前日譚2 怪人百面相
私は迫りくる眠気に耐えながら会議が終わるのを待つ。
幹部会議はつまらない。
いつも通りの報告を延々と聞かされる,,,,こんな事してる暇があるなら仕事に戻りたい。
幹部達はそれぞれ担当の班のリーダーをしている。
戦闘班や拷問班,,,怪人研究班などなど全てで幹部の数と同じ6つの班がある。
彼らの話はいつも同じだ。
やれ怪人の数が少ないやら,,戦果を挙げたやら,,,正直に言うと意味のない報告だ。
眠るのを我慢しているので精一杯で何も聞いてない。
前の幹部の話が終わりモーガン様が言う。
「__ご苦労,,,では最後に諜報班幹部のヒャクメンソウ。計画の報告をしろ。」
私は欠伸を噛み殺して立ち上がり一礼をして話し始めた。
「皆さんご存知の通り,,,私は現在魔法少女の教育学校である【第一少女学園】に潜入捜査をしております。」
少女学園とは魔法少女の卵を育て,,,将来怪人と戦う正義のヒーローを育てる学校だ。
その中でも第一少女学園は高い実力と魔法適正が求められ、入れる者は少ない。
学園には魔法少女科とサポート科がある。
魔法少女科は文字通り,,,魔法少女を育てる学科だ。
サポート科は魔法少女達の戦闘のサポートや日常生活の管理などをする人材を育てる学科だ。
魔法少女科は男性は入れないが,,サポート科は男性でも入れる。
私はサポート科の生徒として魔法少女の学舎に侵入していた。
私は自信を込めて言う。
「計画は順調です!第二目的の魔法少女の育成カリキュラムや魔法の享受方法,,,彼女らの重要な情報はほぼ入手いたしました!」
そう言いながら資料を配る。
奴らの使う魔法や弱点,,,教育のスケジュールなど,,,かなり重要な事が書かれている。
私は私しか出来ない仕事に誇りをもっていのだ。
ただ座っているだけのコイツらとは違う!
他の怪人幹部達も嬉しそうな声を上げる。
「いいぞ,,,これで奴ら共の裏を掻ける,,,」
「,,,ふざけてはいるが仕事はちゃんとするよな,,,」
会議室がざわつく。幹部達は嬉しいニュースに喜びを隠せていない。
「,,,,,,第一目的はどうした?」
そこにモーガン様の低い声が響く。
幹部達は口を閉じ、部屋が再び静かになった。
「第一目的はもっと順調です!魔法少女共と友好関係を築けております!モーガン様の計画通り,,奴らの寝首を掻くことがいつでも可能です!」
私がそう言うと幹部達は目を輝かせる。
モーガン様直々に計画されたこの作戦の真の狙いは、友好関係を築いた魔法少女共を油断させ殺すことだ。
私は奴らの寝首を掻くのを楽しみでしかたない。
信じていた人に殺される,,,その時見せる絶望の顔を早く見たいのだ。
怪人にとって魔法少女は怨敵だ。今までどれ程煮え湯を飲まされたか分からない。そんな怪人達にとってこのニュースは震える程嬉しかった。
「ご苦労,,,,引き続きヒャクメンソウには潜入捜査を続けてもらう。お前の貢献は大きい,,,今後も期待している。」
モーガン様は目を細めて微笑みながらも言った。
どうやらまだ殺してはいけないようだ。
不満だがモーガン様がそう言うなら仕方ない。
「お褒めに預り光栄です,,,期待してお待ち下さい。」
がっかりした気持ちを隠して私はそう言う。
「さて,,,,報告は全て終わったな。皆仕事に励んでいるようでなによりだ,,,,続けて今後のスケジュールについて,,「失礼ですがモーガン様。少しよろしいでしょうか?」
モーガン様の話を遮り私は話す。
「ヒャクメンソウ!!貴様自分が何しているか「よい,,話せヒャクメンソウ。」
シャーマンが私に怒って叫ぶがモーガン様に遮られる。幹部全員が私を見つめる。
「申し訳ございませんモーガン様,,,,そろそろ学校が始まりますので先に上がってもよろしいでしょうか?」
私は頭を下げながらそう言う。
今の時間は朝の5時だ,,,,この会議はもう幹部の発表だけで8時間使っている。
時間の無駄もここまでくると呆れてかける言葉もない。
学校が始まるのは8時からだが、めんどくさいからそろそろ抜けたい。
「,,,,よいだろう,,お前の任務に支障がでるのは良くない。退室を許可する。」
モーガン様は少し何か言いたい顔をした後にそう言う。
「ありがとうございます。では諸君!!良い会議を!!」
私はそう言いながら立ち上がり部屋から出て行った。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
「アアアアアア~~~めんどくさかったぁぁぁあ~~」
私はベットに横になりながらそう言う。
ここは私の潜入先である第一少女学園の男子寮,,の私の部屋だ。
誰がいつ入って来ても良いように整理された部屋だ。
勉強机とベット、かけ時計や服立て、姿見鏡など必要な物しかない。
「,,,,,,,,」
横になりながら時計を見る,,,,時刻は6時だ。まだ学校に行くのは早い。
ベットから起き上がり鏡の前に立つ,,いつものルーティーンをやろう。
鏡には制服を着た美少年がいる。
「私は誰だ?」
私はそう呟く。それと同時に様々な人の姿をイメージする。
すると私の姿は一瞬、青い炎に包まれる。
炎が消えるとそこには先程の美少年とは違う人物が写っている。
次々と私の姿は変わっていく。
それは老人だったり、小さな女の子だったり、サラリーマンのような男だったり、厳つい巨漢だったり、モデルのような美女だったり,,,,私の姿は次々と変わる。
そして初めの美少年の姿に戻り呟く。
「私は,,,,何者でもない。」
私は鏡に写る自分の姿に笑いかけた。かえってくるのは綺麗でどこか虚ろな笑顔だった。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
ヒャクメンソウには二つ特殊な能力がある。
その中でも彼がヒャクメンソウと呼ばれる由縁の能力,,,,誰にでも変装できる力だ。
彼は自分の思い描いた人物に即座に変身できる。
彼は何にでもなりきれる。
活発な青年でも、お転婆な少女でも、弱々しい老人にでも、嫌みなおばさんにも、
脂ののった中年にも,,,,優しいく誰にでも信頼される美少年にでも。
彼の完璧な変装と完璧な演技。
それこそがヒャクメンソウが危険な敵地への潜入を任された理由である。
普通の人間なら気が狂う行為だ。
だが彼は怪人,,,,元から狂っている化け物だ。彼に潜入出来ない場所は無い。
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
私はいつものルーティーンを終えて一息つく。
今の姿は制服を着た美少年の姿だ。
「今の私は,,,,《《僕》》は鏡 龍一,,,,第一少女学園に通う生徒だ。」
時計を見ると時間は6時15分,,,,そろそろ朝食の時間だ。
私は微笑みながら言う。
「さて,,,,今日も楽しく潜入していこう。」
独り言を呟きながら自分の部屋を出た。