003 リーデルの街
「ほらシュウ君、リーデルの街だよ!」
エレンに言われて目が覚めた。どうやら、ゆらゆらと心地よく揺らされて運ばれてる内に眠ってしまったみたいだ。
周りを見ると、前方に高い城壁みたいな壁に囲まれている物が見えた。あれのことかな?
あれだけの高さがあるってっことは、多分巨人から守るための壁に違いない(断言)
街の入り口に大きな門があって、そこに入るための長い列があり、アラン達はそこに並ぶみたいだ。
長い列とは言え、結構サクサクと進むため、それほど時間はかからないのかもしれない。
30分ほどして俺たちの順番になった。門の脇に門番が立っており、声を掛けてきた。
「住民証、またはそれに準ずるものを提示して下さい。」
「「はい。」」
アランとエレンが胸元から銀色のカードを取り出して門番へと見せる。
「よし、問題ないな。そちらの子のは無いのか?」
「あー、えっと、この子なんですが、実は森の中で捨てられてたのを拾ったんです。
なのでギルドで相談しようと思ってたんです。」
「そうか、こんな小さな子が……」
門番のおっちゃんが涙ぐんでいる。
「まぁ、こんな小さな子が犯罪を起こせる訳も無いか。この後はギルドか孤児院にでも預けるんだろ?」
「ええ、多分そうなるかと。」
「まぁ、一応決まりだから、確認だけはさせてもらうぞ。
それじゃ詰所まで来てくれ。」
「ええ。」
俺たちは門のすぐ脇にある詰所と呼ばれる建物へと移動した。
詰所の中は事務所兼待機場所みたいな所らしく、事務仕事や休憩している人が何人かいた。
「この水晶に手を当てさせてくれ。」
何だあの水晶は……ま、まさかステータスを確認するヤツか? 称号に異世界転生とかって有るし、それって不味くないか!?
な、何とかしなければ……そうだ! 創造魔法で対応すれば!
そして俺の手が水晶へと触ると、水晶が青く点滅した。
「犯罪歴は無しと。では入街税で大銅貨1枚だ。」
えっ? ステータスを見るんじゃなくて、犯罪歴を調べただけ?
何だ、そんなに気にする必要も無かったんだ。心配して損した。
そしてアランが大銅貨1枚を取り出して守衛の方へと渡した。立替えありがとうございます。いつかきっと返しますんで。
「よし、通って良いぞ。」
「ありがとうございます。」
こうして俺たちは無事に街へと入ることが出来たのだった。
「さて、ギルドへ行く前に少し腹ごしらえをしてから行くとするか。」
「賛成~」
飯か。俺もそろそろお腹が減ってきたんだが、ここでおっぱい召喚をするのは不味い気がするんだが、どうすっかな。
「ふえっ……ふええぇぇぇ~~~ん!!」
何と腹が減ったせいか、俺の意思とは反して泣き出してしまった。
「お~よちよち、どうちたのかな~?」
「ほぎゃあ! ほぎゃあ! ほぎゃあ!」
「泣き止まないよぉ~ アラン助けて~!」
「ったく、多分腹が減ってるんだろ。」
Exactly
だから、はよ、ギブミーおっぱい!
「とりあえず食堂へ入ろう。そこならミルクとかも有るだろうしな。」
「そ、そうね。そうしましょう。」
とある食堂の入り口を抜けると、まだお昼前だからか2、3人ほどの客がいるだけで空いていた。
適当に空いている席へと向かい着席をする。
「あら、アランとエレンじゃない。こんな時間に珍しいわね……って赤ちゃん?
あなたたち……もしかして!?」
「ち、違う! 私達の子じゃないわよ! いつかは持ちたいと……ごにょごにょ……」
どうやらこの店は、アラン達の行きつけらしい。そしてエレンはアランに対して満更でないと。
まぁ、エレンは俺から見ても結構な美人さんだ。アランがうらやましいぜ! まぁ、胸に関してはお察しみたいだがな……
グニュ!
「あう!(痛い!)」
俺はエレンに頬っぺたをつねられてしまった。
「お、おい! エレン、赤ん坊に何やってんだ!」
「えっ? あれ? なんかムカついて思わずつねっちゃった。何でこんなことしたんだろう?」
エレンは頭にはてなマークをだしていた。なんて勘の良い女なのだろうか。次からは気を付けることにしよう。
「シュウ君ごめんね。」
「あぅ、あいあうあうあ(いえ、私が悪いんで大丈夫です)。」
「あれ? この子返事してない?」
給仕の女性が俺を見てそんなことを言ってきた。
「そう? たまたまじゃないの? それともシュウ君は天才さんなのかな~?」
エレンがニコニコ顔をでそんなことを聞いてきた。いえ、単なるチートです。言わないけど。
「その子ってシュウ君って言うんだ。」
「いや、エレンが名前が無いと不便だからって勝手に言ってるだけで、実際は知らんぞ。」
「そうなんだ。」
「それよりその子が腹を空かしているみたいなんだ。ミルクを貰えないか?
あとは、日替わり定食を2つ頼む。」
「了解~、すぐに持ってくるね。」
そう返事すると、給仕の女性はテーブルから離れていった。
そしてすぐに戻ってきた。さすがに早すぎじゃね? 某早い安い旨いの店を上回ってるぞ!
「とりあえずミルクだけ急いで持ってきたよ。」
そう言ってミルクが入ったコップと、端っこの一部が細くなって注ぎやすくなった器を持ってきてくれた。
「すまんな。」
「いえいえ、それでは。」
そう言って戻っていった。
「アラン、貸して。」
「ほら、気を付けてやれよ。」
「任せてよ。」
エレンがそういうと、俺の口にコップを近づけてきて……って溺れる~!!
「お、おい! 違う! やめろ!」
「えっ?」
「赤ん坊が直接コップから飲めるわけ無いだろうが。貸してみろ。」
「う、うん。」
俺はエレンからアランへと渡された。そしてアランはコップから器へとミルクを移し、器の細い部分から飲ませてくれた。
ほぉ、やるではないか。特別に俺のお世話係に任命してあげよう(偉そう)
冗談はさておき、アランは孤児院で世話をしていたと言ってただけは有って上手だ。安心して飲むことが出来た。
「よし、全部飲んだな。」
いやはや、本当にありがとうございます。
そして背中をトントンとされる。
げぷっ!
げっぷが出た。本当に手馴れているな。
お腹が一杯になった俺は、またもや赤ん坊の特性か、眠くなるのだった。
それでは、おやすみなさい……