表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/288

9話 ローシェ入り

やっとローシェ王国が出てきました。王都は石造りがメインですが鉄鋼も存在します。

武器には合金も使われるほど発達しています。

水源が豊富なのでトイレも水洗で上下水道もあります。

――国境――


里人の生き残りは、忍者以外は子供5名男7名女性8名の20名であった。

負傷したものもいて全員荷馬車に乗せ、一行は再びフランツ公国との国境まで来た。


怪我は馬車の上で長衣を着た白魔導士が治療してくれた。

魔法でみるみるうちに傷が塞がって行くのを里人は驚いたが、「見かけは治っていますが、本当に完治するには実際の怪我と同じくらいかかるので安静に」ということだ。


馬を止めてサカキが空を見上げた。

はるか遠くで鷹が天空を舞っている。

その動きは不自然でくるくるとせわしない。


「北……国……待て……弐……後……。上の三と四だ。ケサギとムクロがいる」

サカキは空を見ながら説明する。


「あの鷹は上忍の三・ケサギが放ったもので彼が操っている。

鷹の視線は上忍の四・ムクロが写し見ることができる。彼らも里の状況は把握できたらしい。

鷹の合図は、『ローシェ国で待て。弐を助け出す』だ」


上の弐・ミヤビの救出にはサカキもすぐに行きたいところだが、それはロルドに止められた。

サカキはローシェ軍に捕らえられて国へ連行されている、という事実を作らねばならないという理由だ。


「彼らは俺よりももっと遠くの外国で忍務に就いていたはずだか戻って来てくれた。

ローシェで待っていればやがて接触してくるだろう。弐のことも心配だが彼ら二人ならまず間違いはない」


「忍者ってすごい……異能、といいましたか、秋津の国では魔法とは違う特殊な能力があるとは聞いてましたが次元が違いますな」

ロルドが小さい目を丸くしてつぶやいた。


「白魔法のほうがよっぽどすごいと思うが」

空間と空間を繋ぎ合わせてそこを渡るなど、いったいどういう仕組みでそんなことができるのか、サカキにはさっぱりである。


「そうかな……なんか慣れちゃっててこれが当たり前、と思ってしまってるんだよね」

そう言って薄くなり始めた頭をポリポリとかいた。


ロルドの計らいで、生き残った里人20名は彼の領地ヴァインツェル家の廃村となっていた場所に一時保護されることになった。


「王都には難民保護施設もあるんですけどね、そこは衛生管理が良いとは言えないし公用語が使えないとなにかと不便だと思いますので、当面こちらにいてください」

「お心遣い、痛み入る」

サカキは深く礼をした。

生き残りの忍者たちは村からはやや離れたところにある、騎士宿舎に仮住まいすることになるという。


大陸公用語は忍者の必須科目なので下忍以上は使えるが、里人は秋津語だけしかわからないのを知った上での、ロルドの配慮であった。


そこはドルミラという小さな村で、民家が10数軒とひときわ大きな集会所が一軒あり、近くに小川が流れていて水車も稼働している。

畑も荒れてはいたが十分な広さがある。


驚いたことに、里人が到着したときにはすでにローシェ騎士団が資材や食料を運んでいて、突貫で家々の修繕を行ってくれていた。


「私は民間人保護騎士団隊長のマックサスと申します。ここまでの道中大変でしたね。

しかしご安心ください。生活が安定するまで必要なものはこちらがご用意いたします。

足りないものがあったらなんでも私におっしゃってください」

軽装鎧に身を包んだ若い隊長が、人好きしそうな笑顔を見せて言った。


里人は、大半のものが涙を流しながら「ありがとうございます」と頭を地につけて礼を言った。


サカキからも礼を言うと。

「サカキ殿、急がせてすまないが君と、そちらのアゲハさんもかな?

このままいっしょに城内まで来てほしい。君たちの当面の家も用意してあるし、いろいろと取り決めたいことがあってね」

ロルドが言った。


「了解した。それとアゲハ、そなた、もしこの先行くところが決まっていないのなら俺の下に付いてつなぎに……」

「ハイ喜んで!!」

アゲハは食い気味に返事してしまって顔が赤くなった。

(つなぎ)=上忍の傍に付いて世話をしたり、他の忍者へ上忍の命令を伝えたりなど情報のやりとりをする。姿を見せて付く「表」と姿を消して控える「裏」がある


◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 


里にいた頃は下忍のアゲハは上忍とはほとんど接触がなかった。

ただ、見かけるたびにその美しい横顔にあこがれのような感情を抱いていた。


そんな人の側に仕えられるとは。

アゲハは熱を感じて頬を両手で押さえた。


「いい返事だ」

サカキが口元をほころばせている。

アゲハの頬がますます赤くなった。


――ハステアの丘――


サカキとアゲハ、ロルドとユーグは4人でそれぞれ馬に乗って王都へ向かう。

ドルミラ村から王城までの直接ルートはないので次の結節点までは自力で移動しなくてはならない。


ユーグは、馬に乗ったまま指を指した。

「おい、来てみろ。ここからは王都全体がよく見渡せる」


丘を上り、ユーグの隣に立つと、なだらかな丘陵の先に石の城壁に囲まれた城塞都市が見えた。

ここはハステアの丘といい、見晴らしの良い場所でこのあたりでよく騎士団が騎馬戦を行うのだ、とユーグが説明してくれた。

サカキとアゲハから「おお!」と、歓声が漏れた。


はるか遠くに見えるのは5000ハロン(メートル)級の山が連なる聖峰・ブールランデン山脈。

その山々から雪解け水が、無数の白い糸のような滝となって大地を潤している。

その滝の前にそびえたつ尖塔群は白を基調にところどころに青いタイルで飾られていて、昼の日差しを浴びてきらきらと光っている。


目の前に広がるのは平和そのもののような風景。

どこにも争いの跡などなく、病気で放置された者も飢え死にした死体もない。

清潔で生きる力に溢れた大地だ。


「あれが我らの100年の都。麗しき王女のおわする王都・リア・アルファテスだ」

わぁ、とアゲハが声を上げる。


「なんて綺麗なお城……。いちばん大きな三角屋根の建物の正面に白い薔薇の飾りの窓がありますね!」

「あれはステンドグラスと言ってね、小さなガラスを組み合わせて一枚の絵を作っているんですよ。白バラはローシェ王家の象徴なのです」

ロルドが丁寧に説明してくれる。


高い城壁に囲まれた中には城下街があり、街の中心にローシェ城があるという。

城壁の周りには黄金色に輝く麦畑や、緑の牧草地が見える。

曲がりくねった道ははるか遠く地平線のかなたまで続いていた。


「立派だろう?」

進みながらユーグがニヤリと笑う。

「ああ、正直気後れしている」

これほどの大国の姫を殺せという忍務を受けていたのだ。

あのまま遂行していたら、と冷や汗ものだった。


「意外と素直なやつだな」

ユーグが呆れて言った。


サカキはユーグとロルドに好感を持ち始めている。

ユーグは、大将軍という役職にもかかわらず豪胆で快活、細かいことは気にしないが物事はよく見えている。


ロルドは見かけこそ粉屋のおやじだったが、頭脳明晰で1つの物事から10を、その10からもさらに情報を広げていく天才肌のようでサカキやアゲハの質問になんでも真摯に答えてくれる。

二人の会話のテンポも心地よかった。


秋津の国での扱いとは大違いだ。

忍者の身分は農民よりも下である。帯刀こそ許されているが苗字はなく、死んでも墓が作られることはない。

今の主君・脇坂泰時に会う時も城の庭の隅でなるべく目に入らないよう身を伏せていなければならない。


4人の後ろについていたゾルが声をかける。

「結節点にまもなく到着です。どこに繋ぎますか?」

「城の裏口に頼む」

「了解しました」


「正面から入らないのか?大将軍と宰相なのに?」

サカキが聞くとロルドが

「ユーグはね、正面から入城するとラッパ鳴らされちゃうから」

「なるほど、それはちょっと恥ずかしい」

「だろ?」

とユーグは肩をすくめた。

大将軍も大変だな、とサカキは思った。

上忍の地位の設定ですが、壱と弐だけが大字だいじで、三、四、五、六が普通の漢字なのは「見やすいから」という作品上の都合です。

最初は全部大字にしてたんですが、筆者が混乱してしまって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ