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43話 王女の悩み

王女と宰相がそれぞれの理由で悩んでいます。


――王城内王女私室――


「どうしたらサカキに好きになってもらえるんだろう……」

イリアティナ王女はお気に入りの星柄のクッションを抱きかかえながら長椅子に寝そべっていた。


アカネが不思議そうな顔をする。

「え?だってサカキ様は王女様の愛人なんでしょ?好きも何も、もう恋人同士では?」

「んーちょっと違うのよねえ。そりゃあサカキは優しいし私が抱っこしてほしいときはしてくれるけど……彼からは言ってくれないというか」

ちょっと恥ずかしかったのか王女は顔を赤らめてクッションに顔をうずめる。


「ええー、王女のほうが位が上ですしそれは仕方ないんじゃあ……」

「そこなのよね……サカキにしたらローシェに恩ができたから、ロルドに言われて私の剣客兼愛人になってくれたのが始まりだもの。

もしも私がサカキの好みでなくてもきっと今と同じ扱いしてくれたと思うの……そう考えるとやっぱり普通の恋人とは違うんだ、って思っちゃってねえ」


王女の眉がふにゃりと曲がっている。

「あー、まあ出会いが出会いでしたし……」

アカネもそこは認めざるを得ない。

王女は今まで男に触れることができず、恋愛などまったく眼中になかった。

それが、サカキと出会って初めて恋心を抱いた。

初恋である。わー、甘酸っぱい!


「そうですね……あ、いいこと思いついた。他の方々の意見も聞いてみましょう!」

アカネはぽん、と手を叩いた。


「他の人?ええー、恥ずかしいよ……」

王女は片手で口元押さえて首を振っている。


「はい、では女王様から!どうぞ!」

とアカネは傍に立てかけてあった錫杖(国宝)を王女に持たせる。


「私に何を言えと……」

だらしない寝そべり方から一転、王女は背筋を伸ばして顔つきも女王のように引き締まる。


「女王様はサカキ様のこと、どうしたらいいと思います?」

「サカキの気持ちの問題だ。私がどうこう言える立場ではない。ただ――」

「ただ?」

「サカキがどんな気持ちを持っていようと私の側にいればそれでよい。

願わくば私の命尽きるときサカキの腕の中ならばなおのことよい」

「べた惚れじゃないですか……」


「もしそれで足りぬ、というなら『私を好きになれ』と命令すればよいではないか」

「すいません、相談相手間違えました」

アカネは錫杖を取りあげ、ミニ錫杖を手渡した。


「わたくしですか?」

お姫様モードでは表情と仕草に可憐さが加わる。


アカネは下から王女の顔を覗き込みながら訪ねた。

「サカキ様とこの先、どうなって行きたいです?」


王女の頬がほんのり染まる

「そうですね……わたくしのこの気持ちを知ってほしい、という気はあります。

ですが、サカキにはそれを拒否するすべはありません。

なのでこの想いは秘めたままにしておくのがよいかと……」


アカネが頭を抱える。

「本当にみんなおんなじ人ですか?ぜんぜん意見違うじゃないですかあああ」

「みんな同じわたくしですよ。人にはいろいろな面があるものです」

「それはそうですけど」


王女は苦笑しながら

「しばらくはこのままでいるのがよいと思います。

素のわたくしが悩んでいるように、心の底では焦燥、切なさ、悩ましさが渦巻いています。

それがつまり恋の始まりではないかと。

こういう経験を経て人として成長していくのですから、焦って解決せずともよい、と思います」


「うーむ、つまりなるようになる、と」

「そのとおりですね」

ほほ、と優雅に王女が笑う。


(達観しすぎてて参考にならない)

とアカネはさらに頭を抱えるはめになったのである。


――宰相執務室――


ロルドは頭を抱えて机に突っ伏していた。


(試算では犠牲者は1万人まで減った。サカキたち忍軍のおかげだ。それでもまだ1万人の犠牲者が出る……

なんとかできないか、なんとか――)


ロルドの計算によれば、忍軍が存在していない場合の犠牲者は国民2万と騎士団3万、合わせて5万人に達していた。

ローシェ王国の正当な騎士団は辺境警備のものを除いて全軍30万。


そのうち騎士団3万が失われるとなると一部壊滅に等しく、その期を逃さずにアラストルだけでなく、草原の狼と称される勇猛な遊牧民族ハバールガルや、南のローダン王国までが攻めてくる。

それこそ魔女の預言の通りとなるだろう。


それが、夜香忍軍の登場で4万人が助かることになる。

大きな進展である。


それでも騎士団に1万人の犠牲があれば、壊滅とはならないまでも他国とのバランスが崩れる可能性が出てくる。

(なんとかしたい……いや、作戦はあるにはある。しかしあまりにも危険だ)


ロルドの頭の中には犠牲者をゼロにする計画もある。

だが、それを実行するには危険が多すぎて失敗すれば結局は預言の通りになるのだ。

「うーんうーん」

その夜、未明まで宰相の部屋には灯りが点いたままだった。

望めばなんでも手に入る立場でも人の心はままならないことを王女は知りました。

次話、脇坂泰時の姿をしたウツロの現状です。

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