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①俺はハーレムを、ビシっ!……道具屋にならせていただきます 一部一章 ~スカートめくりま扇と神様ヒロインのエロ修羅場!?編~  作者: ぺんぺん草のすけ


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いってきま~す(5)

 幼女たちの歌が終わるやいなや、タカトは早々に荷馬車を動かそうとしていた。

 って、そんなに退屈だったんですか! アナタ!


 だって、仕方ないよね。

 いくら歌が上手かったとしても、歌ってたのはアイナちゃんじゃなくて、無乳の幼女たちなんだから。

 その無乳っぷりときたら、ビン子といい勝負よ。っていうか、完全にドロー。

 いや、むしろビン子がちょっとだけ押されてる説すらある……ああ、悲しい。

 いくら女性のストライクゾーンが広いタカトであっても、無乳は無理!

 タカトって、ああ見えて女のストライクゾーンが広いとか偉そうに言うくせに、

 “無”だけはダメなんだってwwww

 そりゃそうよね、どんなに包容力ある男でも、そこに“山”がなけりゃ寄りかかれないわけだし。

 別に美乳じゃなくてもいいのよ? そんな贅沢言わない。

 せめて、“微”くらい……ほんのちょっぴりでも、“丘”くらいあってくれれば……ねぇ?


 ゴトリと荷馬車の車輪が回りかけたその時である。

 先ほどまで幼女たちが歌っていた土手下から勢いよく駆け上ってくる影があるではないか。


「ビン子さ〜ん!」


 その影は叫びながら、まるで昔のトレンディードラマばりに、突然、荷馬車の前に飛び出してきた。

 そして両手を大きく広げて、まさかのポーズ。


 ──僕は、死にましぇ〜ん!


 ……いや、なんの再現ドラマやねん!


挿絵(By みてみん)


 だが、タカトはそんな演出などお構いなしに、馬に声をかけた。


 ゴツン!


「イテッ! タカト! そこは普通、止まるとこだろ!?」


 馬の額と正面衝突したこの男──名をコウスケ=ボーケティエールという。

 第八の門を守護する騎士、セレスティーノに仕える神民のひとりである。


 一見すれば、どこにでもいそうな普通のおかっぱ頭のボンボン。だが、困ったことに、融通という言葉をまるで知らない。

 というより、人から言われたことを真に受けすぎる、筋金入りの馬鹿正直者だったのだ。


 そんな彼が強く信じていたのは、セレスティーノがいつぞや口にしたひと言。

 ──「素敵なレディが側にいてこそ、立派な男になりうる」


 おそらくセレスティーノ本人としては、女をアクセサリーのように扱い、イイ女を傍らに置けば自分の格が上がる──その程度の薄っぺらい意図だったに違いない。

 だが、そこはコウスケ。勝手な都合のいい解釈を加え、「堅実な伴侶がいてこそ、男は志高くなれる」などと、まるで道徳の教科書のように受け止めてしまったのだ。


 その志が本気だったのか、それともただの一目惚れだったのかは、誰にもわからない。

 だが少なくとも、今の彼はまごうことなき“ビン子命”の男であることに違いなかった。


 仕方なしにタカトは手綱を引き、馬の足を止めた。


「……また、お前か。毎日毎日、飽きもせずによくやるよな」

 心底うんざりしたように、タカトはあきれ声を漏らす。


 そう、コウスケは毎朝この川の土手下で、ビン子とタカトが通りかかるのを待ち伏せしているのだ。ほとんどストーカーである。


 だがその奇行も、タカトにとってはそこまで不快というわけでもなかった。

 というのも、彼には“友達”と呼べる存在がほとんどいなかったのだ。


 町に行けば、女子たちはその薄汚れた風貌に鼻をつまみ、男子どもは面白がってベッツのように小突いてくる。

 唯一、気を許せるのはビン子くらいのものだった。


 だが、コウスケだけは少し違う。


 一応、彼は神民学校の高等部に通う、れっきとした神民である。

 ちなみにこの学校に入れるのは、神民かその血筋、あるいは国家が認めた選ばれし優秀な一般人だけ。

 つまり、コウスケはバリバリのエリートなのだ。


 そんなはずの彼が、貧民街にすら住めない超ド底辺のタカトに、毎朝こうして声をかけてくる。

 しかも、偉そうにふんぞり返るでもなく、なぜか妙にフレンドリーに──。


「タカト! 今日こそお前を打ち負かし、悪の手からビン子さんを救い出す!」


 おでこにできたタンコブを押さえながら、コウスケはまるで正義のヒーローのように指を突きつけた。……いや、そのタンコブのせいで少し涙目になっているけどね!


 そして、次の瞬間、両腕をゆっくり大きくと回しだすと……

「へ~ん~し~ん! とう!」

 掛け声と同時に、背中のバッグを勢いよく地面に降ろすと、その中から例のコスチュームをゴソゴソと取り出し始めた。


 ……そう、毎度おなじみのアレである。


 しかも、こともあろうに道の真ん中で、堂々とズボンまで脱ぎはじめたのだ!


「きゃっ!」


 ビン子は思わず目を覆い、慌てて顔を背けた。

 だが、指の隙間からはしっかりと覗いていたとかいないとか──。


 だが、タカトはそれを、ぼーっと──いや、妙に冷めた目で見つめていた。


 ……と思いきや。


 ゆっくりと肩を回しはじめたではないか。


 それはまるで、これから始まる壮絶なバトルに向けた、静かなウォーミングアップのようでもあり──

 単に肩こりをほぐしているようにも見えた。


 ふっ! 悪?

 コイツ……俺を“悪”と呼ぶのか……


 今度は肩を押さえつつ、ゆっくりと首を回しだすタカト。

 ……いや、やっぱりただの肩こりなのではwww


 愚かものめ……

 俺はタダの悪ではない!

 そう! 俺はアフォ! A.F.O(オール フォー ワン)


「俺はこの世の究極悪にしてエロエロ大王になる男やぁぁぁぁぁ!」

 御者台の上に立ち上がったタカトは、身を大きく乗り出しながら叫んだ。

 その姿、どう見てもただの街道の変人である。だが本人は至って真剣。

 その視線の先には、ちょうど着替えを終えたばかりの少年がいた。


「なにぃっ! エロエロ大王だとぉぉぉぉぉ!」


 コウスケはというと、さきほどまで身に着けていた神民学校の制服を、実に丁寧に畳んでバックへとしまっている最中だった。

 ……そう、妙に律儀に。

 まるで、その所作ひとつひとつにヒーローとしての誇りを滲ませているかのようである。


 ばちっ! ばちっ! ばちばちっ!


 エロエロ大王タカト vs おかっぱヒーローコウスケ──

 ふたりの間に、無駄に激しい火花が散りはじめていた。


 ――どうでもいいけど……値札のタグ、付いてるわよ……


 しらけ顔のビン子は、コウスケのコスチュームの襟元にコンビニの値札タグがぶら下がっているのを目ざとく見つけたらしい。

 どうやらコウスケ、ここに来る直前に例のコンビニ――そう、タカトたちがよく食料品を買い込むあのコンビニ――に立ち寄って、わざわざヒーロー用のコスプレ衣装を買ってきたようなのだ。

 しかし、どうして女の子って、こういうの見つけるの早いんでしょうね……ほんとに……

 って、コンビニでそんなもん売っとんかいな! 売っとんです!

 そんなツッコミもどこ吹く風、ビン子はずっと前から飽きていたらしく、御者台でつまらなそうに頬杖をついて、二人の寸劇を静かに眺めていた。


 だがそのとき、ビン子の前にコウスケがさっと膝をついた。

 そして、まるで姫君を迎える騎士のように、深々と頭を垂れたではないか。


「さあ、ビン子さん。そのような小汚いエロエロ大王の元を離れ、どうか私のもとへ……!」


 えっ⁉

 唐突すぎるその展開に、ビン子の乙女心が不覚にもきゅんとときめいてしまった。


 ――お、おかっぱ頭の王子様……?


 正直に言えば、ビン子はこれまでの人生で、こんな“お姫様扱い”をされた経験など一度もなかったのである。

 だって、いつも隣にいるアイツときたら……腹が減ったときだけ甘えてくる野良猫みたいなやつで、基本的に自分勝手でマイペース。

 どっちかって言うと“かまってちゃん”気質で、こっちの気持ちなんてお構いなし!

 ゴロにゃあ~♪

 恋愛小説みたいな展開とまでは言わないけれど、せめて、ほんの少しくらいは乙女心ってやつを理解してほしい……!


 ――この際、おかっぱ頭はどうでもいいわ!


 ビン子は思わず背筋をピンと伸ばすと、ソワソワと体を揺らしつつ、何気ない風を装って前髪を整えるのだった。

 

 「ハ……」

 ビン子が承諾の言葉を発しかけたその時だった。

 心ときめく乙女の肩が、いきなり──ギュッと掴まれたのだ。

 まるで「行くな」と言わんばかりの、強くて迷いのない力だった。


 とっさに見上げたビン子の視線の先には……

 コウスケを睨み据える、タカトの姿。

 そのタカトが、ぐっとビン子の肩を握り、その言葉を封じていた。

 

 ──ドキっ!

 ビン子は思わず息をのんだ。

 今まで見たことがない……そんなりりしいタカトの横顔。

 確かに、道具づくりに没頭してる時の真剣な横顔も悪くない。

 でも、今この瞬間のタカトは……まさに姫を守るナイトそのもの!

 (注意:乙女妄想暴走モードのビン子ビジョンによるため、誰しもが必ずそのように見える訳ではございません)


 きたぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁ!


 ――これよ! これこそが恋愛小説に出てくるあの名シーン!

 男が走り寄って、ヒロインの腕をガッと掴む。

 「行くな……」って、低くて甘い声で囁くの。

 ヒロインは驚いて振り返って、息を呑んだまま見つめ合う……

 そして二人の間にだけ流れる、沈黙の時間……!

 目と目が合って、世界が止まる……!

 そう、あの瞬間!

 タカトの瞳が、まさにそれをやってのけたのだ!


 意味もなく胸が熱くなるビン子の脳内では、

 なぜかバラの花びらが舞い、スポットライトまで当たっていた。

 ――あぁ……私を巡って二人の男が争うなんて……

 まさにヒロイン! 私、今、超主役!!

 ビン子は、御者台の上で一人勝手に身もだえはじめた。


 一方その頃、現実世界では──

 その姿を、タカトとコウスケがしらけた目で見つめていた。

 ――コイツ……大丈夫か?

 ――ビン子さんって、もしかして……ちょっとヤバい人?

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