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全てはBの為に

作者: 山鳥

気分転換に短編を1つ

短いです

相変わらず、勢いのみで書いてます

誤字脱字は笑って許してください

よろしくお願いします☆彡

【立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花】


こんな女性を見つけろと、時代錯誤の祖父が言った

そんな女居ねぇよと、何度も何度も小バカにしていたが目の前の彼女は正しくその言葉にピッタリの見た目だった


川上聡(かわかみさとし)は目が覚める様な思いで両手にグッと力を込めた


「……あの……今日はお日柄も良く……」


目の前の女性を見ながら躊躇いがちに話しかける

彼女は現在都内の名門大学に通う20歳

写真よりも何倍も魅力的なその姿もさることながら名前も神宮寺華蓮(じんぐうじかれん)とゴージャスな名前だ

今年27歳になる自分とは大違いな程の若々しくオーラも纏うその容姿から目が離せない

俺、面食いだったんだな

しかし、足元の紙袋が気になる


「単刀直入に言わせていただきます」


話し声はイメージとは違い、思ったよりも低かった

しかし、不思議と心地の良い音がした気がする


「何でしょう?」

「あの……川上さんの弟さんって駅前のコーヒーショップ【ブルーパレット】で働いている〘川上匡(かわかみまさし)〙さんですか?」

「……はい?」

「だから!匡さんの御兄様ですか?」

「……えっ……はい」


そう言った瞬間、彼女のスイッチはオンになった


「ですわよね!事前調査でそうだとは知っていましたけど、本人の言質を頂くまではとヤキモキしていましたの!コレはきっと運命ですわね!実は私、あそこのコーヒーショップに最近通いだして、美味しいなぁって思ってハマったのです!そしたら、カウンターの所に素敵な人が居て……ネームプレート見たら〘川上〙って書いてありまして。あぁ……何だか川上って名前にピッタリなくらい川の上流の綺麗なお水で育った感じの方じゃないですか!?もぉ、炊飯器の御飯の水は拘りの井戸水を使って炊いている……みたいな?いや……もしかしたら、飯盒で炊いているかもしれないですわよね……。私ったら想像力が足りないわ!だって、あんな美味しいコーヒーを淹れれるバリスタなんですもの!お水に拘る以外、道具に拘るなんて当たり前ですわよね!?あぁ……御兄様。因みに、匡さんの愛用されている水って何処の井戸ですの?もしかして飲み水も拘ってらっしゃるの?メーカーは何処ですの?教えてくださったら、この度御兄様が入手に手こずっていらっしゃる《世界に20本しかない万年筆》を無料で納品させていただきますわ」


何かえらい事になってしまった

〘川上〙って名前から川の上流の水を飲んで育ったと思ったのに

弟は井戸水で飯を炊いている設定とはいかに……!?

せめて上か下か固定してほしい

しかも、こちらが探している商品を知っているとは……

弟の情報を売る代わりに譲渡してもらえるなんて有難いが、身内を売れと普通に言われているワケで

何だろう……凄く魅力的な容姿をしているのに

圧倒的に残念な女の子がいる


「………………あの、今日が何の集まりかご存じですか?」


ちょっと気になったので質問してみる


「えぇ。今日はお見合いですわね。貴方と私の」


しらッと返事をする彼女


「なら……俺に興味は……」

「ないですわね。あぁ、でも匡さんの幼少期の話が聞けるのではと、ワクワクして来ましたのは事実ですわ!腐っても貴方は御兄様ですもの」


釣書に書いといてくれよ……性格に難ありって!

と、思ったが

上司の姪っ子だった事を思い出す

今日だって、上司に泣き落としで頼まれて来たワケで

そもそも、男性経験が著しく低いから話し相手という名のリハビリ的な形式的お見合いだったはずだ……

俺的にも、上司の顔を立てて会うだけのつもりだったが

彼女は彼女で弟の事を知りたくて来たって事だからどう考えても不自然である


「あの……南雲さんの姪っ子さんなんですよね?」

「えぇ」

「南雲さんに頼まれて今日は来たんですが……姪っ子さんも乗り気じゃなかったんですね?」

「いえ。私が頼んだので、乗り気ではあります。ただ、理由が異なるだけです」

「……えっとそれって」

「私は、叔父に頼みましたの。叔父の部下である川上さんとお知り合いになりたいと。しかし、ウチの父が会社を経営してますでしょう?叔父的には《お見合い》という形の方が紹介しやすいと思ったようでこうなりましたの。まぁ、私は匡さんの話が聞けるなら何でも良かったので了承した次第ですの」

「………………」


オカシイナ

オレノキイテイタハナシトチガウナ


「どうかしましたの?」

「えっと……お父上からは何と?」

「?父ですか?川上さんは聞き上手だからお見合い相手に丁度良いと」

「……なるほど」


これはあれだな

南雲さんにしてやられたな

そういえば、彼女が居るのかやたらと聞かれたな……

コレのせいだったんだな


「あの……御兄様。匡さんの趣味ってカフェ巡りってご存じでした?先日、私も匡さんがリサーチがてら訪れた店に()()()()入り口で会ったのでご一緒させていただきましたの。近くの席で真剣にメニューの研究をされている姿を拝見したのですが、とっても真摯な方ですのね。何度も携帯電話が鳴っていても出ずに、しまいには電源を切ってまでメニューに向き合っていらっしゃったの。あんな仕事熱心な方初めてでしたわ」

「……へぇ」

「その上、帰りは車で送ってくださって……。しかも、私が助手席に座ったら、何も言わずにブランケットや温かい飲み物を用意してくださって、私その心遣いに感銘をうけましたの!お話もとっても上手ですし、あっと言う間に時間が経ってしまいましたわ。流石に家の前までは申し訳なくて最寄りの駅でお別れしましたが、最後まで紳士的で素敵な方ですわね!」

「それは……初めてのお出かけという事ですか?」

「まぁ……有体に言えば?でも、()()お会いしたのですから、初デートにカウントは些か厚かましいのではないかと……」

「……へぇ」


弟よ……お前何やってんだ?

女なら何でもOKなお前のそのポテンシャルのせいで面倒くさい事になっとるではないか!!!


「……スマホのアドレスの交換とかは?」

「それが、匡さんって恥ずかしがり屋なのか聞いてくださらなくて……。次はまた店でって言われたので、今度お店で話した時にでも聞いてみようかと。でも、お仕事中に話しかけるなんて気が引けますわ。彼の邪魔するなんて空気が読めない女でしょ?そんな厚顔無恥な事出来ませんわ」

「……へぇ」


因みに、たまにコースターの裏にメッセージを書いて貰うらしい

秘密の手紙みたいで嬉しいんだとか……


オレ……カエリタイ……


「……今日は俺は何をしに呼ばれたのでしょうか?」

「だから、匡さんの情報を何でもいいから提供してくださいな」

「……いやぁ身内を売るのはちょっと」

「今度のスイス大使館で行われるVIPへのお土産の万年筆、かれこれ半年探していらっしゃるではないのですか?」

「……よくご存じで。南雲さんに聞かれましたか?」

「いいえ。気になる方の周辺を調べるなんて基本中の基本でしょ?」

「……でも。弟なんで」

「このVIPを取り込むと国益にも繋がりますし、貴方の出世もかかっているのでは?」

「コワいですねぇ」


出世をチラつかせる彼女のギャップの目を見張る

喋ると台無しだな……


「俺は弟の情報は売りませんよ?」

「なら……情報はいりません。他の物をくださいな」

「他の物?」

「……画像を」

「はっ?」

「あの……寝顔の写真を1枚お願いします」


モジモジしながらトンデモナイお願いをする彼女

コレが日本の経済をまわす大手企業のご令嬢かと思うと涙が出そうだ


「……俺はそろそろ失礼します」

「……!!!待ってください!!!じゃぁ……枕を……この枕と彼の枕を交換してください!!!」


紙袋から枕を引っ掴み、こっちへ投げてくる

思わずキャッチして驚いたが、驚く程の触り心地の良さだった


「はわぁわぁわぁわぁぁぁ!受け取って下さいましたね!では、交渉成立というワケで!失礼いたします!!!」


そう言い捨てて脱兎の如くその場を後にする神宮寺令嬢を俺はポカンと見る事しかできなかった






  ◷  ◶  ◵  ◴






その後

結局、仕事に行き詰った俺は弟に枕をプレゼントし、古い枕は此方が処分すると言って引き取った

弟は処分代が浮くと喜んでいたが内心複雑だった


枕は上司の南雲さん経由で渡す事にした

南雲さんは明後日の方向を見ながら「俺達の仕事は綺麗事だけでは無理だから」と慰めてくれた

しかし、枕を受け取ったその手は尋常じゃなく震えていた


後日、神宮司家から件の万年筆が立派な包装で送られて来ただけでなく

色も付いていた事は南雲さんと俺だけの秘密だ


数ヵ月後

弟が最近客と付き合い始めたと報告してきた

お金持ちのご令嬢らしく、沢山融資をしてくれると嬉しそうに話していたが

その2ヵ月後に浮気相手をまんまと妊娠させてしまい彼女とは別れる事に……

何で浮気をしたのかと問うと「指一本触れさせてくれなかったから」と

平然と言い放っていた


余談だが、彼女が弟の家に遊びに来た時、枕を持参していたそうだ

見覚えのある枕で吃驚したが、凄い偶然だと驚いたとも話していた

そして俺は、泊まりに行ったのに指一本触れさせなかった彼女のポテンシャルに驚いたのだった


南雲さんは先日モジモジしながら俺の横でチラチラと此方を見てきていた

そして、俺の残業を密かにチェックしている様に見えた

嫌な予感がして、その日はさっさと仕事を終え退勤しようと庁舎をでると

霞が関に季節外れのなごり雪が舞っていた

そして、目線の先には神宮司華蓮が満面の笑みで此方を見つめながら佇んでいた


「お久しぶりです。所で、この後時間はありますでしょうか?」



【立てばパチンコ 座れば麻雀 歩く姿は馬券買い】



容姿は程遠い印象だが、ポテンシャル的には此方ではないのかと思いながら

磁石みたいに彼女の方へ引き寄せられる

あぁ……俺はまたもやあの時間を過ごすのだろう


「こんばんは」

「こんばんは。今日は川上さんにお尋ねしたい事がありますの」

「何でしょうか?」

「ご友人の舞台俳優についてお尋ねしたいのですが……」


そして彼女は今日も楽しそうに俺に話始めるのだった


Bのつく職業

《バリスタ》でした


今は4Bの時代なんですね……私の時は3Bでした

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