世の中、綺麗過ぎて気持ち悪い
皆さんの目には、世の中は綺麗に映っていますか。
日本の将来や世界経済の発展について冷静に分析し、合理的な持論をロボットのように展開していたコメンテーターを見た。
理数系の有名大学出身に裏打ちされた、その論理的な展開力は目に見張るものがあり、理知的で大層素晴らしい。
ワイドショーのコメンテーターのレベルも、この人くらいがアベレージなら、テレビしか見ることのできないウマシカ君達も少しは教育され、日本はもっと知的な国になるのにな、と私に幻想を抱かせたほどである。
しかし、その幻想は数週間後、ものの見事に打ち壊された。
いや、ほんと。
アニメでよくあるガラスが割れる演出みたいな感じで盛大に打ち壊された。
数週間後、コメンテーターの不倫のニュースが流れたのである。
おいおい、まてまて、なぜなぜ。と、稚拙な平仮名しか発せなくなったほど。
つまり、落ち着いた雰囲気で淡々と論理を展開していた裏では、喘ぎ声を上げながら、あんあん、ぎゃんぎゃん、びんびん、と腰を振っていたのである。
ロボットじゃねぇ。
めっちゃ生殖したい、ただの雄かよ。
その刹那は、とても気持ちが悪くなった。
私は結構、この嫌悪感をずるずると引きずって、性格と思考が予想もしない方向に捻じ曲がっていく。
のだが、今回は違った。
時間が経つにつれ、別段、普通のことだと思い、どうでもよくなった。
なぜなら。
考えれば分かることであったからだ。
高いヒールを履いて丸の内を闊歩するオフィスレディだって、夜になったら、涎を垂らして尻をぺちぺち叩かれているのである。
ヒーローインタビューを受けるプロ野球選手だって、夜は自らのバットを性欲の赴くままにぶんぶん振りまわし、ホームランを大量生産している。
現世に生きる人間だけじゃない。エジソンや、ガンジーや、アインシュタインクラスの偉人だって、セックスしているときは、理性の欠片も感じられないほどの、アヘ顔だったはず。
コメンテーターも人間なのだから、己が珍棒に振り回されるのは、当然と言えば当然である。
とはいっても、不倫はダメだがな。
では、どうして、瞬間的にでも気持ち悪いと感じてしまったのか。
性欲は汚らわしい。
いつからか、私の中に寄生虫のように住み着いていた、その誤認識が暗に仕事をしていたのである。
人は人の前で、平然と飯を食う。
にもかかわらず、人の前で自慰行為をしようものなら、独房にぶち込まれかねない。
普段の会話で、性に関することに少しでも触れようものなら、品がないとレッテルが張られる。
挙句には、「子作り」という神聖で尊い言葉に対しても、嫌悪感を抱いてしまう人間が存在する始末。
他の人の見ていないところでは、性に乱れてえっちらおっちらしているくせに、人前では知的な人間様で下ネタとか受け付けないってわけである。
ご都合主義かよ、反吐が出る。
上記したように、皆、表では、動物由来の性欲を汚いものと見なす傾向がある。
そして、汚れのない理性的な人間という存在を演じている。
それ故、世の中は綺麗に見える。
嫌でも見えてしまうのである
しかし、裏では、皆、本能がままに性欲を満たしているから、気持ちが悪い。
表では性とはかけ離れた的確コメンテーター、その裏は発情期の雄。
と、この矛盾した二つの顔のようなものに、私は感覚的にすごく気持ち悪く感じたのだろう、と思っている。
人間として理性的に生きるのであれば、それを貫いてほしい。
動物として本能的に生きるのであれば、それを貫いてほしい。
要は、どちらかに統一して欲しい、と感じたのである。
とは言っても、人間が動物であり、動物が人間になり得ない以上、それは理想論で終わってしまうし、この話のオチもつかない。
いやはや、困ったものである。
なので、最後に、私は、少しでもストレスを軽減する思考方法を皆様に授けたい。
皆様の周りに、お高く留まって見下してくる嫌味な人間はいないだろうか。
将又、仕事もできて、皆にも優しい、嫉妬するほど完璧な人間はいないだろうか。
「ま、でも、こいつの顔も、滑稽でみっともないアヘ顔になっているんだよな」
と、考えると少し気が楽になると思う。
少なくとも、私は楽になり、心なしか、この綺麗過ぎて気持ちの悪い世の中が生きやすくなっていると思っている。
以上のことを、ふと街を歩いているときに思ってしまったのである。
共感していただけるのであれば、ぜひとも読者の皆様の声をお聞かせ願いたい、と思う次第である。