。

まるで一気に数百年の月日が流れたように。

「「消えた……」」


「サヤさまー!!どこにおられます?」

白露の者がバタバタと走っている。


「ここよ!どうした?」

「マトが急に倒れました!」


今度はサギリも含めて全員が顔を見合わせた。

ちなみに、サキリはまだ抱っこされている。

翁面の攻撃は目に見えない、やっかいなものでした。

次話 91話 願いを叶える条件は は明日更新予定です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ