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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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第六の騎士の門(7)

 おそらく、体の傷は一時的にふさがっただけ。

 そのほとんどが完璧には治っていなかったのだろう。


 権蔵はすぐさま、小屋の奥に積まれた道具の山に頭を突っ込み、何やら必死に探し始めた。

「確か……エメラルダ様からもろうた傷薬があったはず……!」


 それは駐屯地を去る際、エメラルダが餞別として渡してくれた超高級傷薬。

 売れば一本、金貨五枚──おそらく、日本で言えば五十万円はくだらない一品だ。


 それが、七本。

 権蔵は、そのすべてを惜しげもなくタカトの体に塗り込んでいく。

 傷薬は体の表面組織を活性化させ、外傷を癒す働きを持つ。

 これで、タカトの肉体的な傷は間違いなく癒えるだろう。


 ──間違いない。だが、それだけでは足りない。


 そう。今のタカトは、生気が尽きかけているのだ。


 生気は命の根──魂を灯す燃料そのもの。

 これが尽きれば、人はどれだけ傷がふさがろうと、生きることはできない。

 だが、傷薬では生気を補うことはできないのだ。

 ましてや、神のように命の石から生気を直接取り込むなど、人間には不可能だ。

 可能性があるとすれば、命の石から長い歳月をかけて染み出した、極めて稀少な妙薬──

 しかし、そんな代物が、奴隷である権蔵の手元にあるはずがない。

 いや、権蔵でなくとも、持っている者などこの地にはほとんどいない。

 あるとすれば、駐屯地の最前線に数本──それだけだ。

 いくら長年勤め上げたとはいえ、そんな宝物を、奴隷風情に分け与えてくれる者などいなかった。


 ──頑張れ、タカト。


 今の権蔵にできることは、彼の命の灯火が消えぬよう、祈ることだけだった。


 ──お前は、元気になる……必ず、なるんじゃ……!


 権蔵はタカトの手をとり、しっかりと握りしめた。

 その体は、小さく、だが確かに温もりを残していた。


 ──お前は……ワシの子じゃろ! なぁ、タカト!

 

 そのそばに、ぽつんと座る幼女の目が震えていた。

 金色の瞳。神の証──

 ということは……

 ――この小さき神こそが……おそらく……ビン子なのじゃろう……


 だが、権蔵の記憶にある”未来から来た”というビン子とは、どこか様子が違っていた。

 ――本当にあのビン子なのか?

 未来のあの娘は、よくしゃべり、よく怒り、よく笑った。

 ハリセンを振り回し、タカトをドついてばかりの、元気いっぱいの「おてんば神」。

 殺虫剤を浴びせかけても平然としていそうな強靭さ、いや、むしろ逆ギレして自己主張を連発するタイプである。

 それが、今はどうだ。

 うつろな瞳に涙を湛え、声ひとつ発しないまま、沈黙している。

 その瞳は、消えてしまいそうなほどに、儚くて──弱弱しい。

 まるで魂の抜けた人形のようだった。


 ――しかし、このままここにしておくわけにもいくまいて……

 一息ついた権蔵は、奥の部屋を片付けて、ビン子を神として仰々しくもてなした。

 もちろん、貧しい休息奴隷の身の上ゆえ、たいしたもてなしなどできるはずもない。

 小汚い座布団の上に座ってもらい、湯で戻した芋と干し肉を皿に載せて、なんとか形を整えた程度である。

 それでも、今の権蔵にとっては、これが精一杯のもてなしだった。


 普通の神であれば──

 いや、気難しいババアの神なら、それだけで怒って帰るか、呪いの一つでも吐いていたかもしれない。


 だが、ビン子は違った。

 座布団に腰を下ろすその姿は、どこか申し訳なさそうで。

 皿の上の食べ物にすら、指を伸ばそうとしなかったのだ。


「……神様、せめて……何か口にしてくだされ……」


 権蔵は、言葉を選びながら皿を差し出す。

 だが、ビン子はかすかに笑みを浮かべ、そっと首を振った。


「……いいえ……大丈夫です……だって、私には……お返しするものが何もないですから……」


 その声は、まるで風に消えるささやきだった。


 ──そう。今の彼女には、記憶がない。

 自分がどんな神で、どんな恩恵を持つ存在だったのか。

 それどころか、自分の名前すら思い出せていなかった。


 ──だから、“ビン子”という名は、本当の名前ではない。


 それは、タカトがくれた名前。

 小さきタカトと、小さきビン子の、大切な絆。

 その名前に宿るのは、神としての力ではなく、人としての愛だった。

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