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ヒーロー達の訓練相手として戦う者たちの悲しくてはかない物語

タイピングの練習と、何かを捜索してみたいという漠然とした思いで執筆しました。

よろしくお願いします。

首都東京から西へおよそ200km、水深7000mの日本海溝を眼前に捉える人工島がある。

通称「ゼロ」

天然の防壁に囲まれたこの島に、一隻の船が到着した。

厳重な警備体制のもと、5人をのせたコンテナが島へ届けられる。

全員が重犯罪者である。


「オーライ……お前ら任務完了だ、出港の準備をしろ」


乗組員に指示したのは、このライカ号の船長 浦見小次郎。


「クソ!やっぱこの任務だけは性に合わねえな」


ライカ号の背中は無情にも遠ざかる。

何も知らない5人がコンテナから顔を出し、今この島に足をつけた。

各々にふたりの警備員が付き、両脇を抱えられている。


「こりゃあ、また大変なところに連れてかれてきたもんだな」


褐色肌と右腕全体に入れ墨の入った男が、不敵な笑顔を浮かべながら言う。

名前は |与世田真華≪よせだ まか≫  

罪状;強盗8件・強姦6件・殺人4件・紙幣偽造


「まったくだ。独房の次は孤島ときた。とは言え獄中禁止の煙草が許可されるなんて、一体何の冗談

 なんだい?」


レンズの奥の瞳は光を失い、髪は肩までかかっている。

名前は |政田真≪せいだ まこと≫

罪状;サイバー攻撃8件・テロ主導2件・児童誘拐4件


うしろには男一人、女二人が続く。彼らはまず、この島の広さに驚くことになる。

護送車に乗せられて走り続けることおよそ30分、広大なコンクリート上に作られた四つの大きな立方体の建物を眺めていた。


「一体何なの?もう飽きた!いい加減おろしてよ運転手!」


「嬢ちゃん少し黙ってくれねえか。女のガキの声は耳の奥が痛くなるんだよ。次騒いだら、その口きけなくなるまで壊すぞ」


与世田がそう言ってにらみつけた先には、黒い艶やかな髪をツインテールに結んだ10代後半の少女がいた。

|檜垣夢乃≪ひがきゆめの≫

罪状;不明


「はあ?やれるもんならやってみなさいよ!わたしはね、あんたみたいな世の中の全ての女の子の敵み

たいな奴が一番嫌いなの!わたしはどこにも逃げないから兎に角降ろして!こんな奴と同じ空間にいたくないわ!」


少女はますますヒートアップしていく。


「あーマジで黙れお前……ぶっころすぞ」


与世田の貧乏ゆすりは激しさを増す。

2人の様子を見て政田が諭す。


「まあまあ、二人とも落ち着いて。せっかく一緒になったんです。ここで殺り合うのは得策ではないと思いますが。それにこちらのお二方もいらっしゃいますし。お名前を教えていただきませんか?」


政田の視線は、隅に座る男とじっと外を見つめる女に移った。

男の体つきは、他の四人が彼がただものではないことを悟るには十分すぎるもので、その腕と顔には無数の切り傷が刻まれている。ただ一つ、彼の表情はそんな容姿からは想像できないほどやわらかであった。


「俺は与世田だ。兄ちゃん名前は?さっきから黙ってるが、ビビってんなら帰ったほうがいいぜ。さっきからイライラが止まんねえんだわ。いつお前に手が出るか俺にもわからねえ。従ったほうがいいぜ」


与世田の言葉は決してハッタリなんかではない。日本中を震撼させた凶悪犯罪者として彼の名前は誰もが知るところである。政田に関しては、活動範囲が世界にまで広がっていたこともあり、もはや地球上に知らない人はいない。ヒーローが手間を焼くほどの悪党だ。


「俺は……そうだな、|旗作≪はたさく≫ だ。ヒーローを何人かヤってここにいる。よろしく」


護送車の空気は一気に張り詰めた。すると、与世田が大声をあげて笑い出した。


「アッハッハッハ!笑わせてくれるじゃねえか兄ちゃん!ヒーロー狩りだ?聞いたことないぜそんな奴まあ冗談にしてはいいんじゃねえか?」


「はあ……ほんとにろくな奴がいないわねここは。頭が痛くなってくる。」


檜垣はため息交じりにそう言うと、遂に怒りを通りこしたのか、体育座りに顔をうずめて動かなくなった。旗作はそれが真実だとも嘘だともわからないような顔でほほ笑んでいた。すると与世田は立て続けにもう一人の女に声をかける。


「そこの別嬪ちゃん。まさかあんたもこんな冗談はいわないよな」


腰まで伸びた黒髪、眼帯で隠された右目とは対照的な左の目元の妖艶さはまるで、人を化かす狐のごとき魅力であった。しかし、女は与世田を一瞥もせずにこう言い放った。


「貴様らに名乗るほど、私は安くはない」


それを聞いた与世田は興が削がれたと言わんばかりに舌打ちをすると無造作に眠りについた。

しかし、政田はそんな彼女へ疑惑と警戒の眼差しを向けていた。


まあ何はともあれ、彼らは孤島「ゼロ」に迷い込んだのである。

そして護送車はその中心地、最高責任者のいる中央塔に向かっていくのであった。











読んでいただきありがとうございます。

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