表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

68/288

67話 暗殺者を空から追う

5人の暗殺者に襲われた姫とサカキはかろうじて撃退することができました。

逃げた3人の暗殺者たちは途中で休憩していました。

ロルドの顔は真っ青で今にも倒れそうだった。目に涙も浮かべている。

「よくそれで無事で……」

「姫の強さが上忍に達していたおかげだ。俺1人では姫を守り切れなかった可能性が高い……」

サカキは腕の中に女皇を抱きしめながら目をきつく閉じた。

(たとえ何者であろうと、彼女が無事でよかった。本当に――)


ロルドはとうとうへたりこんだ。手で口を押えている。

スパンダウが片膝をつき、ロルドの肩に手を回した。


「アカネ、姫を別の寝所へ――」

「やだー、今夜はいっしょにいたい」

サカキの背に回している華奢な指先に力がこもる。


「……わかりました、別の寝所へは俺もいっしょに行きます」

「はい、じゃあ代わりの部屋と寝夜着をご用意しますね、サカキ様の分も」

「頼む」


サカキは忍者たちにも指示を出す。

「部屋の手裏剣と長針は全部毒が塗ってある、注意して回収してくれ。騎士たちには触らせるな」

「「はっ」」


「俺は死体2人の顔を検分する。姫、いったん離れてください」

「わかったー」

「白魔導士殿、姫の目に回復魔法をお願いします」

「承知いたしました」


女皇はサカキから降りるとロルドの横へ行き、腰をかがめて「だいじょうぶ、よしよし」とロルドの頭を撫でた。

「うわーーーん」

とロルドは泣きながら姫を抱きしめた。

意外と姫はしっかり気を保っているようでサカキはほっとする。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「とうとう、こんな最奥の、もっとも厳重な場所まで侵入を許したか。我らも進歩はしているが敵側も同じく、か」

スパンダウは立ち上がり、胸の前で両手を組んで考え込んだ。


サカキと姫の様子を見ると、これから寝る、という無防備なところを狙われたのだろう。

5人の手練れを相手によくぞ生きていてくれたものだ。

ほっとすると同時に怒りも沸いて来る。

よくも我らの姫君に――


スパンダウの左目が怒りで熱くなる。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


「ユーグ殿には連絡は?」

サカキが後ろに控えていた騎士に聞くと。

「国境付近を警備中でしたので、今こちらへ向かっています」とのことだった。

寝所の周りにいた繋の忍者3人、屈強な近衛騎士5人、障壁を張っていた白魔導士3人全員が、昏倒させられていた。


これを一瞬でやってのけるとは……

サカキが震撼する。

侵入者の5人のうち、3人は商業区でアゲハとアカネにからんでいた男たちの群れの中にいた年配の者たちだった。あの時からずっと街中に身をひそめ、情報を集め、機会をうかがっていたのだろう。


あのときは普通の男たちに見えた。そう思わされていた、ということか。

彼らは白露忍軍ではなかった。今まで戦場で会ったこともない。

サカキと姫の命を狙ったので恐らく、ウツロの手のものでもないと思うが、今までの計画の路線を変えた、と言えないこともない。

あとでロルドが落ち着いたら話し合わねばならない、とサカキは深くて長いため息をついた。


――草原の一角――


3人の忍者服の男たちは闇の中でひと休止するために立ち止まった。

ローシェ王国から1時間以上走り続けていたのだ。


「あなた様が手傷を負うとは……」

「油断した――まさか上忍の影武者だったとは」

主犯格の男の右頬は深くえぐれていた。


男の1人が手当てをしながら言う。

「山吹の里にはくノ一の上忍がおりました。たしか上の弐:ミヤビ」

「ですが、ミヤビは里襲撃で死んだ、と報告されていますが?」

「……ふ、忍者の死亡報告ほどあてにならないものはない。おそらく生きていることを隠し、女皇の影武者をやっていたのだろう。女皇には数人の影武者がいる、と以前から言われていたとおりだな」

「……あのような美しい女が何人もいるものでしょうか」

「ローシェは白魔法の国だ。そういう見せかけの魔法があってもおかしくない」

「なるほど」


「あの女の香、薔薇……か。まるで耶摩(やま)のように思えたな」

主犯格の男がふとつぶやいた。


耶摩(やま)……秋津伝承の妖怪でしたか、『夜に花の香りがしたときは外に出てはならない。出れば耶摩に取って喰われる』と」

「そうだ。耶摩の姿は小さな子供、とも美しい女、とも言われている。はっきりしないのは、姿を見たものはみな喰われたかららしい」

「そういえば山吹の里の山吹は、元は『耶摩伏(やまぶし)』、耶摩が伏しているという意味の隠語でしたな」


山吹の里の上忍の強さは、時折妖怪に例えられるほど他国の忍軍にも恐れられていた。

上の五のサカキでさえ、あの至近距離から3人がかりでも倒せなかった。

上の弐までが相手となれば、あのままでは3人とも命がなかっただろう。


「報酬に見合わない仕事だ」

2人手下を亡くした上に失敗である。気が重いが雇い主に報告せねばならない。

手下の男が血止めの薬を塗り、清潔な布で押さえつけた。

「その傷……残りますな」

「ああ」

(この傷を見るたびにあの恐ろしく美しい顔を思い出すのは――悪くない)

男の口元がわずかにほころぶ。


「行くぞ」

3人は立ち上がり、夜の闇の中、あらかじめ待たせていた馬に乗り東へ向かって走り出した。

そのはるか上空を1羽の鷹が音もなく追跡していた。

暗殺者たちの会話から、彼らは秋津人であり数か月前からローシェに潜伏して機会を狙っていたようです。

68話 霊鷹れいよう鷹目ようもくは、場面的に繋がっているので今日更新します。

いつも読んでくださってありがとうございます(*´∀`)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ