第六の騎士の門(3)
女子学生のスカートをめくって、ビン子のハリセン一発で済めば安いものだ。
だが、ここは第六の門前広場。
当然、その門のすぐそばには、街の治安を守る守備兵たちが詰める宿舎があった。
そしてその宿舎から──女子学生の悲鳴を聞きつけた守備兵たちが、まるでアリの巣でもつついたかのように、次から次へと飛び出してくるではないか!
飛び出してきた守備兵たちの形相は、まさに鬼。
その剣幕たるや、雷神の怒りも裸足で逃げ出すほど!
無理もない。
真昼間の門前広場で、いきなり女子学生たちの絶叫にも近い悲鳴が上がったのだ。
しかも犯人は、街の治安を預かる彼らがすぐそばにいると知ったうえで、堂々と女子学生に手を出したのである。
──たとえるなら、北海童貞……いや、道警の目の前で、女子学生のスカートをめくるようなもんだ。
おだづなよ!
これはもう、完全に守備兵への挑戦である。
「ふざけやがって! この野郎!」
ならば受けてやろう! その挑戦とやらを!
「さっさと捕まえて、牢屋にぶち込んでやるわ!」
そしてそのケツを──同じ目に合わせてやる……!
うん? なんか、話がハッテンしてませんか?
だがすでに鼻息も荒い守備兵たちは、
「ウッホ! ウッホ!」と、血眼になって獲物を探していた──。
タカトは、その守備兵たちの剣幕に恐怖した。
このままでは神秘の丘陵地帯にたどりつくどころか、うっくつした牢獄にたどりついて、あられもない痴態をさらす羽目になりかねない。
童貞喪失どころか、おケツのバージン喪失の危機である!
──マズイ! 逃げよっと。
タカトはスカートまくりま扇をベルトに差し込むと、何食わぬ顔で御者台に座り、しれっと手綱を引いた。
すでに第六の門前広場にいるタカトたちにとって、目的地である第六の宿舎は目の前なのだ。
目的地である第六の宿舎はもう目と鼻の先。だが、そのわずかな距離が、今は果てしなく遠い。
問題は、その間にうろつく守備兵たち──
あの血走った目、荒ぶる鼻息、ウホウホ叫ぶ野生の雄たち。
──あそこまで行けば、何とかなる!
いや、何とかならんだろ……
ということで!
ミッションスタート!
【MISSION:守備兵たちに見つからずに、目的地である宿舎にたどりつけ!】
難易度:ハード
推奨レベル:童貞16(※ただし事故処理、もとい自己処理はカウントしない)
制限時間:なし(ただしケツが無事とは限らない)
クリア報酬:S級アイテム……の、な・に・か♡
なお、ゲームオーバー時のペナルティは“おしりプリズン・無限の間”へのご招待です。
隊長らしき太っちょの男が、タカトたちの荷馬車に近づいて声をかけてきた。
その名は、ギリー=ザブットキャップ。第六宿舎の守備隊長である。
「おい、タカト! 女子学生のスカートをめくった不審者を見なかったか?」
タカトは、定期的にこの宿舎に荷物を届けている顔なじみ。
そのため守備兵たちとは、なにかと気軽に言葉を交わす間柄だった。
「さぁ……別に……」
そう答えたタカトの目は、泳いでいた。
……これは、どう見ても怪しい。
ギリーの勘がビンビンに反応する。
――コイツ……なにか隠してやがるな。
「おい、お前……何か隠してるだろ!」
ドキッ。
その瞬間、タカトの身体がこわばる。
「一体、何をおっしゃっているのでしょうか……」
苦し紛れの返答と同時に、腰をずらしたタカトのベルトから、一枚のウチワがひらりと落ちた。
──よりにもよって、あの「スカートまくりま扇」である。
しまった! 物的証拠を落としてしまった!
タカト君、大・大・大ピーンチ!
「これは……なんだ?」
団扇を手に取るギリー隊長。
「まさか……お前……」
「違います! 違います! これは違うんですってば!」
何がどう違うのかは本人にも分かっていないが、タカトはとっさに首をブンブン振って全力否定。
だが、不審の色を浮かべていたギリー隊長の目が──なぜか急に、憐れみに満ちたものへと変わった。
「……お前……いくらアイナチャンが好きだからって、アイコラまでしてオカズにしてたのかよ……」
「えっ?」
どうやら、それが融合加工されたウチワだとは気づかなかったらしい。
確かに、アイドルのパンチラ写真がデカデカと印刷されたウチワの使い方なんて、限られている。
裏面に北海道産エゾアワビなどの写真でも張り付けといて、竹の柄を両手でぐグリグリ回そうものなら──あら不思議!
なんとパンチら写真が、ノーパン写真に!
なるわけないだろうが!




