110話 若い忍者ナキリとキリヤとレスター
3人の10代の下忍の登場です。そのうちの2人は山吹の里の生き残りで、襲撃時は外の任務に就いていて助かりました。
ほどなく3番コテージに3人の下忍が到着した。
まずケサギが紹介する。
「こちらはナキリ。夜香忍軍二番隊の下忍でまだ若いがもうすぐ中忍になる予定のなかなかの手練れだ。……って思ったより似てるな」
呼んだケサギが一番驚いた。思わずかがんで顔をまじまじと見てしまう。
「ナキリです、よろしくおねがいいたします。17になります」
まだ少年の幼さを残した青年は礼儀正しくお辞儀をした。
声まで長内によく似ている。
黒くてまっすぐな髪は長内より長いが、あとでそろえて切るという。
細く直線的な眉毛、やや低めで小さな鼻はそっくりだが、黒い瞳は長内よりも生命力にあふれて力強い。
体つきも細く、長内の羽織袴を着ると双子のようだった。
「これは……よほど傍に仕えていたものにしか見破れないくらいよく似ておられます。長内殿の振舞い方などは道中お教えすることにいたしましょう」
続いてサカキが紹介する。
こちらも若い忍者でキリヤは茶色の髪に茶色の瞳。自信ありげな甘い顔つきで女性にモテそうな雰囲気がある。18歳。
レスターのほうはフードと口布で顔を隠しており、緊張している様子だ。19歳である。
「こちらはキリヤとレスター。一番隊の下忍で長内殿の繋ぎとしてお付けする」
「レスター?ひょっとしてローシェ人ですか?」
数馬が驚いている。
「そうです。彼は忍軍初のローシェ人の忍者です。もとは白魔導士なのですが――彼がどうしても繋ぎの職に就きたい、というのでね。入隊を許しました」
「そうなんですよ、こいつ、美形なのに姿を隠したいそうで、すげーもったいないっつーか」
キリヤは見た目も軽そうだが、口調も軽かった。
「レスター、長内殿と数馬殿に顔をお見せして」
サカキが促す。
「は、はい……」
おずおずとフードと口布を取ると……
「「おー」」
と歓声が上がる。
金色の髪はまるでブドウの房のようなクルクルの巻き毛、瞳は女皇に似た宝石のように深い青色、通った鼻筋と赤い唇の、白皙の美青年であった。
「……皇族の方?」
数馬が問う。
レスターは泣きそうになる。
「違うんです……僕、由緒正しいド平民なんですけど、この見た目のせいで、皇族の隠し子とかなんとか言われて、それが嫌で嫌で……」
「なるほど、だから裏の繋ぎに……」
「はい……」
レスターはしゅん、とうなだれた。フードをポスっとかぶる。
「これだけ顔がいいなら、情報取れ放題なのになー」
と、キリヤはレスターの背をぽんぽん叩く。
「やだよ、人と話するの怖い」
数馬は忍者らしくない2人のやり取りを見ていたが、むしろこれくらい人間味があるほうが長内殿には合うかもしれない、と思う。
「まあこういう2人だが、腕前は確かなので……」
サカキは苦笑した。
「お任せください」
「よろしくお願いいたします」
キリヤは自信満々で、レスターは緊張しながらお辞儀をした。
「長内殿を……よろしくお願いつかまつる」
数馬は彼らよりも深く頭を下げた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
――コテージ2号棟――
数馬はナキリを伴い、深夜に秋津へと出発していった。
長内はムクロに抱っこされて、ケサギとムクロの住まいである2号棟へやってきた。
「長内殿、今日はここでいっしょに寝ましょう」
「……は…い……」
長内は半分眠ってしまっていた。
「じゃあオレは向こうのベッドでルミルと寝るわ」
隣のベッドではルミルが定位置で「くかー」と寝息をたてて寝ていた。
「キリヤ、レスター、君たちも2階のベッドと長椅子で寝て来るといい。長内殿に付くのは明日早朝から頼む。食事がまだだったらフロントで貰ってきてくれ」
「「はい」」
下忍2人が部屋を出て行ったあと。
「……結局、切腹を止めることになったねえ」
ムクロが苦笑いしている。
「……事情を知ってしまうとな。まあ、どっちみちそんな事情がなくても目の前で短刀出されたらオレらは止めるさ」
「そうだね」
長内はムクロの腕の中で寝息をたてている。
「軽い。これで19歳か」
「ひどい育てられ方をしたもんだ」
「治療はどうやって?」
「彼に必要なのは母親の愛、父親の教え、だな。それこそ赤ん坊からやり直しだ」
「へっ?」
「まあ、君もそういう心づもりでいてくれたまえよ」
ムクロがパチンとウィンクをする。
「どういう意味だろう……」
ケサギは頭を傾けて考えたがわからなかった。
レスターはローシェ人でかなりの美青年でした。あまりの美貌故にストーカーが絶えず、そのせいで人に顔を見せるのが嫌なのでした。
次話 111話 物の怪姫? は明日更新予定です。
サカキになかなか会えない姫が荒ぶっています。




