005 孤児院
「さてと、シュウ君の今後を決めなくちゃね。
先輩、この子の対応するので後を任せても良いですか?」
「話は聞いてたから大丈夫よ。」
「すいません。では席を外します。」
そう言ってイザベルが俺を抱っこしたまま冒険者ギルドを後にした。
「まずは孤児院に向かいましょうか。」
俺に話しかけている感じでは無いので、多分独り言なんだろう。
そして孤児院が有るだろう方向へと歩き出した。
俺は街中を眺めていると、やっぱり日本とは違うってことを実感した。
まず最初に目立つのは高い建物が無いってことだ。せいぜい2階建てで、基本石造りで一部木材が使われている感じだ。もちろんコンクリートとかは全く見かけなかった。
意外と思ったのが、糞尿等の匂いは全く無くて地面は綺麗だった。おそらく地下に下水が整備されているのだろう。もしかしたら上水も整備されているのかもしれない。
大通りには色んなお店が有って、結構にぎわっているみたいだ。
しばらく歩いた後に横道へと入ると、そのまま進んだ。
脇道とは言え、別にスラムみたいな感じでは無く、普通に住宅街っぽい感じだ。案外治安も悪く無いのかもしれない。
30分ほどしてようやく目的の場所に到着したみたいだ。
そこには教会みたいな建物と、その脇に幼稚園みたいな建物がそこに有った。
イザベルは教会の中へと入ると、中に居たシスターへと声を掛けた。
「すいません。」
「はい、どの様なご用件でしょうか?」
「実は、森でこの子が保護されました。今のところ親とかは見つかっておらず、生死については不明です。
そこでしばらくの間、この子を孤児院の方で預かって頂けないでしょうか?」
「それは大変だったみたいですね。分かりました。孤児院の方で責任を持って預からせて頂きます。」
「助かります。それでこの子の名前はシュウと言います。こちらがギルドカードになりますので、必要になったらお渡しして下さい。」
「はい。」
イザベルが俺とギルドカードを一緒にシスターへと渡した。
おっ、これがギルドカードか。ちょっと見せて貰うとしますか。
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名前 :シュウ
年齢 :0
種族 :人族
状態 :普通
LV :1
HP :10/10
MP :50/50
STR:3
VIT:3
AGI:3
INT:3
DEX:3
LUK:3
スキル:
称号 :
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おぉ! 上手く偽装が働いているみたいだ。これなら他の人に見られたとしても安心だ。
「それでは、後は宜しくお願いします。」
「はい。」
イザベルは用事が済んだとばかりに、教会を去って行った。
「ではシュウ君、孤児院に行きましょうね。」
俺はシスターに抱っこされたまま孤児院の方へと移動することになった。
ギルドカードは没収されてしまったが、今の所必要性も無いため特に問題はない。
孤児院に到着すると外で遊んでいた子供たちがこちらに気が付いて集まってきた。
「しすたー、その子はだあれ?」
「うわっ、赤ちゃんだ。」
「新しい子?」
「シスター、そいつって男? 女?」
「また赤ちゃんか。」
3~4歳くらいの女の子が3人、5歳くらいの男の子が2人の計5人だ。
それにしても最後の男の子が『また』って言っていたが、俺の他にも赤ちゃんが居るのだろうか?
「はい、みなさんに新しいお友達がやってきました。名前はシュウ君です。仲良くやってくださいね。」
「「「「「は~い。」」」」」
「私はこれから院長へ報告に行ってきますので、ジョン君、シュウ君をアンナちゃんの所に連れて行って貰えますか?」
「えぇ~、俺?」
「お願いします。」
「わかりました。おい、ロイも手伝ってくれよ。」
「仕方ないな。」
「では、お願いします。」
シスターがそう言うと、俺をジョンへと渡したんだが、大丈夫か?
さすがに小さい女の子には任せられないのは分かるが、男の子も5歳くらいだぞ? ちょっと不安だ。
俺を抱えたジョンがふら付く。ほら見ろ、言わんこっちゃない。だけどそこにロイが補助に入ることで安定したみたいだ。ほっ。
まぁ、実際落とされたとしても、物理無効が有るから大丈夫だとは思うけどね。
2人でえっちらおっちらと部屋の中へと運ばれると、そこに布団を敷かれており、誰かが眠っていた。
「ここに寝かせれば良いのか?」
「多分?」
「まあいいや、じゃあ置くぞ、ゆっくりだぞ。」
過剰なほど丁寧に寝かしてくれた。ジョンって結構良い奴みたいだ。
「じゃあ戻るか。」
「そうだな。」
そう言うと2人は戻って行ってしまった。ありがとな。
さて、布団に寝かされた俺だが、実は先ほどから気になっていることが有る。隣で寝ている赤ちゃんのことだ。
赤ちゃんだからかピンクゴールドの髪色にショートカットの短い髪型さだが、顔つきからすると多分女の子なんじゃないのかな? アンナって名前らしいし。
そんなことを考えていると、目の前の女の子の目が覚めたみたいだ。
エメラルドグリーンの瞳がじっと俺を見つめている。
「だ、だぅ!(よ、よぉ!)」
だが言葉は通じなかったみたいだ。当然か。相変わらずじっとこちらを見ている。
えっと、こういう時はどうすれば良いんだ? ぎこちない動きで腕を動かして、アンナの頭をポンポンとしてみた。するとアンナはにへらって笑ってくれた。何この子、物凄く可愛いんですけど? お持ち帰りしても良いですか?(駄目です)
「ふぇっ、ふええぇぇぇ~~ん!」
突然アンナが泣き出した。何だ? どうしたんだ?
でも俺には抱っこしてあやしてあげることは出来ない。どうすれば……
くううぅぅ~~~
その時アンナのお腹が鳴った。もしかしてお腹が空いていて泣いているのか? だったらこうだ!
「あうあうあぃあ!!(おっぱい召喚!!)」
俺がおっぱい召喚を発動させると、目の前におっぱいが召喚された。
すると目の前におっぱいが召喚されたんだが……
「ばぶ?(あれ?)」
問題無くおっぱいは召喚された。おっぱいには違いないのだが、何と言うか前回と比べて形と言うか大きさが違うんだよね。
とにかくデカイ、正に巨乳と呼ばれるほどのデカさだ。しかも今回は右乳だ。
アンナも突然目の前に現れたおっぱいにビックリして動きが止まっている。いや、欲しくて止まっているっぽいな。
俺はおっぱいをアンナの前まで移動させると、アンナがそれに食らいつき、美味しそうに飲み始めた。
そんなアンナを見ていて思った。何か俺も腹が減ってきた気がする。なら一緒に腹ごしらえでもしようかな。
「あうあうあぃあ!!(おっぱい召喚!!)」
再び召喚を試みると、またもや違うおっぱいが……今度はちっぱいだ。
いや別にちっぱいが嫌って訳じゃないぞ? ちっぱいはステータスだ。そしてご褒……こほん。いえ、何でも有りません。
赤ちゃんにとっておっぱいは神聖なるもので、大きさに上下は無い。すべては平等なのだ。と言う訳で頂きます。