表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/142

第六の騎士の門(5)

 ――ここはドコ?

 暗い世界……。

 ――私は、誰?

 真っ暗な空間の中に、生まれたばかりの私は一人で座り込んでいた。

 名もなく、記憶もなく、何も知らないまま、ただ膝を抱えて……震えていた。

 ―― 一人はイヤ……

 うつむいた頬を伝って、涙がぽたりと落ちる。

 誰もいない。何も見えない。どこまで行っても、闇ばかり。

 ――誰か……助けて……お願い……誰か……。


 その時。


 黒一色の世界に、かすかな男の声が響いた。


「……見つけた……」


 思わず顔を上げた。

 視界が、うっすらと滲んで明るんでいく。

 生まれて初めて“光”というものを見た。


「やっと、見つけた……やっと……」


 その声が、ゆっくりと近づいてくる。

 少しずつ、霞んだ世界が輪郭を持ちはじめた。


 やがて、一人の年老いた男が私の前に立っていた。

 頭には頭巾。背はやや丸く、無骨な職人風。

 けれど、なぜかその目には、大粒の涙があふれていた。


 ――誰?


「こんなところにおったのか……」


 彼の手が、震えながら、ゆっくりと私に向かって伸びてくる。


 だが、いまだかすむ視界の中を、ゆっくりと男の声が近づいてくる。

 次第にはっきりしていく私の世界。

 目の前には、一人の年老いた男が立っていた。

 頭に頭巾をかぶり、いかにも職人風の男は、何故か目から涙をボロボロこぼしている。

 ――誰?


「こんなところにおったのか……」


 彼の手が、震えながら、ゆっくりと私に向かって伸びてくる。


 ──その瞬間。


 私の中で、何かが爆ぜた。


 この男は“敵”!

 最愛の人を奪おうとする敵!


 そう、誰かが心の奥で叫んだ。


 気がつくと、私は隣にいた男の子を抱きしめていた。

 覆いかぶさるように、その小さな体を抱きかかえる。


 でも、男の子の体は反応しない。

 引き寄せると、ただ私の腕の中に力なく沈んでいくだけだった。


 ――この子は……誰?


 見覚えはない。

 なのに、体中の細胞が叫んでいた。


 この子は、私の最愛の人だと。

 絶対に、誰にも渡してはならないと。


 ――最愛の人?……見たこともない顔なのに。


 でも、間違いようのない確信があった。


 私は覚悟を決め、男をにらみつけた。

 小さな手は震えていたが、瞳は決して逸らさなかった。


 ――この人を守る。必ず……絶対に。


 そう、これはビン子の記憶──

 今から十数年前、彼女が“権蔵”と出会った、はじまりの物語である。


   * * *


 大木の枝葉が、森の中にまだらな光の模様を描いていた。

 陽の光は清らかな筋となり、静かな地面を照らす。

 その光のなか、多くの鳥たちが讃美歌を奏でていた。

 それは、まるで聖なる神の誕生を祝うかのような、美しい風景だった。


 その神聖な光の中心に、ふたりの幼子が寄り添うように座っていた。

 年の頃は、どちらも四、五歳。

 女の子と男の子。

 ともに目を閉じ、まるで深い眠りに落ちているようだった。


挿絵(By みてみん)

 

「……見つけた……」


 そんなふたりの前に、ひとりの男がゆっくりと現れた。

 頭に頭巾をかぶり、少しだけ若い頃の──権蔵。

 

「やっと、見つけた……やっと……」


 言葉が震える。

 そして、堰を切ったように涙が頬を伝った。

 長い年月、心の奥に抱え続けてきた“想い”が、あふれ出すように。


「こんなところにおったのか……」


 宝物に触れるように、震える手を伸ばす。

 だが、少女はその手を拒絶するように、男の子を抱きしめたまま、権蔵を鋭くにらみつけた。

 その目は、まるで怨敵でも見るかのように怒りに満ちた瞳だった。


   * * *


 このふたりと出会う前、森の中に“道具屋”などは存在しなかった。

 ただの丸太小屋。

 古びたログハウスに、権蔵はひとりで住んでいた。


 少し前のことだ。

 第七駐屯地で奴隷職人として働いていた権蔵は、騎士・一之祐から突然「休息奴隷」の命を受けた。

 本来、休息奴隷とは、奴隷自身が願い出る制度。

 だが今回は、所有者である神民・金蔵家の“強い請願”によって決定されたものだった。

 戦場ではまだ、権蔵の作る道具が必要とされていた。

 にもかかわらず、なぜ金蔵はあっさりと彼を手放したのか──。

 権蔵自身、答えは持たなかった。

 けれど、心のどこかで“心当たり”があった。

 ――あの二人が……何かしたのじゃろ……。

 その二人が誰なのか、権蔵は誰にも語らなかった。

 今に至るまで、口を閉ざしたまま。


 こうして休息奴隷となり、融合国内へ戻った権蔵は、森の奥に一人で暮らし始めた。

 小屋を建て、静かに時を過ごす日々。


 だが、一滴の血で開血解放を実現する──その非凡ともいえる権蔵の道具の噂は、内地にも届いていた。

 凄腕の職人として名を馳せていた彼を、自らの工房に迎え入れようと、多くの職人たちが小屋を訪れるのは当然だった。

 しかし権蔵は、その都度、無言の圧とともに来訪者を追い返した。

 どれほど好条件の誘いであっても、首を縦に振ることはない。

 それでもなお、彼の道具を欲する者たちは、せめて一点物の制作をと頼み込む。

 だが返ってくるのは、「忙しい」の一言だけ。


「金ならいくらでも出そう!」

「ワシは忙しいんじゃ!」

「何がだよ! お前、毎日森の中を歩いてるだけだろうが!」

「やかましぃ! とっとと帰れ! 二度と来るな!」


 依頼者は次第に諦め、権蔵の小屋からは足が遠のいていった。


 そんな頃。


 第二の門の騎士に任じられたクロトが、権蔵を訪ねてきた。

「権蔵さん。ぜひ、融合加工院に来てくれないか」

 その言葉に、権蔵は目を見開いた。

 奴隷である自分に、融合加工院への招待――。

 そんな話を受けた者など、きっと彼が最初で最後だろう。


 心は大きく揺れた。

 行きたい。あそこは、融合加工を志す者なら誰もが夢見る場所。

 手が届くなら、行ってみたい。……だが――


 権蔵は、ゆっくりと首を振った。


「クロト様……ありがたいお話ですじゃ。けれど、ワシは……ここで待たねばならんのですじゃ……」


「何を?」


 クロトが不思議そうに問い返す。


「……ワシの子らを、ですじゃ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ