噂話‐蜘蛛の悪魔
蜘蛛の悪魔を知っているか?
北の国レイリアのはずれ、フォードレイクの向こう側、その森の中に奴らはいる。
街道を外れ森の近道をした荷馬車の業者が月が照らす夜中に見たというのだ。
草むらを這うように進む赤い光を放つ四つ目の人影のようなもの。
業者いわく雲間から指す月に照らされた時だけ奴らが見えるらしい。
街道外れで出くわすものは増え続けている。
戦が近いのかもしれん。物資を狙う盗賊、怪物、外来種がうようよいる。
そして、ついには悪魔ときたもんだ。フォードレイクの森は境界域があるって噂だ。
悪魔がいてもおかしくは無い。
賊や怪物なら、すぐに踵を返し逃げるべきだ。
だが、悪魔は逃げちゃいけない。
大事なのは、見つけても知らないふりをすること。決して焦らず、ゆっくりと通り過ぎること。そうすれば見逃してくれるかもしれない。奴らは夜でも目が見える。
はっきりと見つかってしまったら?
体に奇妙な穴をあけられて死ぬことになる。
矢であてられたキズでも、浮遊水晶でもないキズ。
業者は言っていた。人影たちは、フォードレイク城へ、まっすぐ進んでいったと。
フォードレイク前十字路、ケルン酒場にて