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72話 ヒムロ先生の忍者講座と虹色黒魔導士

いろんな職種の人たちが集まって忍者についての講習会をします。

ゲーミング黒魔導士が誕生しました。

――コテージ管理棟:大会議室――


「ヒムロ先生の、忍者講座はっじまるよー!!今日のテーマは『教えて!みんなのヒ☆ミ☆ツ!?』(勝手に改変)でーす!」

ルゥがパチパチと手を叩いて拍手を強要する。


今回の衣装は前回の白魔導士講座よりさらに派手になっており、太ももが見えるミニスカートにはキラキラと光るビーズがちりばめられ、背中には白いハーフ丈のマントを付け、動くたびにヒラヒラシャランシャランと音がしている。手には先端に星がついた短いステッキのようなものまで用意していた。


クラウスが額に手をあてた。

「ルゥさん、今日は助手は忍者の方が……」

「ご遠慮なくー!いつも元気いっぱい、ルゥルゥ、がんばりまーす!」

本当はアキミヤが助手の予定だったが、勢いでルゥに持っていかれてしまい、アキミヤは呆然として席に座っていた。


「はい、ルゥルゥさん、ありがとう。では、今日の進行を急にやれと言われたヒムロです。

先日上忍認定を受けて給料が上がりました。よろしくおねがいします」

と、余分な情報も交えてペコリと頭をさげた。


「「よろしくおねがいしまーす」」

本日の生徒はサカキ、ケサギ、ムクロ、ヒカゲ、アゲハ、アキミヤ、ロルド、スパンダウ、ゾル、白魔導士5名、上級騎士3名、それに立花と浅野と三鷹である。

武士3人組はなぜ自分がここに呼ばれたのかよくわかっていないようで困惑していた。


「あ、あと一番後ろの席にキーリカさんとパシュテさんがいますが、大勢の男の人といっしょの部屋は恥ずかしいそうなので黒魔法で姿を消しています。うっかり姿を現しても気づかないふりをしてあげてください」

ヒムロが注意を付け加えた。

全員が後ろを見る。

「「あっ」」

と可愛らしい声が聞こえ、一瞬姿が見えるがすぐに消えた。


「こういう風に、黒魔法は精神集中がとても大事なのでみなさん、気を遣ってあげてくださいね」

「「はーい!」」


「2人ともかわいいんだよねえー」

とケサギが鼻の下を伸ばしている。彼が2人と仲良くなっているのを自慢したいようだ。


「あー、はいはい。で、まずはペンネーム:とある白魔導士さんからのご質問、ズバリ『忍者とは?』です」

(ゾルだな)

とサカキは看破した。


「平たく言うと諜報活動を主とし、その延長で戦もやる職業で、同時に身分のことでもあります。秋津では農民より下で奴隷のひとつ上。

とても低いのです。ローシェでは騎士並みに扱っていただいておりますけどね」


白魔導士たちと騎士たちが驚いている。

「「「そうだったのか……」」」


「秋津で、最も上は武士。将軍や大名たちも武士です。その下に貴族、農民、工商民、小作農民、忍者、奴隷と続きます。

今は戦国の世にあるので忍者もそれなりに扱ってもらってますが、苗字はなく、土地も所有できません。

そういう我らでしたので、ローシェ帝国での扱いには心から感謝しております。

今回はこういう感じで上層の方々からのご質問をあらかじめいただいておりましたので、それに答えていきますね」


ヒムロはおほん、と咳ばらいをしてから話を続ける。

「最初のご質問はペンネーム:森の熊さんから。『上忍の順位はどうやって決めるのか?』です」

(ユーグだな)

とサカキは思った。本人いないけどいいのかな。あとでロルドが説明するのか。


「これはサカキとケサギとムクロから言う?」

「そうするか」

ヒムロが問うとケサギが立ち上がった。歩いてヒムロの隣へ行く。


後ろでキーリカとパシュテがケサギたちの私服姿に動揺したのかうっすらと姿が見えているが、だれも指摘はしなかった。

今日は上忍3人とも私服の麻シャツと柔らかい綿のズボン、上着は腰までの長さの、襟もとにローシェ風の鳥や花の刺繍の入った華やかなものを着用している。3人のスタイルの良さが際立って見える服装だった。

ローシェには彼らの体に合う既製服があまりないため、すべてお針子騎士団によるオーダーメイドである。


「そうだな。俺たち3人で説明しようか。山吹の里の場合だが、上忍は中忍・下忍と違って1対1の勝負で決めることになってた」

「そう。例えば、中忍が上忍になりたいとき、上忍の1人を選んで勝負を申し込む。ただし、それができるのは1年に1度だけだよ」

とムクロも立ち上がり、声がよく聞こえるようにケサギの隣へ歩く。


「ちなみに、中忍・下忍は上位の忍者たちで、その力がある、と認められればそれで認定される」

とサカキが補足し、立ち上がってムクロとケサギの隣にならんだ。


「サラサラ!」

「サラサラ……」

キーリカとパシュテがサカキを見て小声で歓声をあげている。姿もほとんど見えてしまっている。

上忍たちは黒魔導士の少女たちの反応がかわいらしくて、両手を組んで正面に立つサカキの右側にケサギ、左側にムクロが立ち、にっこり微笑む

と、2人の姿がゆっくりと点滅しはじめた。


アゲハがそれをみて吹き出しかけたが、下を向いて必死にこらえた。

参加者の他の何人かも肩が震えている。


「上忍の勝負は、最近だとサカキが中忍の1位から、去年上の六に挑戦し、見事に勝った。今年には上の五にも勝って今は五だ」

ケサギがサカキの方へ顔を向けて説明する。


「まだお若いのにすごいですな……」

騎士たちが驚いている。彼ら上級騎士はみな爵位を持っており、年齢も20代後半から30代前半と最前線で活躍する機会の多い者たちである。

彼らはみな忍者たちと共に戦うことに意欲的で、この講座にも自ら志願してきた。


騎士たちの中には秋津の忍者に対して疑いを持ったり、受け入れられないものがまだ大勢いる。

しかし、少しずつではあるが理解を示す者たちが確実に増えている。


「二十歳で上忍になったのはサカキだけだな。だいたいは25から26歳くらいが上忍になるのは多いかな」

「それはどういう勝負なんだ?」

スパンダウはそこが気になるようだ。


「勝負方法はお互い素手。武器も異能も忍術も使わない。お互いの肉体だけの勝負だ」

ケサギが両手の平を皆に向けた。体が大きい分、手もかなり大きい。


「ほほう。それで強さで言えば、やっぱり上忍の三のケサギ君が一番強いわけだ」

スパンダウの言葉に、上忍3人が顔を見合わせる。


ムクロが続けた。

「それがね、そうとも言えないんですよ。もちろん、素手の戦いではケサギが一番強い。

彼の肉体の純粋なスピードと威力はワタシもサカキもかなわない。それに伴って、武器だけで戦うならケサギだね」


「ああ。だが、忍術勝負ならムクロが最強だ。一度見たものならわかると思うが、忍術の威力、合わせの巧みさは敵うものはいない」

サカキが付け加えた。


「そして、武器・忍術・異能すべてを使っていいのならサカキが一番だ。

彼のそれらを組み合わせる戦闘のセンスは驚異的だ。俺とムクロが二人がかりでも倒せないだろうよ」

「「ほぉおおお」」


立花と浅野、三鷹は声こそ出さなかったが、なるほど、だからあの強さだったのか、と納得した。

室内だったからサカキは大太刀を抜刀せず、飛び道具も忍術も使っていなかったが、屋外だったら、と思うと背筋が冷える思いだった。

「つまり、一応順列はついているが、それは強さの順、というわけではないんだ」

ケサギがまとめた。

「へえええ、聞いておくもんですなあ」

スパンダウの言葉に白魔導士と騎士たちもうなづく。

「じゃあ、今回、ヒムロさんと、たしかヒカゲさんも一緒に上忍に上がりましたよね。勝負されたんですか?」

とゾル。


「いや、ヒムロとヒカゲは以前から戦闘能力は上忍クラスに達していたが、今回からルールを変えて一能に秀でたものがあれば上忍認定しよう、ということになった」

ケサギが答えた。


ロルドが訳を述べる。

「そう。上忍を増やしてほしいからね。私からそういう風に頼んだんですよ」

「そうだったのですね」

ゾルが驚いた。


「ヒムロは実務能力がすごい。ヒカゲは戦闘能力と見た目のギャップがすごい。そういう判定だ」

と、サカキ。

((そういうのでいいのか?))

全員が思った。

「いいんです!」

と、ロルドは声なき声を拾って断言した。


「さて、次の質問です。ペンネームV姫『くのいちのおしごとについておしえてください』

これ、公爵の紋章付きの手紙じゃないか、娘さんが書いたのばればれだな。権力使って質問をねじ込んでくるとは、なかなかの策士だ」

「本人不在だけどいいのかい?」

ムクロが笑いながら訊ねる。


「あとで俺から文書で伝えるよ……」

最近公爵と付き合いのあるヒムロが困った顔で言った。

「じゃあアゲハちゃん、答えてあげてくれる?」

「はい!」


アゲハは勢いよく返事して立った。前に行くのは恥ずかしかったらしく、その場で立って全員の方を向いて話はじめた。

いつものメイド服姿ではなく、アゲハも私服でひざ下丈の紺色のワンピースにフリルの付いた白いエプロンをつけ、三つ編みをくるくる巻いたまとめ髪に蝶飾りのついたカンザシを刺している。


「くノ一は、基本は男性の忍者と同じく諜報活動や、戦闘もこなします。それに加えて女性ならではの色仕掛けも大切なお仕事になります」

ゾルが動揺しているのがサカキには手に取るようにわかる。

「「ほほおお」」

と参加者から声が出る。


「有益な情報を持っている人物に近づいて、親しくなって聞き出します。ただ、くノ一の場合、敵に見つかったり捕まったりすると大変なことになるので、1人だけで忍務をこなすことはありません、かならず護衛の忍者が2人、ないし3人付きます」


「大変なこと……」

ゾルの顔が真っ赤になる。


「そうなんです!以前私も潜入がばれて……」

「えっ……ええーー?!」

「大勢の敵方の忍者に囲まれて……」


アゲハはその時の様子を語りだす。


忍者たちがアゲハを取り囲むと。

『おおお、くノ一さんだ、若くてかわいいくノ一さんだ!!』

『激レアだ!!』

『おい、早く、小頭呼んで来い!!』

『お嬢さん、うちの城、お給料すごくいいんですよ、どうです?ぜひうちに!!』

『倍出しますよ、なんなら3倍出してもいい!ローシェ渡来のお菓子も食べ放題!』

『ええー、どうしよっかなーー』

とアゲハは人差し指を顎にあてて小首をかしげながら迷っているフリをする。

『『かわいい……』』

『はいはい、失礼しますよー』

ボフンッ!

と山吹の中忍たちがアゲハを抱えて煙玉をその場で爆発させる。


ゲホゲホッ

『『あああ、お嬢さあああああああん』』


「という感じでした。あー、あのときは危なかったあ。お菓子食べ放題はちょっと心惹かれました」

アゲハが話を締めくくると、ゾルが明らかにほっとしていた。

その様子をニヤニヤ笑いながらヒムロが付け足す。

「このように、くノ一は秋津の国でも非常に少なくて貴重な存在ですのでね、どこの城もくノ一を得ようと必死なのです」


白魔導士たちと騎士たちは

「「なんか、思ってたのと違う……」」

と乾いた笑いを浮かべた。


(アゲハは言っていいこととよくないことをうまく切り分けている。アカネとは大違いだな)

サカキは感心した。

里の襲撃で愛馬モクレンにのってレイスル邸に来た時も、サカキが忍者服ではないことを見て「主さま!」と呼んだ。

とっさにこういう判断ができるのは忍者では大事なことだった。


だからアゲハは繋に向いている、と判断したのだった。

その判断は正解で、今は表の繋として立派に役目をはたしている。


「その割には夜香忍軍はくノ一さん、多めだな」

スパンダウが言うと。



「まあ、うちは美形が多いから……何人かはスカウトが成功してうちに来てくれたケースだね」

と、ヒムロが、席に戻っているサカキ、ケサギ、ムクロに目をやった。

「「なるほど……」」


ドヤ顔で微笑み、互いの顔を近づけたり、隣の肩に手を置いてポーズまで付け出した3人の姿を見て、キーリカとパシュテが興奮したのか、今度は2人の体が虹色に輝きだした。

ヒムロはついに吹き出した。

ルゥは「虹色……これはいいアイデアだわ!」と右手を握りしめた。

ローシェ国では秋津の国はかなりマイナーです。忍者についてもよくわかってない層が多いのでこの講習会が催されました。長かったので2話に分けました。

次話 73話 黒の男神 イスラ は今日更新です。

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